ローカルな雰囲気を際立たせる街の掲示板や落とし物置き場。ある駅から少し離れたところにある落とし物掲示板にはふにゃふにゃと自信気のない書体でかかれた「落としもの」の文字。一度も何かが置かれているのを見たことはないのですが、もしこの掲示板がなくなったら・・・と考えると、ピアスやキーホルダー、折りたたみ傘等、落としがちな小さなものがまだ手元にあるか確認し、ぼんやりと不安になる瞬間があります。

これまでに落として未だ帰ってきていないモノたちの中で思い出深いものが一つあります。それはペアリングです。ペアリングに憧れていた二十歳前後の頃、姉への誕生日プレゼントにわざわざ工場を予約し、1人手作りしたペアリングを贈ったのですが、半年後には無くしてしまいました。少し悩んだ後、「渡した側だから失くしたことは報告しまい。」と 今でも真実を隠し、会う度、大切に保管しているから着けていないんだ。という雰囲気で何とか乗り切るのです。優しい嘘。これをそう呼んでいいものなのか...。いつかまたお揃いのものを贈って上書きすべきだと思いながらも未だ行動に移せていないのはきっと、代わりを用意することで「ある日突然あのリングが見つかるかも...」という希望を諦めるような気がして

兄弟とのお揃いなのに、元彼を忘れられず新しい恋に進むか悩む女心そのもののようです。