「漢字は難しいです」
どの生徒たちも言う。
「でも、面白い」
漢字を書くことは難しい。
覚えるだけでは面白くない。
ただ、形に意味がある。
象形文字の説明に入る。
生徒たちの目が輝く。
驚きの表情だ。
「卵」
「これは虫の卵の形です」
「ええっ」
形に意味がある。
タガログ語も英語もアルファベットだ。
それぞれの文字に意味はない。
漢字は意味のある文字。
彼らにとっては驚異だ。
漢字の書き順も難しい。
あまり気にしなくてもよいかも知れない。
それでも書き順の話をする。
「自動販売機」
試験に出たらしい。
確かに難しい漢字が並んでいる。
書き順の話をして書いてみる。
自動販売機。
「あっ、きれいだ」
書き順を正しくする。
字が美しくなる。
「字も美しいんだ」
「日本では書道があります」
「美しい字を書くことは日本の伝統です」
「日本人はきれいな字を書きたいと思っています」
彼らは日本に対するイメージを持っている。
「日本はきれいな国です」
彼らがよく言うことだ。
「字も美しいんだ」
「すごいですね」
きれいを尊ぶ精神文化。
彼らは日本に対する興味を深める。
「5Sとは何ですか」
会話の例文だ。
「整理、整頓、清掃、清潔、躾です」
工場で5Sが行われる。
これは美しさを保つことだ。
美しさは工場の世界にも広がる。
高度成長期の日本。
美しさの精神は大きい。
結果として能率的な生産となる。
実は学問の世界も同じだ。
美しさの精神。
数学などは美しさに憧れる。
いつの間にか新しい真理に触れている。
数学も言語もその背景に美しさがある。
その美しさに触れる。
そして好きになる。
これはAIには分からない。
人だけが分かる大切な精神だと思う。