おうちのこつ

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暮らしを豊かにするのは、豪華さよりも「心地よさ」。
毎日過ごす場所だから、もっと快適に、もっと好きになる工夫を。
誰でも真似できる、ちょっとした住まいの「コツ」をお届けします。

 

10年後の外構、その真実


家を建てるとき、多くの人が建物そのものに情熱を注ぎますが、実際に暮らし始めてから「もっと考えておけばよかった」と後悔する場所の筆頭は、実は「外構(お庭や駐車場などの屋外空間)」です。


予算の関係で後回しにされた砂利敷きの駐車場や、使い道の決まっていない庭。それらは時とともに荒れ、家全体の印象を損なうだけでなく、建物の寿命にも影響を及ぼすことがあります。10年、20年と時を経るほどに愛着が深まり、住まいの魅力を保ち続ける。そんな「本物の外構」を作るための5つの視点をお伝えします。

 

 

 1|家を守る「第二の土台」

 

外構は単に建物を飾るためのアクセサリーではありません。私は外構を、建物の価値を支え続ける「第二の土台」であると考えています。


例えば、土地の境界にある土留(どどめ)や地盤の固め方が不十分だと、数年でフェンスが傾いたり、タイルにひびが入ったりします。これらは表面だけを直しても根本的な解決にはなりません。見た目のお化粧を施す前に、その土地の性質を深く理解し、強固な骨組みを築くこと。この視点があるかどうかが、10年後のメンテナンス費用の「大きな差」となって現れます。

 

 2|寿命を左右する「水の通り道」

 

長く住み続けられる家にするために、最も配慮すべきは「水と空気の動き」という目に見えない設計です。


雨水がどのようなルートで流れ、どこへ排出されるのか。この計画を疎(おろそ)かにすると、床下に湿気が溜まってカビの原因になったり、土台の腐食を招いたりすることもあります。また、エアコンの室外機や給湯器といった設備機器の配置も重要です。排熱や点検のしやすさを無視して「隠す」ことだけを優先すると、機器の寿命を縮め、将来の交換費用を増やしてしまいます。自然の理(ことわり)にかなった設計こそが、家を健やかに保つための確かな鍵となります。
 

 3|内と外が溶け合う心地よさ

 

家の中と外を切り離して考えるのではなく、お互いが溶け合うような繋がりを持たせることで、住まいはより豊かなものになります。


例えば、リビングの床と同じ高さでテラスをつなげ、視線が外へ抜けるように工夫するだけで、同じ面積でも部屋は驚くほどの開放感に包まれます。軒下(のきした)の空間を広めに取れば、雨の日でも外の空気を感じながら過ごせる「もう一つのリビング」が生まれます。庭を単なる「観賞用」ではなく、家族の「居場所」として設計することで、日常の幸福度は格段に向上します。
 

 4|時とともに美しさが深まる素材選び

 

外構素材の選択は、10年後の景色を決定づけます。


安価で均一な工業製品(コンクリート製品や樹脂製品など)は、完成直後が最も美しく、その後は少しずつ「劣化」が目立っていきます。一方で、天然の石や木、職人が仕上げる塗り壁などは、手入れを重ねるほどに風合いが増していく「経年美化(けいねんびか)」を楽しむことができます。

  • 工業製品: メンテナンスの手間は少ないが、古くなると「汚れ」に見えやすい。
  • 天然素材: 定期的な手入れは必要だが、古くなるほど「味わい」という価値が生まれる。

時間の経過を「衰え」と捉えるか、「家族の歴史」と捉えるか。その選択が、10年後の住まいの品格を左右します。
 

 5|未来へつなぐ資産としての視点


住まいづくりを、単なる一時的な買い物ではなく、将来へ向けた「投資」として捉えてみてください。流行のデザインを追いかけたり、目先の安さだけで会社を選んだりするのではなく、30年先も価値を損なわない設計を追求することが大切です。
 

丁寧に整えられ、木々が豊かに育った住まいは、街の風景となり、次世代へと受け継いでいける確かな資産になります。土地が持つ本来の価値を見極め、時間をかけて育てていく。そんな視点を持つことで、あなたの住まいは年月とともに、よりかけがえのない場所になっていくはずです。

 

 

 

 

 

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ほんの少しだけ、時を忘れる贈りものを。
目を閉じれば、そこに在る懐かしい風景。