【(美しい))フィリピン滞在記183】

「漢字は難しいです」

どの生徒たちも言う。

「でも、面白い」

 

漢字を書くことは難しい。

形は複雑だ。

覚えるだけでは面白くない。

 

ただ、形に意味がある。

象形文字の説明に入る。

生徒たちの目が輝く。

驚きの表情だ。

 

「卵」

「これは虫の卵の形です」

「ええっ」

形に意味がある。

 

タガログ語も英語もアルファベットだ。

それぞれの文字に意味はない。

漢字は意味のある文字。

彼らにとっては驚異だ。

 

漢字の書き順も難しい。

あまり気にしなくてもよいかも知れない。

それでも書き順の話をする。

 

「自動販売機」

試験に出たらしい。

確かに難しい漢字が並んでいる。

 

書き順の話をして書いてみる。

自動販売機。

「あっ、きれいだ」

 

書き順を正しくする。

字が美しくなる。

「字も美しいんだ」

 

「日本では書道があります」

「美しい字を書くことは日本の伝統です」

「日本人はきれいな字を書きたいと思っています」

 

彼らは日本に対するイメージを持っている。

「日本はきれいな国です」

彼らがよく言うことだ。

 

「字も美しいんだ」

「すごいですね」

きれいを尊ぶ精神文化。

彼らは日本に対する興味を深める。

 

「5Sとは何ですか」

会話の例文だ。

「整理、整頓、清掃、清潔、躾です」

 

工場で5Sが行われる。

これは美しさを保つことだ。

美しさは工場の世界にも広がる。

 

高度成長期の日本。

美しさの精神は大きい。

結果として能率的な生産となる。

 

実は学問の世界も同じだ。

美しさの精神。

数学などは美しさに憧れる。

いつの間にか新しい真理に触れている。

 

数学も言語もその背景に美しさがある。

その美しさに触れる。

そして好きになる。

これはAIには分からない。

人だけが分かる大切な精神だと思う。