バレエではお尻を締めなさいと言います。

そしてアドバイスとしては間違っていないと思いますが、誤解されやすいと思います。

初心者でしたら、お尻の力を抜くと思って良いと思います。

またワークショップやセミナーで一流のバレリーナのお尻に触った参加者の皆さんは、その異常とも言える柔らかさに驚いたと思います。

実際にこれは女性バレリーナだけでなく、男性も同じようです。

アメリカの某有名バレエ団の人気男性ダンサーなどはみるからに柔らかそうな筋肉ですが、他の世界的男性ダンサーのように立派な鍛え上げた筋肉ですら、実際に触るとつきたてのお餅か赤ん坊のほっぺたのようと言います。

フランスのバレエ団の元エトワールである男性ダンサーも、立派な足をしていますが、その柔らかさは尋常ではないそうです。

ですから、お尻を締めると言ったとき、かつては本当にお尻の筋肉(大殿筋)を固めていました。

今はそれはやりすぎということになってきています。

厳密には肛門括約筋を締めます
とは言っても、肛門をギュッと締めるのとはまた違うので悩ましいところです。

ポイントはお尻と一緒に腰裏もゆるめて、腰の緊張を取ることです。

一番シンプルな方法は、腸腰筋からアプローチすることです。

みぞおちから気を流して、腸腰筋に気功を働かせると、重心が変わります。すると勝手に肛門が締まる感じがします。

またいわゆるバレエにおける「引き上げ」を適切に行った上で、骨盤を回転させるとお尻の筋肉はゆるみ、骨盤底筋群が効いてきます。

会陰(えいん)が引き上がる感じです。

これが「お尻を締めなさい」とバレエ教師が言ったときに、実現したいことです。
・・ただ非常に難解ではあります。

前提として深い深い脱力と、腸腰筋を始めとするバレエ筋(バレエに欠かせない筋肉群)に対するセンスが必要です。
腸腰筋、インナーマッスルをきちんと使い全身を脱力させて立つとむしろ姿勢が悪くなったように感じます。

ゆらゆらっとしてスッーッと立っているので、見る人から見ると見事な立ち方なのですが、一般的には逆に見えます。

むしろ姿勢が悪くなったようにさえ感じます。周りだけではなく、本人の自覚症状としてもそうです。

正しい立ち方というのは、バレリーナやアスリートの立ち方です。高岡理論で言うセンターが通っている状態です。

普通はどのように立っているかと言えば・・
全身が力んで硬直させて、少し前傾姿勢で立ちます。
腰から下がピサの斜塔のように前へ倒れるように傾いています。
そのままだと前に倒れてしまうので、腰をガシッと固め、腰を反ります。
腰を反らせて、胸を張り、胸を張ると顎が上がるので、顎を引いて良い姿勢とします。

これは全身が固まる悪い姿勢ですが、我々はそう教育されて数世代経ったので、これが当たり前になってしまいました。

これは明治政府の軍国教育によるものだと思います。
(例えば江戸時代の人は高度な身体意識を有しましたが、その習慣が無かったので走れませんでした。もちろん特殊な訓練を経た飛脚などは1日80kmとか走ったと言われますが・・)

それに対して、腸腰筋が効くと、重心は一気に後ろへ移動します
足の裏で言えば親指重心、もしくは拇指丘重心から、踵の内踝の直下点にきます(もちろん一気にそこまで行く人は稀です。ただ直下点に近づくので重心はぐっと後ろになります)。

