アスベストは繊維状の鉱物で、耐熱性や耐腐食性で
優れている。そのため、建材を中心に水道管や電気コードなど
約3000種類の製品に使われてきた。
 一時は、「奇跡の鉱物」や「天然の贈り物」と呼ばれて
重用された。しかし、アスベストは髪の毛の5000分の1という
目に見えないような太さで、空気中を漂う。人間がそれを一定
量吸い込むと、30~40年後に中皮腫や肺がんを発症するといわ
れる。「静かな時限爆弾」と称されれるゆえんだ。
 東京都の調査によると、新宿区では大気1㍑当たり0.22本
「2000年」が漂っており、身近に存在する有害物質のひとつで
ある。
 アスベストの主な産地は、カナダやブラジルなど、日本は消費量の
ほとんどを輸入に頼っており、ピーク時の1974年には、輸入量が35万
トンに達した。90年ごろまで毎年30万トン前後が輸入され2004年に
輸入が原則禁止された。
 特に72~73にかけて、ビルなどの耐火建築財として、アスベストと
セメントを混ぜた吹き付けアスベストが大量に使われた「75年に使用
禁止」87年には、全国の学校や公共施設での使用が明らかになり、社
会問題になった。ここにきてクローズアップされたのは、アスベスト
製品のメーカーが相次いで従業員のアスベストによる健康被害を公表
したからだ。しかも、発症との因果関係が定かでないにもかかわらず
メーカーは、工場周辺の住民に対しても、保証金を支払った。被害は
事前の予想を上回り、まさに公害といえるような事態に注目が集まった
 アスベストを吸い込んでも自覚症状はなく、中皮腫などが発症するま
での潜伏期間は長い。累計で1000万トンという日本の輸入量の推移を見
ると、今後ますます健康被害を訴える被害者が増えるだろう