エデンのユウワク

エデンのユウワク

2人の若手作家が交互に小説を書きあうブログです。

2人のフリー若手作家が描く世界はまさにスペクタクル超大作間違いなし。

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私は本山と別れた後自宅に急いだ。
広島駅のすぐ裏、そこに私が一人で暮らしているマンションがある。
玄関の扉がいつもより重たく感じた。
部屋に入るなり私はパソコンの電源をつけた。
普段から結構パソコンは利用している。なにかに行き詰ったり考えごとをしたりしていると
ただなにも考えずにネットサーフィンするのがクセになってしまっている。
膨大な文字と情報をみているとなぜか気分が落ち着くのだ。
今日もそんな気分だった。一通り見終わって、ふとメールの画面にマウスを持っていった。
いつもたいしたメールはきてなかったのでここ最近はほとんど見ていなかった。
なにかイヤな予感がした。
「78件の新着メールがあります」
78件!?
ありえない量のメールが届いていた。
古い順に開いていくとやはりたあいのないメールばかりだった。
めんどくさいと思いながらみていると手が止まった。
【w】
w?それも一文字だけ
その次は【h】
【a】
【t】
what?意味がわからない。一週間前からの約50件近くはこんな意味の分からない内容だった。
【5】 【g】 【0】 【e】 【a】 【y】 【u】
いたずらか?読めたのは最初のwhatだけだ。送信相手のアドレスを見てみるとまったく知らないアドレスだった。
どーやら海外かららしいがその時にはただのいたずらだろうと思って気にもとめなかった。

「プルルルルル・・・・・」
携帯電話が鳴った。相手を見ると本山だった。
しかしすぐに電話は終わった。本山はどこか妙だった。
電話の内容も結局なにが言いたかったのだろう。
「今日はありがとうございました」「もう家には帰りましたか?」「明日も仕事がんばりましょう」
なにかほんとは言いたそうな感じだった。
しかしこれといって聞きもしなかった。
電話を切ったあとソファに腰掛けていたらついウトウトしてそのまま寝入ってしまった。


ピロリンピロリン

パソコンには例のメールが再びきていた・・・・・




一方そのことロサンゼルスの界隈では...........


「ポール、あなたって本当どうしようもない奴ね」

「何を言ってるのかさっぱり理解できないよシェーン」


この家庭ではこのやり取りがほぼ日課となっている。


「またググッてたでしょ?」

「ググッてなんかいないさ!...........信じてくれよシェーン」

「フンッ!いつもあなたってそう...........たまにはヤフってもいいんじゃないの?」

「そうだけど................」


彼はググッた時に表示される

○の検索結果 約 ○○○○○○ 件中 1 - 10 件目 (○○ 秒)

という表示の虜だ。


彼は検索をするたびに、言葉では表せないエクスタシーを感じる。

そのために、毎日のようにパソコンをポールが独占してしまう。


さらにやっかいな事に、妻のシェーンはヤフーが大好きなのだ。


「あなたもたまにはヤフッてみれば?」

「ダメダダメダ、ヤフーの検索じゃあ検索結果が少なくて感じないんだよ!」


そんな毎日が続いていた.................


ある日、妻のシェーンが帰宅した時の事、

「ポール!..........ポールったら~.............まったくどこにに行ったのかしら」

どうせいつものようにネットカフェの光ファイバーを使ってググッてるんだわ......


シェーンはいつものようにヤフーのトップページを開き、検索を始めた.........

今彼女の身に起こっている事も知らずに..........


プルルルルル、プルルルル

シェーンがヤフーアバターを作り終えたと同時に電話が鳴り響く、


「はい、どなたですか?」

数秒の間沈黙が続いた、

「シェーン落ち着いて......ポールが........ポールが突然倒れたの!」


「.................」

電話主の話によると、ポールは会社から帰宅した後、いつものように友人の誘いを断り、

帰りにお気に入りのネットカフェに入店したそうだ。

しかし、チェックアウトの時間になっても出てこなかったので、

店員が彼のブースに入ると、画面と向き合うように血を吐いて倒れていたという。


「シェーン、気を確かにして............ 

それとポールが倒れかかったパソコンの画面に不思議な文字があったんだけど」


「不思議な文字」


「そう、そこにはポールの血でこう書かれていたの.........INFOと」


「info?」


「そうなの、なにか心当たりはない?」


「インフォ................インフォ.........................はっ!」

シェーンの脳裏に過去の出来事が駆け巡った。


「infoseek.................そう.......インフォシークよ!」


シェーンの学生時代に付き合っていた彼が愛していた検索エンジンだ。

「先輩勘弁してくださいよ」


木下は腹を抱えて笑っている、お店の女の子も同じよう笑っていた。

「ごめんごめん、お前って会社じゃほんと無表情って言うか、

ほとんど周りのやつらと喋る事もないだろ?
ちょっとからかって脅かしてやろーかと思ったんだよ」


笑いが止まらないといった感じで話をしている木下をみて軽く殺意まで生まれた。
「冗談じゃないですよ!こんな事しておもしろいんですか??

