誰の悲しみと比べても

多分、誰もが思うのだろう

自分の悲しみが一番深い、と

親を亡くしたり

兄弟姉妹を亡くしたり

連れ合いを亡くしたり

でも何よりも

大切な我が子を送る事は

きっと最高に悲しく苦しい

病死、事故死

或いは事件に巻き込まれて

そして自ら選んだ自死

Nは自死

まっ逆さまに飛び降りて

殆ど即死の状態で

あれから三年は自分を責めた

死ぬべきは私なのに、と

追いやったのは私なのに、と

年月が流れやがて気付く

どんな死に方も逝き方も

我が子を先に送るのは

この世の中で一番の悲しみ

だからもう

悲しみ比べはやめようと

私達は子に先立たれた親達

悲しみ比べは必要ない

同じ傷みを知っているから

誰も責めたり叱ったりしない

消える事ない深い悲しみには

ただ、少しずつ慣れていくだけ

人間なんて

気まぐれな神様の創ったおもちゃ

不出来で傲慢な生き物

失敗も過ちも沢山犯し

それを後悔して苦悩する

先に逝った我が子達は

親の私よりも上出来なおもちゃ

きっと彼方で遇えたなら

あの子は私の母になる

先日のCT検査で

私の胸にまた影が見付かった

そろそろ

カウントダウンに入ったようだ

やっと赦してもらえるのかな

悲しみ比べはやめたけど

私達はそれぞれに

色の違う悲しみを

心に抱きしめ待っている

空を仰いで待っている

還る時を待っている

あの子にたどり着く瞬間を

ときめきながら待っている

壊れたおもちゃは待っている