桐の花ちりゆく如くさみしらにさみしらに
消えもゆきけむ
内藤鋠策(1888-1957)。
17才にして故郷旧栃尾市(現新潟県長岡市)を出奔。
神童と謳われた少年時代。叶わぬ恋から逃れてのことだった。
残された女性は、
内藤の子を宿したまま、川に身を投げて死んだ。
この歌はそれを知った数年後に詠んだもの。
もう一首。
かの、北魚沼の朝霧にわかれしぬ、あわれ、
うつし世のわかれなりしかな
詠みぶりの特徴として
同じ語の繰り返し。また読点の挿入。
24才で出版社「抒情詩社」を興す。
高村光太郎「道程」を出版し、
他にも斬新な本を出版していく。
鋠策の周りには、有名無名の
文学者、芸術家が集った。
晩年は世間を断っていたという。
夕ざかればいかに寂しくこのさきのよつかどを
汝のいそぎゆくらむ
大き渦の中にうづありて目のあたり
底よわき上がる渦のありけり
川ひとすぢたえずながるる故郷の薄暮(たそがれ)ばかり
寂しきはなし
森の葉に陽の射すあはれさ、静なる水の
ほとりのもののあかるさ
鋠策を主人公にした小説に
今東光「天才歌人」(昭和46年)がある。
元ネタは、こちら。
