本日は、ブラザーが単独で行った
ある事件を基に、


私から見たブラザーのフィルター
を通し、皆さまにお届けさせて頂
きます。


ブラザーの世界へようこそ


いってらっしゃい☆★





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トントン トントンと、
頭の裏側から、何かをを叩く音が
小さく聞こえる。


それが夢か、現実かは、まだ理解でき
ていないが、何か意志をもった音とい
うことは認識できた。


決して非常識ではないが、断続的に
その音は継続している。目覚まし時計
のような不快な音と感じ、意識をこの
世界へ強制的に戻された。


辺りはまだ薄暗く、カラスが我々の
時間だと誇示するように縦横無尽に
飛び回り、生きることを操作された
サラリーマンが、無関心を装い私の
車の横を通りすぎる。


寝坊しないようにと、起こしてくれた
母親に対応するような無慈悲な表情で、
薄く目を開け、その音の発信源を探っ
た。


襟元に輝く星を2つ着けた制服姿の
小太りな男が、薄ら笑いを浮かべ、
ドアを隔てたすぐ側に立っていた。


私が目覚めたことに気付くと、
その小太りの男は私の顔を覗きながら、
ずんぐりむっくりとした手の中指を尖
らせ、ガラス窓に向けて、


トントントン


『おはようございます。お休みの
ところ申し訳ありません。
窓開けていただいてもよろしい
ですか?』


丁寧な言葉の裏にある独特な威圧感と、
獲物を見つけたとばかりに高揚している
目の奥の欲求が、私を不快な気持ちに
させた。


眠りから強引に目覚めさせられた不快感と、突然にその現実に対応しなければいけない不安感とで、まだどちらが支配するか決断できない表情ではあったが、意識はしっかりとしていた。


運転席と助手席の間にある小物
入れに、大切に保管されている
アノ事も、しっかりと思い出した。


『はい。なんですか?』


車の窓を半分だけ下げ、わざと
軽快に言葉を発した。


『こちらで何されてました?』


私は丁寧に、


『いやぁ昨夜、この近くで友人の
結婚パーティがあり、夜も遅く
なってしまったので、車で休んで
から帰ろうと思っていたのですが、
知らない間に寝てしまったみたい
です。もう出ますので、、』


そんな事には興味はない。
見れば寝ていたというのは分かる。
疑わしいお前から、何らかの疑わ
しい何かが得たいのだ。


『申し訳ありませんが、免許証を
拝見させていただいてもよろしい
ですか?』


その時には、小太りの男の意図は
十分理解していたが、事務的にそ
れをこなした。


その作業をしている間、
下着が見えてしまっている女性を
盗み見するようなイヤらしい
目付きで、車内を確認する姿がさら
に私を苛立たせた。


無線にて犯罪履歴等の確認をし、
問題がないとの返答から、一瞬肩を
落とす仕草が見てとれたが、
そのまま職務を遂行し、丁寧にそれ
を返した。


『ブラザーさん大変申し訳ありませんが、
車内をちょっと見させていただいても
よろしいですか?』


私に前科などはない。あくまで車内
検査は任意だ。だが、ここでその事に
ついて議論したところで、よい方向に
向かわないことを私は知っている。


『はい。いいですよ。
適当に見てください。』


平穏を装い運転席から席をはずす
ことなく、そう答えた。


気がある女性と初めての夜を向かえ、
初めてその肌に触れる時のように、
待ってましたと言わんばかりに、
助手席から小太りの男は乗り込んできた。


そのタイミングと同じして、
その小太りな男を運んできた白黒を施した車から、同じような出で立ちの機械的で無機質な男が、ちょっと前まで小太りの男が居たドア越しのその場所へ、定位置と言わ
んばかりに馴れた足取りでそこに立った。


