引き続き吉村昭です。この大本営が震えた日というのは、日本軍のなかでの不慮の事故を扱った本です。昭和16年12月8日、ハワイに奇襲をかけて太平洋戦争がはじまったことは皆さま御存じと思いますが、実はそれだけじゃーないんです。つまり、奇襲をかけたのは、ハワイだけではないのです。そのほかの場所にも、12月8日を期して奇襲をかけるのです。ワタクシは、この事実を知りませんでした。


そうなると、ものすごい量の情報、人の移動、兵器の移動などがあって、12月8日を期して戦争を始めるというのですから、準備とか、暗号を作戦開始時以降は変更するとか、作戦司令文書の行き来等など、を極秘のうちに進めなければいけないわけです。そういうような、スッタモンダの中ではいろいろな事故が起きるという訳です。


第一話は、上海から広東向けて飛び立った中華航空のDC3型機が行方不明になった話です。非常に重要な書類を持って乗った参謀がいるというので、一体どうなったのかといって大騒ぎする捜索側の話と、実際に搭乗していて遭難にあった人物の話が互い違いにでてくるというお話です。秘密を守らなければならないという至上命題に対しては、重要書類を持っている味方がどうなったかわからないにも関わらず、中国側の無線を傍受して暗号解読の結果、機体がある場所が分かった段階で、爆撃をするのです。戦争は非情です。