唐の絶頂期、日本でいえば奈良時代ですね、
長安の都の人々の一番人気の花は、牡丹。
出てくる出てくる。
「花開き花落つ二十日。一城の人皆狂うがごとし。」
「花開く時節 京城を動かす。」
「牡丹妖艶人心を乱し、一国狂うがごとく金を惜しまず。」
「城中の子女は家を空しくし、
ひたすら花の跡を追って日を暮らす。」
そんな晩、開かれた玄宗皇帝主催の
「牡丹の花をめでる宵」の会。
玄宗皇帝は音楽好きでありました。
お抱えの音楽担当職員!?は何と二万人。
えり抜きの管弦楽団は「梨園の弟子(ていし)」。
(歌舞伎の「梨園」とはここからきているのでしょうか)
お気に入りの歌手は李亀年(りきねん)。
宴は梨園の弟子の奏でる音楽をともになごやかに。
当然、傍らには楊貴妃。
クライマックス、李亀年の歌。
がはじまろうとしたその時、
玄宗皇帝のツルの一声。
「最高の花。最高の女性。最高の歌手。
最高の歌が欲しい。」
急きょ、李白が呼び出されます。
そんなこと言ったって!?
謹厳実直に出てくるはずもなく、
でも見つけるのは簡単♪
李白はいつもどおり、
長安市内の居酒屋でへべれけ状態です。
無理やり拉致され、担ぎ込まれてくる。
皇帝の前に座らされ、筆をとり、
サラサラっと書き上げる。天才は違う。
牡丹の花の艶やかさを楊貴妃になぞらえ、
神仙のごとしと称えます。
名高すぎる「清平調詞」三首です。一首めを。
「清平調詞(せいへいちょうし)」李白
雲想衣裳花想容
春風払檻露華濃
若非群玉山頭見
会向瑶台月下逢
雲に衣裳を想い花に容(すがた)を想う
春風 檻(かん)を払って露華(ろか)濃(こまや)かなり
若し群玉山頭(ぐんぎょくさんとう)に見るに非ずんば
会(かなら)ず瑶台(ようだい)の月の下に向(おい)て逢わん
群玉山頭にしろ瑶台にしろ、
夢の世界の地名!?です。
「露華」は日本では使わないけど、
しっとりとはなやか。
「濃(こまや)か」は
女性らしい 趣のあるさま(←辞書でこの手の書き方よくする)
なのでしょうから、
ニュアンスは伝わってくるでしょ?
李白は呼び名は「李太白」。
「太白」は金星。
名前通り、燦然と輝く明星です。
お酒大好き。
「詩仙」とも称され、
一方、次に紹介する李白を描く詩人、
杜甫は「詩聖」です。
「李杜」は漢詩の世界の、まさに神様です。
「飲中八仙歌」杜甫
李白一斗詩百篇
長安市上酒家眠
天子呼来不上船
自称臣是酒中仙
李白 一斗 詩百篇
長安の市(し・盛り場)の上(ほと)り 酒家に眠る
天子 呼び来れども船に上らず
自ら称す臣は是れ酒中の仙
