【(スタバの壁から)沖縄で学ぶ(36)】
沖縄のスターバックスの壁から見えた未来
― AI時代に価値を持つ「ゆいまーる」の力 ―
先日、那覇市のデパートリウボウにあるスターバックスを訪れた。
コーヒーを注文しようとしたとき、
ふと目に留まったのがカウンター前の壁だった。
そこには、小さな木片を無数に組み合わせた独特の意匠があった。
木を輪切りにした断面、つまり木口(こぐち)が見えるように配置され、
それぞれの年輪が円形の模様を描いている。
さらに木片には凹凸があり、照明によって複雑な陰影が生まれていた。
私は思わず写真を撮った。
なぜだろう。
単なる装飾以上の何かを感じたからだ。
沖縄らしさはどこにあるのか
沖縄は地域愛の強い土地である。
このスタバでは観光客に対して、単なる「いらっしゃいませ」ではなく、
「めんそーれ」という言葉で迎えてくれる。
そのため、この壁にも何らかの沖縄らしい意味が込められているのではないかと考えた。
調べてみると、この壁が沖縄の伝統意匠を直接表現したものではないらしい。
しかし、見れば見るほど沖縄の風景を思い起こさせる。
琉球石灰岩の石垣。
珊瑚礁の岩肌。
グスク(城)の石積み。
それぞれ形は異なりながらも、一つの景観をつくり上げている。
この壁も同じだった。
年輪の模様は一つとして同じものがない。
凹凸も不規則である。
しかし全体としては美しく調和している。
そこには「多様性の中の秩序」があった。
スタッフの笑顔が教えてくれたこと
さらに印象的だったのは、スタッフの方々の接客である。
表情が豊かで、どこか柔らかい。
スタッフ同士も、笑顔で話している。
もちろん全国どこのスターバックスでも質の高い接客は受けられる。
しかし沖縄では、それがより自然な人間味を伴っているように感じた。
外国人観光客や移住者も多い地域でありながら、日本らしい温かさが残っている。
そこで思い出したのが、「ゆいまーる」という言葉だった。
沖縄の共同体文化を象徴する言葉であり、「助け合い」や「支え合い」を意味する。
かつては農作業や家づくりを共同で行う仕組みだったが、
その精神は今も人々の関係性の中
に息づいているように見える。
AI時代に価値を持つもの
私たちは今、AIが急速に進化する時代に生きている。
知識を得ること。
翻訳すること。
文章を書くこと。
分析すること。
こうした作業の多くはAIが支援できるようになった。
だからこそ逆に、人間にしかできないことが重要になってくる。
それは何だろうか。
私は次の三つだと思う。
· 信頼を築く力
· 協力する力
· 意味を共有する力
これらは知識だけでは生まれない。
人と人との関係の中で育まれるものである。
その意味で、「ゆいまーる」の精神は過去の遺産ではなく、未来の資産なのかもしれない。
なぜ沖縄なのか
私は沖縄に大きな可能性を感じている。
一般的には、日本の端に位置する地方の一つとして見られることが多い。
しかし、革新は必ずしも中心から生まれるわけではない。
むしろ
· 異なる文化が交わる場所
· 多様性が高い場所
· 周辺部
から新しい創発が起こることがある。
沖縄はまさにその条件を備えている。
歴史的には琉球王国として東アジア交易の要衝だった。
現在でも、
· 日本文化
· 中国文化
· 東南アジア文化
· アメリカ文化
が交差している。
そして何より、「ゆいまーる」という共同体の精神が残っている。
AI時代に求められるのが人間同士の協力であるならば、
沖縄は未来社会の中心になり得るのではないだろうか。
一枚の壁から見えたもの
振り返ると、すべてはスターバックスの壁から始まった。
年輪の異なる木片。
不規則な凹凸。
それぞれが独自の個性を持ちながら、一つの美しい空間を形づくっている。
それはどこか、沖縄そのものにも見えた。
そして未来の社会にも重なる。
AIが知識を支える時代だからこそ、人間は人間らしさを磨かなければならない。
一人ひとりはそれぞれ持ち味がある。
その持ち味をいかしながら協力し合う。
だから、大きな力となる。
一人の力ではなく、つながりの力が問われる時代がやってくる。
もしそうであるならば、沖縄は「日本の端」ではない。
むしろ、新しい時代の入り口に立っている地域なのかもしれない。
あの日見た木の壁は、そんなことを静かに語りかけているようだった。

