VOL.177   仕事の達人④  考える時間をつくれ

前々から、トリンプという女性の下着の会社を訪問してみたいと思っている。

同社では、社員が皆、素敵な下着で・・・というのは、もちろん嘘で、

この会社では、

12時半から14時半の2時間、コピー・電話・立ち歩き禁止、

部下への指示や上司への確認も禁止、

自分の仕事だけに集中するための貴重な時間としており、このため、仕事の効率が高く、残業も極端に少ない、とのことである。

なるほど、そういえば、本当に集中して頭を使う仕事は、皆が帰ってあとの残業時間や

早朝、もしくは、休日出勤のときなど、誰もいない時にはかどった経験をお持ちでないだろうか。

そういえば、日常業務、メールの返信や、会議の資料なども、実際のところ、「考える」のは5%ぐらいで、ほとんど経験と習慣で判断して、あとは作業のような気がする。

仕事の達人①とかぶるが、

自己啓発の本で、朝型がいいぞ、というのは、朝は勉強にも向いているが、この「考える時間」が取りやすいということも大いにあるようだ。

今、禅が静かなブームだが、禅の、独特の形から入って「何も考えない」ところから始まって、現代の膨大な情報量から一度離れて自分を見つめ直すという爽快さが

きっと見直されているのだろう。

「人間は考える葦である」

という、わかったようなわからないようなことをいったのは、フランスの数学者パスカルだが、この人は、また、

「人間の不幸などというものは、どれも人間が部屋にじっとしていられないがために起こる」

という名言も残している。果たして、現代人は、その頃よりもっと「じっとしている」のが苦手になっているのではなかろうか。

毎日、こうしてじっくり考える時間が取れる人やトリンプの社員の方は最高だが、

そうでない人も、まずは週一回でも、はじめは月一回でも

使っていない会議室や、図書館や、余裕があれば、ホテルの一室を借り切るなど、音を遮断した場所に

ノートとボールペンを持ち込んで、携帯もパソコンも消し、

今、考えるべきことを脳みそに汗をかくまで考える、という習慣をつけるのはいかがだろう。

勉強熱心な人ほど、インプットばかりしている傾向にあるが、

こうしてアウトプットの訓練をしていると、徐々にアイディア力が出てくるものだ。

もっとも、一生懸命に考えて考え抜いても、考えてもまとまらないものが、

突如ひらめくのが、大抵、トイレの中、乗り物の中、

風呂の中(アルキメデスです、念のため)

りんごの木の下(ニュートンです、老婆心ながら)

昼寝から目覚めたとき(湯川秀樹です、しつこいですが)

というのは、古今東西、万国共通のようなので、

こもっている時に結論が出なくても気にしなくていいのだ。

「考える時間」をつくること。

すごく大事な気がする。