神宮に来たかったのは正真正銘の間違いない心境なのだけど、実はもう一つの目的も持っていた。

内宮の玄関口ともいえる鳥居に至る延長約800メートルの商店街。約100店舗のお土産さんや飲食店が軒を連ねる『おはらい町』を散策するのが私の裏の目的だった。

江戸時代から明治時代にかけての街並みを再現した建物群が、伊勢詣でのために全国から訪れた人をもてなしてくれる。

通りょ見て歩くだけでも楽しい。なんだか江戸時代にタイムスリップしたかのような感覚だ。

英語表記じゃなかったら有名なコーヒーチェーン店だということを見落としそうだ。

突然、奥さんが「行きたいお店がある」と言い出した。きっと飲食店だろうと思ったら、なんと・・・。

奥さん「伊勢と言えば、真珠でしょ」

私「以前に来た時、買ったよな」

奥さん「あれはとっくに壊れた」

私「・・・」

奥さんのもう一つの目的は真珠だった・・・。

まっ、どうせ高価な品は買えないけれど、プチ家出の記念ということでお手頃価格で手を打とう・・・。

奥さんが真珠に目を輝かせ、機嫌がいいうちに、私「伊勢うどんを食ってくる」

奥さん「どーぞ、どーぞ。好きなだけ食べてきて」

私「好きなだけって、そんなに何杯も食えるわけねーだろ。間違いなく美味しいけど」

 

ということで、別行動を取ることにし、一軒の伊勢うどん屋さんに入った。

注文したのは、トッピングなしのノーマルな伊勢うどん。

すぐに運ばれてきたのは、プチ家出をすると決めた時から食べたかった伊勢うどん~♪

丼の底に沈む真っ黒なタレが麺に絡むほどに美味しそうな香りが広がる。

私「コレ、コレ。6年ぶりにコレを食べたかったんだよなぁ~。昔も今も美味しいけど、きっと数年後も美味しいだろうなぁ~。何杯でも食えって言ってたから、もう一杯ぐらいいっとくかぁ(笑)」

次の瞬間、奥さんからの電話が鳴った。

奥さん「アンタ、何処で何してる?」

私「決まってるだろ、伊勢うどんのお店。今から2杯目を注文するとこ」

奥さん「ますます腹が出るから1杯だけにしておいて、迎えに来て」

私「はぁ」

私の裏目的は達成したような、達成しないようなハンパな形になったけれど、今度はガッツリと全部乗せにして注文してやろうと心に決めた卯月の伊勢詣での日ラーメン