まず、作品自体はそこまで長くはないですが、わかりにくい部分を整理する意味もあり

かなりの長文です。

もっとまとめてという方はうまいレビューサイトをご覧くださいませ。

 

Laplacianという個人的に聞いたことのないブランドの作品。

気になった理由は単純、異様に点数が高かったから。

そして、やっぱり自分でやらないとわからないものだと思いました。

 

 

まず、どちらの言葉もそれほど詳しくなかったので調べました。

goo辞書より引用。

 

日中、目を覚ましたままで空想や想像を夢のように映像として見ていること。また、そのような非現実的な幻想にふけること。白日夢。

  1.  露光により青色に発色する鉄塩類などを塗った感光紙に、原図をのせて焼き付ける複写技術。また、それで得られる青地に白の印画。図面の複写、印刷の際の青焼きなどに利用。

  1.  《1が設計図に用いられるところから》おおよその計画。また、未来の構想。「都市計画の青写真」

作品を最後まで終えると、前者の意味はよくわかり、後者は2の意味として使われています。

つまり「白昼夢計画」みたいなものでしょうか。

 

なんのこっちゃかは最後まで分かりません。いや、最後でもある意味わかりません。

でもがんばりました。

 

<概要>******************************************

本質は一本道ですが、正確には少し違います。

まず、主人公が夢の導入部(序盤)を続けざまに3つ見て、その後最後まで見る夢を選択。

夢は、Case1〜3と名付けられます。

最後に、複線の回収となるCase0へと進みます。

こんな感じ。

※2週目をやると、Case2や3から始めることもあるので実際はアトランダムなのか?

 

プロローグ(クリアしてしまうと見れなくなるようだ)→

Case1→2→3(途中まで)→ ※中断後、夢を見ている2人とアンドロイドとの会話挿入

Case1~3(最後まで)→ ※ここでも中断あり

Case0

 

<プロローグ>

年齢不詳の男が、人を集めて世界となった少女の物語を語り始める。

主人公です。

 

<Case1>

夫婦仲の冷め切った中年非常勤講師と、両親の愛を受けられなかった孤独な少女の不器用な触れ合いを描いている。

 

<Case02>

実在の人物をモデルに、創作を加えた「夢」。脚本家ウィリアム・シェイクスピアと

女優オリヴィア・ベリーの恋物語。

 

<Case03>

早逝した母と同じカメラマンを夢見る不登校児カンナと、なんとなくという不透明な動機で教職を目指す、すもものある意味必然な出会いから始めるお話。

 

 

主人公とヒロインは紛らわしいですが、夢のCase1~3と0で違います。

こんがらがるので、0を正史とし、1~3の主人公は登場人物扱いとします。

 

<主人公>

海斗:

作中では記憶障害と記述されるが、完全記憶能力と創作でよく使われる

※現実にこんなものはありません

一度覚えたことは忘れない。母への風当たりの強さから今の待遇に大きな不満があり、

上昇志向が強い。好奇心旺盛で、かつ頭の回転も速い。しかし、エロゲのお約束、

超が付く鈍感。致命的な画伯。

 

<ヒロイン>

世凪:夢の幕間では無感情だったが元は感情豊かな少女。

2つの秘密を持っており、うち1つが海斗やそのほかの人間の欲望をかきたてる。

 

創作に興味を持っており、実際に数作書き上げている。

 

<夢ヒロイン>

 

波多野 凛:父と母の離婚、その後も父から一切顧みられなかったこと、

有名作家の父の自殺、と孤独に生きてきた。

とあるきっかけで、非常勤講師の有島に興味を持つ。

オリヴィア・ベリー:女優を目指すが、社会通念がそれを許さない。

女が舞台に立つことが許されない時代。

それゆえ、エリザベス女王の心に響く演劇をもって女優の正当性を説くことを目指す。

また単に演劇が好き。

 

桃ノ内 すもも:教員免許取得中の実習生。担当の教師が渋ったため、

代わりに不登校のカンナを訪れた。浅慮で向こう見ずな性格。

将来が見えず、取りあえずという理由で教職を目指している。

 

<登場人物>以降、Caseにあわせ、①②③⓪で各話の登場分けします。

有島①:古文の非常勤講師。かつては作家を目指していた。妻帯しているが、

関係は冷え切っている。

 

渡辺①:社会科の非常勤講師。喫煙仲間。唯一の話し相手。

 

ウィリアム・シェイクスピア②:酒場の店主という設定だが、

完全記憶能力により客から聞いた話を覚えており、

またそれらを用いて人々を魅了する話を作る才能を持つ、という設定。超が付く奥手。

 

キキとトーマス②:劇団のメンバー。オリヴィアの奴隷。

キキは女装した男。女が女として舞台に立てないため、女役も男が務める必要があった。

トーマスは喜劇に合うということで女装させられることになった。もちろん男。

 

飴井カンナ③:母の名はアンナ。有名なカメラマンだった母の影響を受け、

同じカメラマンになる夢を持つ。その一歩として、76年に一度、

その年に来るというハレー彗星を撮影することを夏の目標とする。

 

