limおバカ→∞ -43ページ目

キープですか、俺。





今日、水曜日は本来塾は休みである。 普段なら校舎自体鍵が閉まっている。


ところが今日俺のスーツのポケットには校舎の裏口のカギが入っていて、私立専願生徒たちが勉強しにくることになっていた。





 『こんにちわー。』

 『こんちゃ~~!』



ハイジ  『はいこんにちは。 一号室に入ってくれ。 今日はそこを使う。』





私立専願を受ける生徒は5人程度。


その中にはあやめや美織、そして麻由も含まれている。





私立専願入試まであと日。


残り時間が少ないことを知っている生徒たちは、休校日の呼び出しにも素直に応じた。






・・・あやめを除いては( ´_ゝ`)





ハイジ  『あれ、今日あやめは??』


専願の生徒  『なんか用事があるけん来れんって言いよったよ?』





用事って何だよ。 絶対遊びに行ってるに違いない・・・。





律子  『こんにちわーー。』

武美  『こんちゃ~~~☆』



ハイジ  『・・・? お前らは専願やなかろうが。 今日は専願しか相手せんぞ??』



律子  『別にいいよ。 家じゃ勉強する気起きんけぇ来ただけやもん。』





武美は恐らく麻由たちが来るから遊びに来ただけだろう。


しかし律子は塾が休みの日でもほぼ必ずと言っていいほどやってきて、自分で黙々と勉強をする。


俺は律子の頑張りには本当に関心していた。










世の中には、努力型の人間と才能型の人間とがいると俺は思う。


必死に勉強するから点が取れるタイプの前者と、


センスや感覚で問題を解いていくタイプの後者。



俺は間違いなく前者で、センスなんてかけらほどもない。 今の大学に入れたのだって奇跡だと言われた。


ポチャは間違いなく後者。 数学の問題も直観で答えを導き出す。





そして俺が3Cの数学を担当し始めたころの律子は、間違いなく「努力型」であった。


ひらめきや発想を必要とする問題が非常に苦手で、俺が10教えても律子は4、5程度しか理解出来ていなかったが、残りの半分は努力で補った。


そのため彼女は定期試験などではいつも高得点を取ることが出来ていた。



昔の俺もあんなだったな・・・と俺は律子を見て感じることがたびたびあった。あいつは絶対「努力型」だ、と。





・・・ところが最近は違う。



努力は才能を凌駕するとはよく言ったもので、最近の律子は間違いなくセンスで問題を理解して解いていた。


俺が10を教えれば、律子は50を理解した。



自分の中にうもれていた才能を、律子は自分の力で引っ張りだしたのかもしれない。





福岡県公立入試数学、60点満点。 俺が律子に与えた目標点は50越え



そして今まで模擬試験でいつも40点台でとどまっていた律子は、



先月初めて51点をとった。





律子  『やった!! 初めてやけんはいじス!? うち50点とか初めて取ったけんっ!?





律子は歓喜した。



ハイジ  『おう、やっぱ努力した分成果は出るよ。 これからもキープ出来るようにしないとな。』



平静を装ってそう答えたが、本当は律子以上に、この場で叫びたいほど俺は嬉しかった。





数学が出来るという事実が、律子に大きな自信を与えていた。



そしてこの一年間で律子は次第に俺に心を開き、今では学校で起きたどうでもいい笑い話も、真面目な勉強の質問も、恋愛の話も、いろいろなことを俺に話してくれるようになった。





『数学のことはハイジに聞け。』



律子はそう思ってくれているようで、マサキ先生が数学担当だったときも、疑問に思うことがあれば俺のもとへ持ってきた。



そしてこの3学期から再び俺が数学担当になったことを3Cの生徒に告げたとき、



律子  ほんとに!? やった☆



と教室中に響くほどの喜びの声をあげたのも律子だった。





当然数学担当が俺になったことを不快に思う生徒もいるだろう。

万人に求められる教師になるのはそうたやすいことではない。





だが、俺が将来教師になったとき、そして当然今も


生徒との間に築きたい関係とは、俺と律子のような関係だった。



律子が俺を信頼してくれているのと同様、


俺も律子を信頼していた。



律子なら最後までやり遂げられる、律子なら自分の力で合格を勝ち取れる、と。





・・・とまぁ律子のことを熱く語ってしまったが、今日のメインは私立専願組。



残り6日しかないというのに、こいつらは完全に気を抜いていた(=_=;





美織  『今日ってハイジ先生しか来んとー??』



ハイジ  『そう。』



美織  『は!? 何でーー??』



ハイジ  『何でって、今日塾休みの日やんけ。 他の先生たちは休みよ。』



美織  『は、じゃぁ先生今日タダ働きやないと?? 何で来たと??』



ハイジ  『何でって・・。 そりゃお前らと一緒におれるのもあと6日になるかもしれんだろ?


      残り少ないお前らとの時間だから、大切にしたいからね。』    ←ちょっといいこと言った





美織  『はっ。 タダ働きしにくるとか、頭悪いやろ。





( ´_ゝ`;)





・・・そしてこいつはこいつで勉強のことなんてうわの空だった。





麻由  『せんせぇ、もし麻由が私立合格したらね、アド教えて~~。』



ハイジ  『だからダメだって言っただろ(;-_-) 諦めて勉強しろ。』



麻由  『じゃぁわかった。 合格したら麻由付き合ってー☆



ハイジ  『もっとダメだろ∑( ̄☐ ̄;)!!  


           いいから黙って勉強しなさい・・・。 入試まで残りわずかなんだぞ?』



麻由  『だって“ご褒美”がないと頑張れんもんっ!


       じゃぁわかった☆  合格したら麻由結婚して♪



ハイジ  『どんどんレベルアップしてんじゃねぇか・・・(((((((ーー;)





ぶっちゃけ俺もめんどくさくなるくらいの猛アピール。


前付き合ってた彼女からもこんな熱烈なラブコールは貰ったことがない・・・。




さすがの麻由も他の生徒がいる前ではこんなことは言わないが、


たった1分でも二人だけの時間があるとこんなことを言ってくる。 驚かずにはいられない。





・・・そしてもう一つ麻由について驚かずにはいられない事実が今日発覚した。





俺に「結婚してくれ」とまで告白してきた麻由だが、実は
















付き合って一年以上経つ彼氏がいるのである・・・。





無論そんなことは俺には隠している。


だが今日聞いてしまったのだ。 武美が、





武美  『麻由、今日16日よね??


     今日で〇〇と付き合って1年と2ヶ月やんー☆ おめでとーー♪♪』



麻由  『ありがとー♪ 喧嘩ばっかしてるけど結構ラブラブで続いとるもんねー☆』





・・・俺へのアプローチがマジだとしても、冗談だとしても、



どちらにしても麻由を女として信頼することは決して出来ないだろうと思ったハイジであった・・・。











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