浄土 (講談社文庫)/町田 康
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町田康さんの小説は初めて読む。

これは確か何カ月前かに、衝動的に町田さんの小説を買いたくなって、
急きょ夜10時、本屋で購入し、「あぱぱ踊り」と「どぶさらえ」あたりまで読み、
いまいち町田イズムなる独特の文体が理解できなくて、そのまま放置した。

ここ最近金銭的に貧しい状態が続き、
本を買うお金も節約しなくてはならなかったので
とりあえずそこらへんにしまわれている読みかけの本を引っ張り出して
「本音町」や「ぎゃおすの話」などを読み始める。

すると、理解できなかった町田イズムが楽しめるようになっていた。
退屈で仕方ないと感じていた淡々とした文章も、
町田さんなりのユーモアも、
「いてこましたろ」といったコテコテ関西弁も、
全てが「かっこいい」ものに見えてしまい、止まらなくなった。

音楽アルバムで、始めはつまらないと思ってとばしていた曲が、
のちのち聴いてみると、とんでもなく味わい深い曲で、結局お気に入りになってしまった、という感じに近い。

普通の世界に、なにか違和感があるような世界観、
大口を開けて朗読しているような、言葉選びが渋い文章、
想像すると笑けてくる、静かなユーモア。
どれもが面白くて、どれもが美しく感じられた。

この本の世界の中の人物たちは、みな、大真面目な顔をして、ふざけている。
一言で言うと、そんな感じがした。

中島らもさんの世界観にも似ているな、と思った。
そうだ、中島らもさんの対談から、町田康さんを知ったんだ。
今、急に思い出した。
そういうつながりもあって、ちょっとユーモアセンスや、文体が、似ているのかな。

どちらにしろ、昔私がらもさんにハマったように、
今度は町田さんにハマりそうだ。