「キモい」から始まる絆。
うちの塾の中学三年生に、美雅という女の子がいる。
これで「みあ」と読む。 母親が韓国の方らしく、珍しい名前なので初めて見たときは読めなかった。
一年生の時からうちの校舎にいる子で、当然去年俺がこの塾に配属になったときも2Bの生徒としてうちの塾にいた。
ここから少しの間は、俺が塾に来た当時、つまり美雅が中学2年生のときの話である。
当時俺は3年生(レイサたちのクラス)と1年生(もん吉たちのクラス)を担当していて、2年生とはかかわりはなかった。
それでも演習とかで2年生の授業に入ることは何度かあって、入るたびに・・・
美雅 『マジキモい。 この教室入ってこんで欲しい・・・。』
あやめとか数人の生徒に「キモい」とかは度々言われてたから何とも思ってなかった。
あいつらにとって挨拶みたいに簡単に使う言葉だと思ってたから。
…でも美雅の使う「キモい」は違っていた。
何故だかはっきりとはわからなかったが、美雅は間違いなく俺を嫌っていた。
美雅 『ハイジとかマジウザくない?
あいつおるけん塾楽しくないー。』
わざと俺に聞こえる声で美雅は言う。
女性職員 『・・・えらい嫌われとーね。』
ハイジ 『・・・ええ。 生理的に受け付けないってやつなんですかね・・・。』
何度かコミュニケーションを取ろうと試行錯誤したが、無駄だった。
シカト、シカト、そして陰口。
・・・美雅を見かけるたびに俺は辛い思いをしていた。
そして美雅は3年生になり、美雅のクラスの数学はマサキ先生が担当になったので、
俺は美雅と授業で関わることはほとんどなくなった。
ところが美雅はホントに数学が苦手で、
大人しいマサキ先生相手に「分からん分からん」と質問攻めにすることが出来なかったためか、
学校で行われた数学のテストで3年生上クラスとは思えない点数を取ってしまい・・・
美雅 『○○先生(女性職員)・・・ウチ、高校行けんよね・・・』
そうとうヘコんでる様子の美雅。
女性職員 『美雅は数学苦手だもんね。
・・・でもそんな高校行けんとかじゃないけんそんなネガティブにならんでも・・・』
美雅 『でも見てよこのテストッ!!
こんなひどいの今まで見たことないし・・・』
ハイジ 『・・・・・・・。
・・・ほら、ココ。 マイナスとマイナスのかけ算やけん、プラス?マイナス?』
美雅 『・・・・・・・・・・・プラス・・・。』
ハイジ 『やろ? じゃあココいくつになる?』
美雅 『・・・・・5ab。』
ハイジ 『その通り☆ じゃあこっちもやってみ。』
美雅 『・・・・・・3x-5?』
ハイジ 『うん☆ できるやんか。 「数学苦手や」っておもっとったらそれだけでも点が下がるよ?
美雅はBクラス(上位クラス)におるんやけん、(勉強)出来ん子なわけなかろーよ?』
美雅 『出来ん子やしっ! マサキ先生の授業とか全然分からんもん・・・』
ハイジ 『出来ん子やったらとっくにAクラスに落ちてるよ。
今やったら出来たやんか。
まだ入試まで1年近くあるんやし、分からんトコ少しずつ減らしてこうね(^^)』
美雅 『・・・うん。』
ハイジ 『分からんかったらマサキ先生にすぐ質問し。
・・・それでもわからんかったら俺んとこに持っておいで。 いつでも教えちゃーけん。』
美雅 『うん☆ ・・・ハイジ先生?』
ハイジ 『・・・?』
美雅 『ハイジ先生って優しくしゃべるとオカマっぽくてキモい。』
ハイジ 『やかましいわΣ(~∀~||;)』
美雅 『wwwwww』
この日初めて美雅は俺の前で笑顔を見せた。
そしてこの日から少しずつ俺は美雅と打ち解け、会話も増えた。
俺にいつも絡んでくるリオややっこが美雅と仲が良いのも手助けしてくれたようだ。
・・・そして今では・・・
美雅 『はいじス~~~~!! 数学教えてーーーーッ!!』
ハイジ 『耳元でやかましいわッΣ(~∀~||;)!!
すぐそこにマサキ先生おってやんけ!?
・・・俺は今プリントづくりで忙しくて・・・』
美雅 『プリントとウチとどっちが大事なんよッヾ(。`Д´。)ノ!!』
ハイジ 『・・・そういうのセコいだろ・・・(=_=; …美雅の数学みる方が大事です・・・』
美雅 『ほらごらん♪ 今日って何時まで居残りしていいと?』
ハイジ 『(ほんとは11時だけど)10時半で塾閉まるっちゃないかいな。』
美雅 『じゃあ11時まで残って教えてね、先生☆』
ハイジ 『…はいはい、わかったから・・・っておかしくね(°Д°;!??』
美雅 『今日は二次方程式ね。 そんで明日は平方根を0から教えてね☆』
ハイジ 『明日も居残りなのですね…orz』
美雅 『男のクセになんクヨクヨしよーと!? キモッ!!』
ハイジ 『・・・・・(((((((ーー;)』
今の「キモい」とあの時の「キモい」