江戸時代の浮世絵師歌川広重は風景を題材にした浮世絵(東海道五十三次、名所江戸百景など)で有名ですね。

 

 

このたびサントリー美術館で開催されている「広重ビビッド」を観覧して広重が使っていたマル秘テクニックを学ぶことができました。

 

まず風景画は絵画のジャンルとしては比較的新しいジャンルです。

 

人物画の背景として描かれていた背景が独立して成立したのが風景画なのです。

 

人物画、静物画の方がはるかに古いわけです。 

 

ところで、風景画には一つの難点があります。

 

 

それは、風景の主役になる空、海、川、木などどれをとっても寒色系の色で構成されています。

 

 

したがって、これらの事物をそのままの色で絵にすると温度の低い寒々としたものができあがってしまいます。

 

そのため風景画家はさまざまな工夫をしてきました。

 

ひとつは暖色系の題材にする(朝焼け、夕焼けなど)

(モネ:日の出)

 

意図的に黄色や紫などをいれて色温度を上げる(印象派がよく使ったテクニック)

(モネ:影に紫を効果的に使用しています)

などがあげられます。

 

「絵としてどうか」を考えた場合に、風景画は単純に事物を再現するだけでは絵にならないという事情があるわけです。

 

 

さて、広重に戻ります。

 

広重は空の際に赤をしばしばいれます。これによって画面全体の色温度があがり華やかに見える効果があるのです。

現代のスモッグで汚れた空であれば、空の際の部分が淡いピンク色に見える場合がありますが、江戸時代にはそんな現象はありません。

 

したがって、空の際に赤を入れるのは彼が考え出したテクニックです。

 

彼の先輩である葛飾北斎はこのようなテクニックはつかっていません。

 

 

したがって、このテクニックは彼があみだしたものと考えてよいでしょう。

 

 

そして広重が、この空の際に赤を入れるテクニックを用いないときというのは

 

1)冬、雪景色

 

 

2)夜の景色

など意図的に色温度を低くしたい場合と

 

3)すでに対象に暖色系が入っているときの3つの場合に限られます。

 

さらに空を赤くすることで華やかな雰囲気を醸し出すことにも成功しています。

 

 

広重は広重ブルーで有名ですが、彼は青の使い手だけでなく赤の使い手でもあったわけです。