「何のために、北朝鮮は日本人を拉致するのか?」

 そういった疑問を持たれる人もいるかもしれませんが、それは日本に北朝鮮の工作員(スパイ)を送り込み、日本国内でさらなる工作活動(スパイ活動)を行うためです。

 朝鮮半島にある北朝鮮と韓国は、元は一つの国家であるために、この二つの国はライバル関係でもあります。

 そうしたことから、たとえば韓国が、ソウルオリンピックが開催できるまで経済的に発展を遂げたことに対して、北朝鮮はもの凄く嫉妬して、そして我慢なりませんでした。

 そこで北朝鮮は、金賢姫(キムヒョンヒ)という女性工作員を、「蜂谷真由美」という日本人になりすまさせて、パスポートまで持たせて、その女性工作員に大韓航空機を爆破させたのです。

 それは115名が命を落とす大テロでした。

 北朝鮮の工作員が、日本人になりすましテロなどの工作活動を行う時、日本語が堪能でなければなりませんし、日本の生活・文化などを熟知していなければなりません。

 もしも日本人ならば当然知っていることを知らず、日本語もヘタクソであれば、工作員だと見破られてしまうかもしれないからです。

 そのために、北朝鮮に拉致された多くの日本人が、日本の言葉や生活や文化を、工作員たちに教える教師役にさせられているのです。

 つまり横田めぐみさんを初めとする拉致被害者たちは、工作員に強引に日本に連れ去られて、そして無理やりに工作員たちの教師にさせられて、そして祖国・日本を破壊する工作活動の手助けをしなければ、北の地で生きていくことができないわけです。

 こうしたことからも分かるように、未だに横田めぐみさんが両親と再会できず、ダライ・ラマが祖国の土を踏めず、韓国や台湾には男子の徴兵制度があるその理由、それは実に簡単です。

 それは悲しいことに、この「東アジア」という地域が、未だに平和ではなく、ちょっと外交に狂いが生じただけでも、戦争にさえ成りかねない緊張状態が続いているからであり、そしてさらに悲しいことに、世界は未だに軍事力に基づいて動いているからです。

 ですから国際社会の外交では、どんなに正しい主張であろうとも、どんなに正しい正論であろうとも、どんなに正義にのっとった理由であろうとも、その背景に「軍事力」という力が無ければ全く通用しない、という醜い現実がまだまだあるのです。

 そして子どもでも銃を持てば、プロレスラーに勝ててしまうように、「国」というものを一人の人間にたとえるならば、この銃にあたるのが「核兵器」です。

 ですから未だに軍事力に基づいて動く、この未熟な世界において、残念なことに「人類最終兵器」とも呼ばれているこの「核」という恐ろしいものが、とても大きな意味を持ってしまっているわけです。

 日本は核兵器を持ってはおりませんが、しかしアメリカが持っている「核兵器」によって守られているために、国際社会の中で、何とか生き延びております。

 こうした「アメリカの核によって、外国から守ってもらっている」ということを、雨が降った時に誰かが持っている傘の中に入って、濡れないように守ってもらうことにたとえて、一般的には「日本はアメリカの核の傘の中に入っている」などと表現しているわけです。

 だからこそ「核兵器を廃絶しよう」と訴えている人々がいる一方で、核兵器を開発している国もまたあるわけです。