それにその事件ってこの前から話題の事件じゃないですか!」

私は怒りながら木下に問いかけた。


しかし内心動揺を隠すのに精一杯だった。
そもそもこの木下という男は社内でもずば抜けて人気が高かった。

ユーモアにセンスがあり、盛り上げ役としては最適だった。
それと同時に変わり者だ。私に話しかけてくるヤツといえば木下くらいのものだ。
なぜ木下が私に話しかけてくるかはわからない、あえて聞く事でもないので理由は分からなかった。


「ほんとに悪かった、許してくれ、このとおり」
木下は手を合わせて本気で謝っている感じだった。私は呆れて
「もういいですよ」
と言い、顔を横にむけた。
店を出るとき上田さんにゴメンねと言われた。その言葉に私は一礼して店を後にした。
「もうこんな時間か、そろそろ帰るか」
木下はそう言うとタクシーで帰ると言ってその場で解散となった。

大通りに歩いて向かう木下の背中がどこか寂しげだった。


あんな意味のないドッキリをさせられて怒るのは普通のはずなのに、

なぜか私はこの先輩の事が憎めないでいた。
木下と離れた後、私は安堵のため息をした。

どこか怪しい点はなかっただろうか、おかしなことは言わなかっただろうか・・・
不安はだんだん広がっていった。


もしかしたら木下は気づいているんではないか・・・・。


淡々と業務をこなす内に、自分が命令通りに動くロボットに思えて、

少し苦笑してしまった。


「本山!今日はマッサージで汗流そうぜ」

彼は先輩の木下だ。いつも私を誘ってくれるが、丁重に断るようにしているが

今日は話が違ってくる。


「すげーいい子が行きつけの店に入ったってよ!行こうぜ」

あまりノリ気はしなかったが、いつもの毎日に終止符をつけようと決意した私は、

木下の誘いに乗ることにした。



「いらっしゃいませー!お二人様入られましたぁ」

こんな店に来るのは初めてだが、どこか懐かしい匂いがする。


「本山....お前に新人の子紹介してやるから、ほら!あそこの2番の部屋だ」

その言葉通り、私は2番の部屋に入っていった。


「いらっしゃいませ........」

どこかぎこちない声で出迎えられた。

「上田といいます。本日はよろしくお願いします」


ピカッ!


能の前頭葉に電流が走り抜けた。

これまでにこんな経験をした事があるだろうか..........

数年前、秋葉原で並んでまで購入したWindows98を使った時以来だろう。


過去の後悔が多かったせいか、

この出会いを逃せば..........という思いに駆られた。


僕のメールアドレスはghf................

全てを言おうとしたその時


「あなた、本山さんですね?銀山町連続放火殺人事件の容疑で逮捕します。」


.............なにが起こったんだ!

頭がパニックで彼女が何を言っているのかうまく飲み込めない。


放心状態のままその場に倒れこんだその時。

ドアの隙間から、一人の顔がうっすらと見えた。


その顔は、確かに笑っていた。


「おはようございます!!」

いつものようにこの声が耳に飛び込んできた。

私にとってはこれがないと仕事が始まらないといった感じだ。

その声の正体は同期の影山だ。

彼は毎日朝からテンションが高く、誰にでも愛想のいい、そんな感じのヤツだ。

さわやかな人と言う言葉はコイツのためにあるものだと思う。


私は実のところ彼の事が苦手だった。

彼の明るい性格とは反対に私は人見知りなうえ、

見た目はお世辞にもかっこいいとは言えないだろう。苦手というよりも嫉妬にも似た感情を抱いていた。

彼は遅刻常習犯だ。しかし怒る者はいないに等しかった。

彼の屈託のない性格がそうさせるのかみんなしょうがない

という表情で仕事を再開させた。


9時15分、本来なら9時には仕事をはじめなければいけなかった。

いつもの事、私は内心イラつきを覚えながらも仕事を再開させた。

仕事内容は簡単だった。

パソコンと向き合っていればいいだけだ。

とは言っても入力ミスは許されない。

以前一度ミスをしたことがある。ある会社に商品を送る手続きをしなければいけなかった。

その数が150のところ1500と入力してしまったのだ。

その時はさすがに参った。3時間説教。途中からはまったく聞いていなかった、

いや正確には考えごとをしていたのだ。

殴ってやろう。できなかった、とゆうかそんな勇気もない。

それぐらいの度胸があればこんな会社にはいないだろう。

もともと私はこの会社に入ったときは営業部だった。

企業と個人相手に化粧品を売る仕事だ。

しかしこんな性格。契約してくれるところなどあるはずもなく、3ヶ月後には経理へまわされた。

実際化粧品など興味がない、デスクワークの方が気が楽でいいと思った。

むしろクビにされないだけでもマシだった。

じゃあなぜこの会社をえらんだのか。

そこは単純、3流の大学を卒業した私には3流の企業しかなかったのだ。

ようするにたまたま22歳の時に卒業後すぐにここへ就職した。


はや5年、ため息しか出ない毎日だった。つまらない、なんの刺激もない

日々に嫌気がさしていた。

「ではいってきます」

影山の元気のいい声がした。10時、どうやら営業に行くようだ。

彼はウチの会社の営業マンの中でも1,2位を争う好成績だ。

そのうえ上司からの信頼も厚かった。