『自分仕事探しにきてんやろ?どんな仕事したいねん?』

あれこれ迷ったが出た一言はこれだった。

「人助けがしたい」

僕は去年から、行政書士を目指していた。自分自身今まで人に裏切られたり騙された事もあったが、その時は、どうすることも出来ず、ただ逃げる事しか出来なかった。
だから、そういった人達を助けたかったからだ。

その時一瞬笑ったかのように見えた。

『自分すごいでぇ。自分今不幸のどん底やん?底辺の人間やん?それなのに人助けしたいって普通の人間そんな事いわへんでぇー?』

僕はもう少し細かく言うべきだったか考えたが、いつもの「まぁいいや」で話を流した。

ハローワークの相談があったため、一旦その893風の男の話を切るため事情を話した。
その言葉の後にいつもなら、絶対言わない一言を添えて・・・・

「この後、お時間あったらお話しませんか?」

ありえない・・なんでこの893風の男に、惹かれていく自分がいるのか理解しがたかった。

そそくさと、ハローワークの相談を終わらせ、893風の男の方へ振り返る。
やっぱり、柄悪い・・・止めときゃ良かったか・・・っと、ちょっと後悔しつつも「お待たせしました」と駆け寄った。

外へ出て、その893風の男の歩く方についていった。
いつも帰るバス亭とはまったく違う方向だった。

歩きながら893風の男は上機嫌に色々話してくれた。
しかし僕の頭に残っていた言葉は、

『自分メチャクチャラッキーやでぇー』だけだった・・

どこかでで聞いたセリフだった。

しばらく歩いて、知らないバス停に立ち止まった。そこにタイミングよくバスが到着した。
乗る間際に893風の男は僕にいった。

『一流の運転手呼んださかい、よくみとき』

え?と思ったが、とりあえず乗り込んだ。

バスの中でも、893風の男の話は止まらない。

『ええか?運転手○○君いうんだけど、お客を迎える時の顔と運転する時の顔つき、運転の仕方を良くみとき』
『朝乗ったバスとはえらい違うでぇ』

言われるがままに僕は運転手に目を向けた。
乗ってくる人達にニコニコと笑顔で向かいいれてくれる、感じの良い人に見えた。
口調も優しい、好印象な人だ。

お客が乗り込み、エンジンがかかる。すると今までの笑顔が消えて、怖い顔になった。
普段そんな事は、気にもした事なかったが、明らかに変わったと分かった。
その時の僕はちょっと驚いた顔になってたと思う。
893風の男は言う

『どや?次は運転の仕方見とき』

運転はスムーズに感じた。急ブレーキや急発進もなく優しい運転だったので、自分が揺れることもない。朝の運転手とは違う運転だったのは明らかに感じ取れた。
その感じたままの感想を話した。

『どや?これが一流の運転手なんや。この○○君はお客さん一人一人を大事に思ってるんや。せやから運転に優しさを感じるんや』
『この運転手のサービス精神ちゅーやつやで』

なるほどーと正直に思えた。ただひとつのわだかまりを残して・・・・