梓姫③:あずき、と読む。車全般に詳しいうえ技術も併せ持つ。

その時代では特殊な車のため、カンナが呼んだ技術屋。当初車を盗難しようとするが、

自身の住処を焼き払われ、ガレージに住むことになってしまった。

 

遊馬⓪:22世紀、この作品における現代の研究者。主人公海斗が研究員を目指す

きっかけとなった人物。

 

出雲⓪:アンドロイド。一度破壊され修復されたため、たとえば作る食事が毎回同じなど

のバグが生じている。人間の心情理解、描写に優れている。

 

<感想>

Case1~3はすべて作中でも触れられているが、別離で終わる。

それにはこの夢作品を手掛けた人物、世凪のとある感情が含まれている。

 

 

Case1:もっとも作品の質が高く、最初に始まったこともあり、

当初は「ああ、主人公は中年なのね」と誤解したほど。ただほどなく訂正される。

 

出てくるキャラクターの個性がとてもよく描かれており、最後まで飽きることなく

読み進められた。


 

この話は、世凪が最後に作成した、自身の感情を多分に乗せたもの。

母に捨てられ、父も最後はやむを得ないとはいえ自分を忘れ世を去った。

そんな自分を凜に重ねている。

 

なぜこの夢だけ年齢差があるのかふと思ったのだが、

初めから凜を家庭を築く存在として描いていない。

立場ある中年という立ち位置を有島に持たせた。特に強く、別離を伝えた話。

 

Case2:面白い話だった。

 

ウィルにかかわる人物の話から、オリヴィアに命を助けられ代わりに奴隷にされ、

女優を目指すオリヴィアのため脚本を作り、劇団員も個性を生かすよう進言して

ついに宮廷演劇を行えるところまでたどり着く。

エリザベス女王の前で、オリヴィアが女優として演じるロミオとジュリエット。

 

 

ただ、惜しいかなこの二人が愛し合ったという部分はやや無理がある。

美しいから、はわかるのだが、オリヴィアの感情はどうも……世凪の感情も

含まれてないか?それありきというか。

才能に惚れている描写が多いこともあってか、どうにもそこだけ感情移入できなかった。

 

Case3:世凪の処女作ということもあり、残念かな作品としてはまあ、お察し。

 

世凪が感情豊かだったころをそのままにすももに投影し、

もどかしいほど奥手なカンナを海斗に投影した、

如何にもな青春物語。

 

しかしこの話だけは、再会を約束する、別れで終わる話でもない気がする。

世凪の感情はあまり伝わらないが、言葉遣いはいかにも幼年、青年時代のそれにそっくり。

 

 

Case0:長い。3つの夢の総量ぐらい長い。

 

なぜ幕間で、世凪は感情を失ったかのようだったのか?

なぜ3つの夢を、「世凪に合わせて」海斗は見るよう促されたのか?

なぜ一度、海斗は記憶を消されたのか?

 

なにより、自分で自分をそのような状況にした理由は?

 

それが海斗たちの幼少期から、青年、中年、そしてその時点に至るまでにあったことが

海斗視点で語られることで少しずつ明らかになる。

 

世凪は、遺伝性のアルツハイマー病を患っていた。父がそうだった。

幼少のころから、いつかその日が来ると覚悟し、海斗に踏み入らないよう努めていた。

また、不思議な力を持っていた。思考空間。世凪の脳が仮想現実を作る。

 

前者は自ら話さず、人づてに知られてしまったためやむなく明かした。

後者は幼少時から海斗に証し、遊びにすら使っていた。

 

海斗が母のような体を動かせない人間に、仮初とはいえ自由に動ける空間を作りたい、

そういう目的をもって準研究員となった。

その際、世凪の持つ思考空間の理論を用いることを考え、ある程度の実績を得た。

 

(ここからが長く、かなり難解)

 

前頭葉を切除され自我を失いながら、

幕間からの3つの夢を見ることで仮初の時間を得た世凪。

しかし、その状況で再度、海斗に願う。みんなに、美しい世界を見せてあげてほしい。

 

 

こうして、世凪は醒めない眠りにつき、世界となった―という話。

 

 

多分理屈で理解しようとすると頭おかしくなると思うので、まあなんとなく感覚で

読み進めるのがいいのではないかと思います。

総プレイ時間は40時間ぐらい。かなり長いです。

 

夢の話と本筋が、関係しているようで夢自体もある程度独立しており、

実質4話構成のような感じ。

夢そのものを理解は不要です。律儀に後で説明されます。

 

問題があるとすれば、いちいち夢の各所でぶつ切りにされてテンポが悪い点。

また、いくつかの事象についてはほぼ説明がされないか、まくしたてるようにされるので

?となると思います。

 

個人的には、分からなくても問題ない(実際ないです)と無視して読み進めました。

評価されているほどではないにせよ、見るべきところは確かにあります。

考えるな、感じるんだ。と言いたかったんでしょうね作者は。

 

このシーンなんてまさにその集大成です。いいん?世界が夢に現れても。

 

クリアすると、各話のHシーンや後日譚が見れます。

Case1で凜はどうなったのか?

Case2でオリヴィアはウィルと再会したのか?

Case3で2人は再会できたのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、スペンサーはどうなったのか?

左はシェイクスピアに負けた何某 右は重婚を罰せられ女に懲りちゃったらしい変態