父の死後、5ヵ月が過ぎた
大嫌いと思いながら看取った父

あれから無人となった実家の庭
時々お手入れに行く

庭の隅に
青々と繁ったツワブキ

思えば一昨年の秋
実家にツワブキの花を見つけ
「私の大好きな花‼️」
父に言った事を思い出す

ほんの数輪の花だったが
思わず私は叫んでいた

その時、父は一言
「ほう、そうか」
と言ったと思う

たわいない
日常の会話のひとつ

あれから父は
ツワブキの花の季節が終わると
花がらを摘み取り剪定し
丁寧にお手入れをしていたようだ

もう骨髄腫に蝕まれ
歩く事さえ辛かった筈の父が

我が子として
余り可愛がる事もなく嫁にやり
思いがけなく
自分の最期を託す事になった
夫と娘に先立たれ
鬱や癌やと大変な
哀れな娘に示した
父なりの不器用な愛情なんだった
そう想うと
思わず
胸が熱くなり
涙が少し溢れてきた



そうだ、やはり
古い家と広い庭
片田舎の奥まったこの家に
この夏、私は帰って来よう

ギクシャクと年月を重ねて生きた
父と母
商売と貧乏に追われ
育児や家族団欒とは程遠く
憎んだり争ったりしながらも
別れる事が出来なかった
父と母

そんな二人を
蔑みながら
馬鹿にしながら
斜に構えて生きてきた私

でも、きっと本当は
二人の愛が欲しかったんだ、と
今は想う
心から愛して欲しかったんだ、と
不器用な二人の親に



今年の晩秋
ツワブキは一際大きな花をつけ
やがてひっそりと枯れていくだろう
まるでこの世の
人の生きざまの様に

これからは
私が丹念に心を込めて
剪定し、見守っていく

あの世に逝ったら
まずNと遇い
次に母と遇い、ツワブキを語る
父に遇うのは
もう少し勇気が要るかな…

ごめんね
こんな娘で
お父さん


今日は
大切なNの
月命日

笑っているよね
Nちゃん
似た者親子だねって…