★自分流ブックカバーチャレンジ⑦
■森本千絵「アイデアが生まれる、一歩手前のだいじな話」
 (2015年4月20日 初版発行 サンマーク出版)
■村上春樹「職業としての小説家」
 (2015年9月17日 第1刷発行 スイッチ・パブリッシング)

 

今日は注目している二人のクリエーターの本。
50を超える言語に翻訳され今や世界的な日本人作家村上春樹。「学園紛争の嵐が吹きまくって、大学は長期にわたって封鎖されていた。おかげで僕はかなり出鱈目な学生生活を送ることになった」という一歳年長の村上だけど、僕も同様、学園紛争、封鎖で出鱈目な学生生活を送った。
同時代を生きながら読んできた村上の小説やエッセイ。そこには自分も実体験してきた社会の世相、音楽や芸術文化が反映されているので、リアリティーとある共感を持って読めるのです。まさに僕の世代を代表するいま最も好きな作家です。その村上が「誰のために、どのように書くのか。なぜ小説を書きつづけるのか。その強い心とは」を明かした自伝的エッセイ。

そしてアートディレクター、コミュニケーションディレクターとして大活躍中の森本千絵さん。CanonやKIRIN、ユーミンやミスチルといったその多方面に渡るクリエィティブワークは彼女が主宰するgoenのサイトを参照してください。
http://www.goen-goen.co.jp/
1976年生まれの彼女はいわば自分の子供にあたる世代のクリエーターで僕なんかにしてみれば新人類だ。そして、彼女のお父さんは僕の渡辺プロ時代の先輩で沢田研二さんのマネージャーだった森本さんです。ジュリーの楽屋にお母さんに連れられて現れた幼い千絵ちゃんはお母さんのうしろに隠れてはにかんだような顔をちょこっとのぞかせる子供だった。その千絵ちゃんがあんなに忙しかった森本さん夫妻にどう育てられたか、読んで初めて知った。その暮らしの中で「大切なことはいつも色や音楽に変えて」という伝え方を覚えたそうで、それが自分のクリエーターとしての原点だという。

「プレゼンという最高のおもてなし」「型にはめず境界をあいまいに」「自分を空っぽにして相手の力を使う」「みなそれぞれなのに答えが同じなのはおかしい」「迷ったら希望のある方を選ぶ」「他人の方法論でオリジナルはつくれない」等々のものづくりの心構えが並ぶ。そして「仕事は旅です」という。
村上春樹も『文章を書いているというより「音楽を演奏している」という感覚。リズムを確保し、素敵な和音を見つけ、即興演奏の力を信じる』と言っています。二人のクリエィティブの原点には共通して音楽があるようです。