父親が育児に参加すると、子どもの成長発達に良い影響を与えることは、明らかとなっている。以前、子どもが生まれると夫婦関係満足度が低下するということを紹介したが、父親の育児参加は夫婦関係を良好にすることも明らかになっている。
1990年(平成2年)の「1.57ショック」で顕在化した少子化問題に対して、1994年(平成6年)以降、様々な少子化対策が講じられてきた。特に注目すべきは、2004年(平成16年)に策定された「子ども・子育て応援プラン」である。この頃から、働く女性・母親と専業主婦の問題として子育ての社会的支援対策が講じられただけでなく、次第に男性・父親にも注目されるようになってきた。さらに、数値目標を設定しているのも「子ども・子育て応援プラン」以降の子育て支援策である。
このように、子育て支援策は母親支援から父親を含めた親支援に変化してくる。市町村の保健センターが主催する両親学級や父親育児教室など父親を対象としたものの開催回数が増加している。また、2006年(平成18年)以降、父親を対象とした「育児雑誌」が創刊され、経済誌にも父親が子育てをするための特集が組まれるようになっている。その数は、2000年から2009年に18件だったものが、2010年と2011年の2年間ですでに18件となっている。明らかに父親の子育てに対する関心が高まっているといえそうだ。
実際、「イクメン」という言葉が登場するほどである。果たして「イクメン」は増えてくるのであろうか・・・。残念ながら、すぐには増えそうもない。なぜならば、
子育てを積極的にする「イクメン」となるためのロールモデルはいない。なぜならば、彼らの父親は高度経済成長期の日本を支えるために、「父親不在」といわれた世代だからである。そのためか、2006年(平成18年)の国民生活白書によれば、6歳未満の子どもをもつ父親の育児時間は1日25分である。家事時間を含めても48分、1時間にも満たない。その要因の1つとして子育てをする世代である30代から40代の男性の労働時間(週60時間以上働く割合)は他の年代に比べて長いという現実がある。育児休業の取得率も2%未満である。
ところが、日本と同様に就労時間が長いアメリカでは、父親が子育てに関わる時間は3倍ある。つまり、長時間労働と子育てに関わる時間は相関しないことになる。それではなぜ、日本人の父親は子育てにかかわらないのであろうか。
企業で長時間働く父親の姿をみて見てそだっているため、『親』となった父親自身が「一家の大黒柱」としての役割を果たせば良いという潜在意識をいまだもっていることは十分考えられる。同時に、性別役割分業に対して肯定する割合が、2008年(平成20年)には増加しており、妻である母親もそれを望んでいる傾向にある。そして、なによりどのように子育てに関わって良いかがわからずに、右往左往している可能性もある。このように、意識の上で子育てをするつもりがない父親や、どのように子育てに関われば良いのかわからない父親が存在している。
にも関わらず、国は、単に男性の育児休業の取得を勧めるための施策を2010年(平成22年)に新たに出している。しかしながら、前述のように、非正規雇用のために、制度に該当しない男性が増加している現実がある。また、仮に育児休業を取得した際の収入の問題も当然出てくる。妻の代わりに夫が育児休業を仮に2か月取得した場合の試算によると、夫婦の給与が同等の場合のみが世帯収入として減少しない。当然、妻が専業主婦や非正規雇用で夫の給与の三分の二程度の場合、夫が8週間の育児休業を取得すれば、その間の給与が減ることになる。このような状態で果たして、男性が育児休業を取得するインセンティブが働くのでるか疑問が残る。