(かすみ猫さんによる追記)


 蝶はあれからどうしたでしょうか。
 あの夜の恐怖を、蝶は忘れるわけはありません。
 けれど、彼女をとらえて離さないあの美しく輝く放射形。

 彼女は自分が蝶である事を知っています
 そしてあの美しいものが、自分を捕らえるための罠だという事も気付いています。 
 けれど、たとえそれが蝶としては避けなければいけないものであったとしても、美しいものに何のかわりもありません。
 「美しいものが、そこにある・・・・」

 蝶は羽ばたきを始めました。
 フワフワと頼りなく、けれど確実に、あの輝きに向かって。

 それは、あの日と変わらずに朝露に光っていました。
 そして葉陰で休む、すこしやせた蜘蛛を見つけました
 あの夜に彼女が見た蜘蛛とは、随分違うような気がしました。

 蝶は再びそこで羽ばたき始めました。
 何故、自分がそうしたのか彼女にもよくわかりません。
 大きな羽が揺れるたび、キラキラと輝く燐粉があたり一面に舞いました。
 それは風に乗り、蜘蛛の方へと流れていきます。
 蝶は知らせたかったのかもしれません。
 私は今日もここにいると・・・・それを見ていると・・・

 蜘蛛は静かに休んでいます。
 あたりにキラキラと輝くものに彼は気付いているのでしょうか。
 そしてやはり、今日もはらぺこだったのです。

              

  Fin・・・