🔥 芥川龍之介と三島由紀夫の対話
――縄文人の日常をめぐって
芥川龍之介(火の揺らめきを見つめながら) 「縄文人の暮らしには、どこか“物語”の原型があるように思えます。土器に刻まれた渦巻き模様、貝塚に眠る骨――それらは、言葉以前の詩です。」
三島由紀夫(鋭く反論するように) 「詩? いや、私はむしろ“肉体”を感じる。縄文人は、制度に飼い慣らされていない。彼らの生活は、自然と一体化した“行動の美学”だ。狩り、火起こし、交接――すべてが儀式であり、演劇だ。」
芥川(微笑して) 「なるほど。あなたは“制度以前”の身体に惹かれるのですね。けれど私は、むしろ“制度の萌芽”を見たい。たとえば、共同体の中での“役割”や“死者の埋葬”――それはすでに“倫理”の始まりではありませんか?」
三島(やや苛立ち気味に) 「倫理? それは“死”を恐れる者の言葉だ。縄文人は、死を“自然”として受け入れていた。私はそこに、“制度詩国家”の原初的な美を感じる。つまり、“制度”がまだ“詩”であった時代だ。」
芥川 「それは興味深い。制度が詩であった時代――つまり、制度がまだ“物語”と分かちがたく結びついていた時代。あなたの言う“演劇”と、私の言う“物語”は、案外近いのかもしれませんね。」
三島 「だが、現代はどうだ? 制度はもはや詩ではない。制度は冷たく、透明で、匿名だ。だからこそ私は、縄文人の“火”に回帰したい。あの火は、制度を照らす“影”ではなく、制度そのものだった。」
芥川(静かに) 「そして私は、その火の揺らぎに、言葉の始まりを見たいのです。」