俳優座80周年記念公演の「野がも」を観てまいりました。
演出は眞鍋卓嗣さん。大好きすぎる。
知らなかった「野がも」。
予習をほぼしていかなかったので開演前に着席してから大筋だけちょっと目を通して観劇。
素晴らしすぎておでこに第三の目が開いたかと思っちゃったよ。
事業で成功しているお金持ちと、今や落ちぶれた家庭(貧困層)の人間模様。
それぞれの家の主人はかつてはビジネスパートナー。現在成功者と、かたや投獄も味わっている。
その息子たちは家の繁栄・没落と共に貧富の差が開いていたが、人生に対する満足度の感じ方はそれぞれだった。
貧しくても幸せだという友人に、「目を覚ませ」と現実と正義を突きつける資産家の息子。
「そうだよね〜」と思いながら観ていたところ、途中からその正義がナイフになって貧しい家庭を壊し始めたので、
いつの間にか「真実なんて伝えちゃって、ひどい!」と思っている。
話が急に立体的になって、いろんな登場人物の目線や時期の切り口で見方が全く別物になる、
360度ぐるぐると角度を変えて見回せるお話になっていた。
人間の面白いところとよくないところがふんだんに盛り込まれていて最高だった。
よく思う「正義」について。
私はアンパンマンとバイキンマンが秀逸だと思っていたけど、この「野がも」の作者イプセンも天才だなと思った。
何が「野がも」なのかな〜と思いながら観ていた序盤。
貧しい家で飼われていたのが野鴨。それは家族の楽しみだった。
だけど徐々に野鴨がその家族そのものだということがわかり、次第に資本主義で搾取される世の中の大多数もまた野鴨であることに気付かされた時、この作品の素晴らしさに震えた。
また作品中のこの貧しい家庭で幸せに暮らす男、とても純粋で全く思慮深くない。
お金持ちの友人にあれこれ聞かされた時、何も考えずに鵜呑みにして感情的になってしまう。それは滑稽だったけど悲しいかなきっと私も同じ。表面的な理解と一時の感情であれこれ壊していく様を、あーあ、と笑いながらも、人間ならではの恐ろしい光景だった。
貧しい男だけが愚かなのかというと、お金持ちの方も「絶対的な正義」を信じているあたり、かわいそう。
時代や立場が変われば物事の見え方は無数なのに、「真実はいつも一つ!」を貫く彼はあちこちでクラッシャーとなって嫌われるしかない。
不完全なままの資本主義経済を嫌う私にはご馳走のような作品だった!
原作も読もうと思って翻訳されたものだけど手に入れた。結構セリフはそのままだったりするんだな〜と思いながら、
眞鍋さんがあんな演出をどうやって思いつくのか、なぜ原作がありながら眞鍋作品はあんなに面白いのか、不思議。あ〜最高。
途中で、写真の修正の仕事に使われているのがmacでAppleのロゴが目立ちすぎていたことだけ解せませんでした。
この作品には気持ちを大きく揺さぶられすぎて何を書いているのかわからないけど、備忘録。