👼スピ系なので苦手な方はスル―してくださいね👼

 

危篤の知らせを受けて病室のドアを開けると、私を見た母が

『オンシジュームが入ってきたね~』と言った。

 

一足先に着いていた姉が入ってきた時には

『ほら蝶々だね~。蝶々が入ってきたよ~』と言ったらしい。

そんな風に例えられた私たち姉妹は困った顔で笑うしかなかった。

『こんなにゆったりとした気持ちであの世に行けるなんて幸せだよ。今までどうもありがとうね。』はっきりとした口調でそう呟いた。

『お父さん。一足お先に。。あっちでね。待ってるから。ゆっくりおでんせ(おいでね)』

 

ウソだ。こんなきちんとしたお別れがあるものか。出来すぎだ。

こんなに落ち着いて死が訪れるなんて、ドラマじゃあるまいし。。。

そう直感した私は廊下で担当医に詰め寄った。

 :先生!何か手はないんですか!ありますよね!まだやってないこと!

医師:もう手の施しようがありません。

  :そんなことない。あるはずです。。。じゃあ先生透析は?透析をしてください。

透析をすればなんとかなるんじゃありませんか!先生お願いします。

 

必死のお願いを聞き入れてくれた先生のお蔭で一時は危篤の山を乗り越えた母だったが、

死を迎えるまでに、またしても病と戦うことになってしまった。

それからは、子供孝行のためにこの世に長めに存在してくれたのだ

一か月後。

病室には母と夫と私。静かな夜だった。

疲れ果てて眠っている母のおでこに口づけをして

『おかあさん。。。もういいよ。。。』と告げる。

『ありがとうございました。。。。ずいぶんと苦しませてしまってごめんなさい。。。』

 

高速道路を南に走る帰り道、けたたましく電話が鳴り響く。あぁ。電話音でその死を確認した。

空には煌々と光り輝く満月が・・・

『今日は満月だったんだ・・・』

母は、月へ。

『かぐや姫みたいだね』優しい夫の声。

かぐや姫になって月に住んでいると想えばさ、悲しみも半分になるよ。うん。

出来すぎだが、今度ばかりは現実だった。

 

<つづく>