【Prologue】
3
それから当分の間、少女とプッペは
子供達の遊び相手になっていたが
雲の隙間から、次々と光りが差して
辺りが明るくなった時
子供のだれかが、ある雲から
斜めに差す光を指差して言った。
「あっ!あそこっ!てんしだっ!」
その瞬間、子供達の興味はプッペから
彼の指差す一条の光の中に移った。
「どこに?どこ?」
「そんなのうそだろ?」
「ほらっ!あのひかりのなか!」
「え〜?わかんないよう」
「…あっ!ほんとだ!」
「おりてきてるっ!」
「いってみようぜっ!」
「うんっ!」
「いこう!いこう!」
「てんしをみにいこう!」
「まってえ〜まってよう」
子供達は口々に言い合う。
本当に天使が見えたのかわからないが
最初に天使を見つけた男の子を先頭に
皆一斉に元気よく走り去って行く。
雲の隙間から、次々に現れる光…
天使の階段に少女も目を奪われていた。
本当に天使が舞い降りそうな
神々しい光景に感動を覚える。
そして
「あ、そうか…
もう雨は止んでいたんだね…」
そう呟きながら、
少女は被っていたフードを
肩元まで落とした。
栗色のくせ毛が跳ねて
はらりとフードの外へ飛び出す。
今までフードに隠れて
気付かなかったが少女の肩には
小さな人形がちょこんと乗っている。
異国の服を羽織った
おかっぱ頭の小さな人形…
目は細く、顔は下膨れて
可愛いとは言い難い。
そしてその人形も、
木人形のプッペ同様
操り糸もなく
自分の意志で動いているように見えた。
ずっと物も言わず空を見上げる少女を
心配するように、その人形は
「どうしんした?」
やはり喋った。
「ううん…なんでもないよ、レーコ…」
少女は自分の肩に乗った人形に
そう答えて、また雲間から差す光を
眩しそうに眺めるのだった。
あの光は希望の光…
少女がこれから
未知の世界へ踏み込む
旅路を照らす希望の光…
少女は、なぜか
そう思えてならなかった。
足元には湿り気を帯びた
雑草が大きく波打つ。
雨上がりの冷たい風が
少女の身体を通り抜けた。

