(2004年2月に書いたものです)

 アメリカの農業関係の責任者が日本にやってきた時、BSEに関して日本がアメリカに全頭検査を求めていることに触れ、「日本政府は我が方(アメリカ)が提示する科学的な資料について真剣に検討してもらいたい」という旨を述べたのをテレビで見ました。

 僕はこの放送を見たとき、殺気とも言えるような感情を覚えました。

 いったい、彼らは何をして「科学的」など、いけしゃあしゃあと言えるのかと、あきれてしまいました。
 彼らが言っているのは、せいぜい統計的な確率でしかありません。万に一つの危険性に対しての処置として、全頭検査は、その規模や費用から言ってとても見合うものではないとでも言いたげです。

 妙な話です。
 証明できるはずのない大量破壊兵器の「不存在証明」をイラクに求めておきながら、全頭検査を行えば証明可能であるBSEの「不存在証明」は退け、「サンプルを調べたから安心しろ」と言うわけです。

 BSE問題と大量破壊兵器の問題は、政治的には同列に扱えないという主張もあるでしょう。それは認めます。しかし、論理的には全く同列に扱えるのです。

 もう、誰もが気付いていることで、今更言ってもしかたがないかもしれませんが、アメリカの言う「科学的」や「根拠」は、政治的なパースペクティブによって様々に(アメリカの都合の良いように)変化します。

 僕はこのBSE問題について、日本政府にがんばってもらいたいと思っています。
 少しはアメリカに、自分達の価値観で世界は納得しないこともあるのだと思い知らせるべきでしょう。

 (追記:近々、アメリカからの牛肉輸入が再開される見通しのようです。まあ、この文章を書いてから1年近くになりますので、政府も持ちこたえた方でしょうか。しかし、報道によりますと、アメリカ産の牛肉を「食べたくない」と答えた人たちが7割程もいるそうで、もしかしたら、アメリカに思い知らせることができるのは、政府ではなく、日本国民かもしれません。)