お久しぶりの更新です。

世間はもうすぐホワイトデーですが、どうしてもバレンタインエピソードが書きたかったのでお許しを(笑)

語り手は「私」、男性のモデルは想太くんです。

 

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「お疲れさまでしたー」

仕事場のオフィスを出ると、外はもう真っ暗だ。

今日も一日が終わる。

2月14日の今日は、俗にバレンタインデーと呼ばれている。

 

バレンタイン。

毎年毎年私には縁がないイベントで、チョコを買うために長蛇の列を作る女の子たちの横を「青春してるなぁ」と思いながら通り過ぎるのが恒例だった。

しかーし!今年は違う!

なんたって、今年は彼氏がいるのだから。

私の彼氏の名前は、想太さん。

素直で、努力家で、私にはもったいないくらい素敵な人だ。

そんな彼は音楽業界で活躍していて、最近は大きな仕事が立て込んでいるらしく多忙な日々を送っている。そんなこともあって最近はなかなか会えてないけれど、定期的に電話はするし、自分で言うのもなんだけど良好な関係が続いている。でもやっぱり、好きな人には会いたいわけで。バレンタインだからかカップルだらけの街を見てると、さすがに寂しくなってくる。次はいつ会えるだろうか。今度予定を聞いてみようかな。

 

そんなことを思いながらふと時計を見ると、時計は8時過ぎを指している。ここのところ残業が続いていたから、今日は久しぶりに家でゆっくりできそうだ。

さて、帰るか……

歩き出そうとしたとき、ポケットで携帯が震えた。画面を見ると、ラインが一件。差出人は、想太だ。


「今日早く終わりそうなんやけど、うちで一緒にごはんどう?」


久しぶりの連絡と思いがけないタイミングに、思わず口元がニヤけてしまう。慌てて辺りを見まわし、誰にも見られていないことを確認すると、何食わぬ顔で返信を打った。


「私も今仕事終わったよ。また時間分かったら教えて」


スマホをコートのポケットに入れようとすると、画面が明るくなって想太からのメッセージが表示される。休憩中なのだろうか、まだ返信して10秒も経っていない。


「わかったー

9時には帰れそうやから、ご飯てきとーに買っといて!」

 

想太はアーティストとして活動しているため、一緒に食事するときは外ではなくどちらかの家で、というのが最近の定番だ。

買い物をして想太の家に向かえば、ちょうどいい時間になりそうだ。私は軽い足取りで駅へと向かった。

 

自宅とは反対方向へ向かう電車に乗り、想太の家の最寄り駅で下車する。そのまま近くのスーパーへ。食事を一から作るには時間が足りないので、ごはんは出来合いのもので許してもらおう。

 

売り場を歩いていると、お菓子売り場には板チョコが山積みになっていた。

『バレンタインに手作りチョコを!』

という大きな看板が立っている。

そういえば、バレンタインを一緒に過ごすのは初めてだ。

よし、私はブランドには頼らない。手作りで勝負だ!

一瞬『バレンタイン商戦』という言葉が頭にちらついたが、そんなことは関係ない。要は気持ちが大事なのだ。私は勢いに任せて、コーナーに置いてある板チョコや生クリームをカゴに放り込み、足早にレジへと向かった。

 

スーパーを出て想太の住むマンションに着いたのは、9時半近くだった。見上げると、想太の部屋の窓から明かりがもれている。インターフォンを鳴らしてドアの前まで行くと、パーカーにスウェット姿の想太が出迎えてくれた。


「おう、久しぶり! 急にごめんなー。ごはん買ってきてくれた?」


久しぶりに顔を見て、私も自然と笑顔になる。


「久しぶり! 買ってきたよー。はい、これ」


言いつつレジ袋を想太に渡し、部屋へ入れてもらう。居間に向かいながら、レジ袋をガサゴソと漁る想太。


「……ん? 生クリームは何に使うん?」


「今日バレンタインだから。生チョコでも作ろうかなって」


私の言葉に、想太の顔がパっと明るくなる。


「作ってくれるん? 嬉しいわ~!」


「ごはん食べてる間に冷やしたいから、先にキッチン借りるね! ごはんテーブルに並べといてくれる?」


想太がレジ袋から総菜を出し、机に並べ始める。私は板チョコと生クリームを持って、キッチンへと向かった。


to be continued…