そうすると、反っていた腰と張っていた胸が災いして、後ろに倒れそうになります。

そこで腰裏をゆるめて伸ばし、胸も脱力して背中をゆるめ。肩を落とします。そうすると軽く前肩で猫背っぽくなります。

これは一見悪い姿勢です。

落ち込んでいるときや、だらしなく立っている姿勢に似ています。人によっては気分が滅入ったり、うなだれた気がしたり、老け込んだ気分になります。

ただこれがゆるんだ身体なのです。脱力した身体です。骨格模型や解剖図を見ると、前肩で猫背なのがわかります。

「こんなに猫背で後ろ重心でいいのですか?」と施術中によく聞かれます。

その時は鏡で自分の姿を見てもらいます。

すると自分の体感とは全く違う、スッーッとして真っ直ぐでゆるんだ自分の身体を鏡の中に見て、驚かれます。

主観は間違いやすいのです。ですからフィードバックは欠かせません。

その経験をした後に、バレリーナやオリンピック選手の身体を写真や映像、動画で子細に見ると、踵重心、前肩、猫背であることがわかります。

そして彼等はいつも落ち着き無く身体をゆらゆるクネクネと動かしています。

落ち着きが無いのではなく、ひたすら細かく筋肉を動かし、ストレッチしてゆるませているのです。

深い深い脱力状態がホメオスタシスなので、少しでも緊張や硬直があると気持ち悪くて仕方ないのです。だから無意識にモゾモゾと動かしゆるめています。


彼等は一般常識では悪い姿勢で落ち着きがないとされます。

小学校では一番に注意されるタイプでしょう。

彼等が教師の言うことを聞いてピシッと身体を固めて、落ち着いて良い姿勢(硬直した姿勢)になったら、我々は彼等の素晴らしいパフォーマンスを見ることは永遠に無かったのです!

それはひるがえって僕ら自身にも言えます。

僕らが「良い子」にならず、ゆるんでいれば高いパフォーマンスが可能になるということです。
先日、筋トレはイメージトレーニングで・・と書きましたが、
イメージトレーニングによって筋肉トレーニングをするための一番わかりやすい方法論はパントマイムです。

パントマイムで筋トレをするように、イメージトレーニングするといいと思います。

バーベルを持たなくても持っているイメージで行うということです。実際の感触や力感を味わいながら、身体を動かすことです。

物理的に重量がなくても、脳に情報として重みがかかっていればそれは筋肉に対して適切な負荷となります。
実際に鍛えられます。

どのような部位をどう鍛えたいのか、その先のゴールが何かによってもトレーニングの仕方は変わってきます。

例えば見せるための筋肉をつけたいボディビルダー型とダンサーと武道家やスポーツ選手では方法論が変わります。

また運動不足解消などの健康思考でしたら、それはそれで方法論があります。

ただ基本となるのは、高度なパフォーマンスや健康を支えるのは深い脱力であるという事実です。

ですから既成の筋肉トレーニングは逆効果と言わざるを得ません。

宇宙飛行士が落ちた筋肉を早期に回復させるために採用した(その後、ボディビルダーが好んで使い、なぜかそれが健康ビジネスに流れてきた)マシントレーニングは、オススメできません

怪我のリスクもありますし、マシントレーニングで鍛えた筋肉はマシントレーニングでしか活かせません。

ただ筋肉トレーニングはランナーズハイと同じで気持ち良くなってしまうので、ストレス解消には良いでしょう。

あまりにドーパミンやセロトニンやβエンドルフィンが出て脳が気持ち良くなるので、身体を壊しても止められません。
・・ここで言う壊すとは筋肉の話しではなく、関節等の機能障害です。

もちろんタバコやお酒などのドラッグやギャンブルと同じで、大人が悪いと知りつつも楽しみとして筋肉トレーニングをするのは一つの選択肢として有り得ると思いますが、健康のためと思ってやるのはどうかと思います。

身体をゆるませ脱力していく方向に意識を鍛え、筋肉をゆるませ、身体の使い方を意識することが重要です。

具体的には、腸腰筋に意識を起き、鏡を見ながら、腰が反らないところまできっちり腰背中をゆるめて伸ばし、内踝の直下点のみに重心を落下させ、その状態で立ったり座ったり歩いたりできれば、筋肉は強烈に鍛えられます。

踵を強く踏み込むイメージです。そうするといわゆるインナーマッスルのみが効いてきます。全身は逆に脱力します。

腸腰筋をきっちりやると、腰はくびれますし、男性なら腹筋は割れて美しいお腹周りになります。
肋骨をゆるめれば、胸囲は増すので女性はバストアップに、男性ならたくましい胸になります。

美しい筋肉のラインを出したいときは、腸腰筋など身体意識を鍛えて高めながら、食事をコントロールしてきっちり体脂肪を落としていけば良いことです。
(美容気功や美女ボディ講座のノウハウを生かしてください☆)

筋肉は体脂肪という皮膚の下のコーティングを落とせば見えてきます。