21歳の頃、全く裕福な家庭の出でもない私は両親に頼みこみ、自分もバイトでお金を貯め、
無理やりイギリスへ英語留学した。
今思うと全く”身の丈”知らずな冒険だったと思う。お金も実力もないのに。ましてや、怠惰と見栄が主な動機だったのに。親にも随分苦労させてしまった。後悔しても、、、しきれないが、今となってはもうどうしようもない。両親とも既になくなってしまっているし。
さて、英国では英語学校に通い、街をふらつき、修学旅行で行ったスコットランドでは馬にはね落とされたり、パブで酔っぱらって醜態をさらけ出したり、さんざんな、またお下品な思い出ばかり。
それでも、英文学を専攻する私は英国の自然・住環境・生活習慣等を学べる機会として
今でも良い経験だったと思えている。その中には、当時流行っていたバックパックを背負って
”地球の歩き方”を実践しながら、ヨーロッパを女ひとり旅。
英国での英語留学やこのヨーロッパでの一人旅での数々のエピソードはまたどこかに書くとして、イギリスから帰って来て大学へ復学してからの出会いや出来事がこの「第一章:はじまり」
のはじまりなのである。
なかなか本文へたどりつかないけれど。
大学へ復学して一番最初の講義は「イギリス文学概論」だったと記憶している。講義内容は今となっては殆ど覚えていない。当時担当の先生の質問に”英国帰りの知ったかぶり勘違い女”は大恥をかく事になる。
ところで、この先生はアメリカカリフォルニア州での学問を終え帰国・就任したばかりの
31歳。独身で将来有望な若手講師だった。
さて、この講義始め、
”tact"という単語(の意味)わかるかな?と先生が聞く。
少し高音気味、でもその若さと知性と強い覚悟を秘めたような声だった。
ビビッと来てしまったのだ。本当に、本当によせばいいのに、当時’タクト’というスズキの
50ccバイクで大学へ通っていた私は、半分手を挙げた。。。もよう。
案の定、その先生にあてられ、適当な答えを言った私。恐らく間違っていたのだろう。気がついたら困ったような彼の顔が目に入る。
もっと困ったのは、その時彼が自分の顔に当てた左手の指が私の目に入って来た事。
細くて生活感のない、すらりとしてとても綺麗な指だった。
これが彼の不幸のはじまり。そして私の全く身勝手な人生の幕開け・・・でした。
ちなみに英単語 tact が如才なさ、機転、気働きを意味する事は後で知ったが、
どおりで私は知らなかった訳だ。。。
つづく。