亡き父は椿をこよなく愛し
色々な種類の椿を庭に植えた

今、
椿達は盛りを終え
ポトリ、ポトリと花を落とす

そんな椿を拾い集めながら
ふと気付く

花開かずに
蕾のままに
墜ちる椿のなんと多さよ

固く小さな蕾もあれば
あと少しで花開いた筈の蕾も

ひとつひとつ
若い椿の亡骸を拾い集めながら
押し寄せてくる深い悲しみ

この蕾の数々は
命の花を開かせる事なく
親を遺し
先に逝ってしまった我が子達

蕾のままに墜ちた椿の哀れさよ
それを見送る切なさよ

今、世間は大きな黒い渦の中
この渦に巻き込まれ
蕾のままに墜ちる命が
ますます増えていくのだろうか

亡骸を拾い集め
哭き叫ぶ親達が増えていくのか

潔く散る椿
満開の姿のままに墜ちてこそ
椿としての生を全うする筈

どうか全ての命の蕾が
見事に花開いて欲しい
咲いた順に墜ちて欲しい

命の終わりは必ず来るが
逆縁という終わり方は
あまりにも残酷で不幸せ

生んだ事さえ後悔させる
生んだ己を嘆いてしまう

居る筈の無い神さえを
恨み憎んでしまうから
「人でなし」になっていくから

咲いた順に終わりたい
見送るよりも見送られたい

悲しい母の願いです
哀れな母の祈りです