その姿を確認した小太りの男は、棒状の懐中電灯を片手に、場所場所の確認の承諾を得る素振りで、私の表情と懐中電灯を照らす場所を交互に念入りに調べ始めた。


私は見た目にそぐわないが、少々潔癖症
の癖がある。


車内に余計な物は置いていない。


椅子の下、後部座席、ドアの小物入れ、
目視で確認できる場所に物は何も置いて
いない。


小太りの男はそれらの場所を全て懐中電灯
を片手に、先程の作業を淡々とこなした。


あと、残された場所は二ヵ所。それぞれ蓋が付いたダッシュボードと、私の左手の先にある小物入れだけだ。


『ブラザーさんここ、開けさせて
いただきますね?』


返答を確認することなく、
小太りの男は
ダッシュボードの小物入れの中を
懐中電灯で照らした。


車検証を取りだし調べ、
その他、CDが二枚だけあったが、
その中身も執拗に調べあげた。



私は血眼になり、やっとの
思いでソレを手に入れた。

同棲する彼女に余計な心配をさせたく
ない気持ちと、ある人物に自慢する為、
忘れないようにと、そこに保管していた
のである。



『ここも開けますよ。』


小太りの男は私の平穏さと、
目当てのモノが捜しだせない苛立ちから、先程より角がたつイントネーションで、左手の先にある小物入れに、当たり前のように手を伸ばした。


瞬時に私の左手が動いた。


その小物入れの上に手を置き、蓋を
開けることを拒んだ。


『もう十分見たじゃないですか。
いくら見たって何もありませんよ。』


小太りの男の目が輝いた。


そのタイミングを待っていたと、
その表情から十分に読み取れた。


『何でここを見るのはイヤなんだ?
何か見られてはマズイ物が入っている
のか?』


高圧的な態度で小太りの男は私に詰め寄る
。マニュアル通りの動きである。


『もう勘弁してくださいよ。個人的に
見られたくないプライベートな物が
あるだけですよ。』


自信を取り戻した小太りの男は、勝利が
確定した安心からか、冷静に且つ丁寧に
私に言った。


『ブラザーさんが悪い人じゃないのは
お巡りさんも知ってる。
だから、そこを見させてくれれば
それが証明できる。
見ていいよねブラザーさん。』


そういい放つと、私が左手をのせた
ままの小物入れの蓋を強引に開けた。



その中には、ジップ式のビニール
の袋の中に入れられた緑色の植物片が、
懐中電灯の光に照らしだされた。



小太りの男は植物片をマジマジ
と見つめ、手に取り、


『あれ?あれれ?
これは何かなブラザーさん。』


私は無言を貫いた。


表情も平然を装った。


この場合、何も動じないに限る。


目当ての物が捜しあてられた
小太りの男は、マニュアル通りに
事を進めた。


『いやぁブラザーさん。これが何かを
ブラザーさんが教えてくれないから、
ちょっと調べさせてもらうよ。』


そう言うと、小太りの男は制服の
ポケットから無線を取りだし、
勝ち誇った口調で応援要請を
その相手に伝えた。


その間も、私は終始無言を貫いた。


頭を下げ、目線も私のお気に入り
であるClarksの靴先を見て、客観的
に見れば放心状態ってやつだ。


その状態が十分ほど続いたのだろうか。


私はその間、この先の作戦のことや、
完璧な放心状態を演じていた為、
回りの状況変化に気がついていなかった。


白黒を施したセダン型が二台と箱型の
車両が一台増えていた。


小太りの男はその状況を確認すると、
表面的にはやさしく、その根底では
私を見下し、


『ほらブラザーさん。今、鑑識をしてくれるお巡りさんが来てくれたから』


『お巡りさんはブラザーさんが持っている
これが、悪いものじゃないと思っている。
けどね、ブラザーさんが教えてくれないから調べないとね。でも、お巡りさんはブラザーさんのこと信用しているからね。悪い人じゃないって。』


そう言い放つ小太りの男の顔を見ると、その目の奥には真逆の思いがはっきりと写っていた。


そんなやり取りの間、車両の他に機械的で無機質な男が八人ほどに増え、私の車の回りを囲んでいた。


さらに、その周辺の歩道にも十人ほどの若者らしきギャラリーがいるのも見えた。


小太りの男は私に白黒を施した箱型の車両
に異動しろとの命令を下し、ドアを隔て定位置に立つ機械的で無機質な男がドアを開け、エスコートではない逃走防止の為に私の腰に手を添え、その車両まで誘導した。


