病院を出たときには、夕方になっていた。

4月の後半。
病院の脇には運河が流れていて、川沿いにところどころに植えられている桜の花びらは散り、葉桜になりかけていた。


雲は無く、夕日が運河の水面に反射して、まぶしかった。

家まで、車で30分ほどの道のり。






家族に、生まれた子はダウン症の可能性がある、と伝えること。

いますぐ伝えるべきか、確定してから伝えるべきか。クルマのなかで、二人で相談した。

私は長男で、私の両親にとっては待望の初孫ということになる。
ママのお兄さん(義兄)にはすでに2人の男の子がいるが、むろん、ママの両親にとっても待ちこがれた孫であることに変わりない。

みんなが心待ちにしていたまままちゃんの誕生なのに、同時に、悲しいニュースを伝えなければならないのだ。

でも、ダウン症と決まったわけではない。
幸いにして、ダウン症に併発しやすい心臓の奇形や、鎖肛など、すぐさま治療しなければならないような健康上の異常が無く、いまのところ健康なまままちゃん。

告げられたことも、まだ、あくまで可能性の段階の話。だけど…


受け入れてもらえるかな。


車は、沈む夕陽を追いかけるように西に向かう。

西日のほのかな温もりを顔に感じながら、ハッと思った。


そうだ、私たちはもう親なんだ。
くよくよ悩んでいる場合じゃないんだ。
ダウン症であろうとなかろうと、
私たちのかわいい子供なんだから。






その夜、実家に電話をかけた。
父が電話に出た。

まままちゃんの体調が良好なことや、退院の日付が見えてきたこととあわせ、今日あったことを伝えた。

電話口の父は、最初は驚いた様子だった。

しかし、落ち着いた声で、「お疲れさま」と労いの声をかけてくれた。



家族の優しさを感じ、フッと肩の力が抜けた。