ある日、会社員のA氏は体の具合が良くない事が理由で会社を欠勤した。


風邪というわけではないが、少し熱が高いようで、今まで味わったことがないけだるさに、めまいを感じて布団に入り暫く体を休めることにした。

お昼頃になって、容態が良くなってきたので、少し得したような気がして気持ち良く昼ご飯を食べることができた。


午後から時間が出来たため、暫く考えてから山までドライブにいくことにした。


幸い仕事は順調で、信頼できる仲間がいるので任せることにした。


軽い気持ちで、車のエンジンをかけて、燃料計に目を見やると、まあまあ足りる量が入っていたので、点検もそこそこ、車を走らせた。


たまに走りに行く、お気に入りの場所があったので、とても気持ち良く車を走らせていた。


暫く走っていたら、前の車が、もたついている様子なので、思わずカッとなって大声で怒鳴りつけてしまった。


その時はすぐに我に返り、また平常心を取り戻したのだが、そのあとも何度となく興奮状態で、ことあるごとに色々なものに腹を立てた。


自分は内心、おかしいとわかっているはずなのだが、原因は判らず、変な自分と付き合う羽目になった。


ようやく山の公園につき、体を休めることができた。


売店があったので、食べ物と飲み物を買って、ベンチに座り食べることにした。


先程も、いつもはコレは食べたくないな~というものを手にして一瞬ドキッとさせられたが、気まぐれだろうと思い込み、気にしないことにした。

久しぶりの自然とのふれあいもいいかなと、林の中の小道に入っていった。


小鳥がさえずり、のどかな風景に心が洗われたような気がして満足げに口笛を吹いていたら、何処かから自分を呼ぶ声がした。


まさか知り合いに合う訳はないと思って、気にしないことにした。


しかし、変である、自分の足は勝手に山の奥へ奥へと進んでいく。


「Bさん、Bさんはいつも早いですね」


「何、私はAですが」


そう答えるなり、脇を誰かが追い越していった。


「何、集会か?」


気が付けば、様々な人達が、周りを歩いている。

怪我人? かっぽ着を着た主婦? 泥だらけで服がただれた女学生? バスか電車の運転手?


まるで狐につままれたような気がしていたら、「もうええわ」と声がして、自分の中から知らないおじさんが出てきた。


A氏は一目散に逃げ出した。