箱型の車両に入ると、運転席に一人、後部座席に一人着座しており、私がその後部座席の男の横の席に誘導されると、その後、小太りの男が私の隣に滑り込むように入ってきて座り、軽やかな手付きで、私を閉じ込めるべくドアを閉めた。


私より先に着座していた後部座席の男は、試験管のような器具を手に持ち、蓋付きのプラスチック容器に入っている無色透明な液体をその試験管の中に半分ほど注いだ。


予防接種を受ける時のように、その作業を淡々と見つめた。


あまりにも平然としている自分に気付き、肩を落とす仕草や、救いを求める表情を上手く演じてみせた。


とうとうクライマックスである。


小太りの男は私の肩に手を乗せ、


『ブラザーさんいいね。この試験管の中の液体に悪い物が入るとね、紫色に変色するんだ。お巡りさんはさっきから言うように、ブラザーさんを信じているから、ブラザーさんが隠していたものは変色しないってね。いいねじゃあこの中に入れるよ。』


隠していたってことは悪い物って意味じゃないか。目の奥だけじゃなく、言葉でも本心が漏れてしまっているではないか。


と強く思ったが、私はお前みたいな
ヘマはしないと、作戦成功への気持ち
を高めた。


小太りの男は、私が小物入れに大切に保管していた緑色の植物片を、私の物ということを再確認し、試験管を手に持つ男に手渡しした。


緊張の空気がはりつめた。


とうとう、待ちに待った瞬間が訪れようとしている。


外にはギャラリーたちが、スモークを施していない後部座席の窓の隙間から見える、とびきりのエンターテイメントを、食い入るように凝視していた。


私の要望ではないのに試験管を手に持つ男は再度、その手順の説明をした。


『こちらの試験管の中に入っいる液体は、ある物質に反応します。紫色に変色します。その物質は法律で禁じられている違法な物です。今からブラザーさんが所有していたこれを、この液体に浸します。これはブラザーさんの物で間違いないですね?』


私は小さく申し訳なさそうに頷いた。


試験管を持った男は私の大切に保管していた緑色の植物片をその試験管の中に入れた。


その、大切に保管していた緑色の
植物片は、音をたてることもなく、
ゆっくりと、何故だか寂しげに
試験管の中の液体に沈んでいった。


・・・


・・・・


・・・・・


液体は無色透明のままである。


『あれ?あれれ??』


小太りの男は、鳩が豆鉄砲をくらったという表現の見本のような表情で、声を漏らした。


試験管を持つ男はその試験管を強く
反応を則すように左右に振った。


何度も何度も。


先程とは違う緊張した空気が
はりつめた。


液体は無色透明のままである。


大切に保管していた緑色の植物片が、
行き場のない浮遊物のように液体の
中を舞っていた。


小太りの男の
気持ちを反映しているように。


私は一息つき、小太りの男に向け満面な
笑みを浮かべこう発言した。


『目覚まし代わりになってくれて
ありがとう。お巡りさんは始め
からこうなる事を信じてくれて
ましたよね。こんな面倒な事を
しなくても♪
でも、もう飽きてきちゃったので、
帰りますよ。
ごくろうさま☆★』


と小太りの男の肩をたたいた。


さらに私は恥ずかしい自画録りの
ようなキメ顔を作り、白黒を施した
箱型の車両から下車し、ギャラリー
たちに満面な笑顔で手を振り、
機械的で無機質な男たちに、


『駐禁は勘弁してね★』


と言い残し、あみんの待つわを爆音
でながし、その場を後にした。




始めから分かっていた。


大切に保管していた緑色の植物片は、
雑貨屋Indiaで購入したものだ。


バビロンシステムを可愛がって
あげたのだよ。


この、煙使いの私が。


私の作戦は成功したのだ。



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その数日後、ブラザーは何処かの
健全な雑貨屋から購入した
ジップ式のビニール袋に入った
ワイルドレタスと言う名前の
怪しい植物片を私に自慢してきた。


そのワイルドレタスにまつわる
小太りの男の話しを土産に。


行動が変態なのではない


存在そのものが変態なのである


私はそんな変態が大好きだ






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