赤い薔薇

 

 

家族ぐるみで仲良くさせていただいた

 西城秀樹さんが亡くなって4年

2018年5月26日に行われた

告別式の時の写真が出てきて

秀樹さんとお別れした日の想いも

書き留めておきたいと思いました

 

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎

 

 

パパが家に帰ってきて

準備も整ったから

会いに来てくれる?

 

秀樹さんの妻の

美紀さんから

連絡をいただき

 

亡くなった翌日に

夫の笠井信輔と私は

秀樹さんに

お会いしました

 

 

私も笠井も

サラリーマンでしたので

それぞれ会社を出て

途中駅で待ち合わせして

秀樹さんの家へ

 

 

私はどうしても

秀樹さんにお花を

お渡ししたくて

 

失礼かもしれないと

思いつつも

 

秀樹さんには

 

薔薇

 

と思い

 

会社を出てすぐに

麻布十番のお花屋さんへ

急ぎました

 

 

 

薔薇を1輪

亡くなった方に

お渡ししたいのです

 

と言うと

 

枕花ですか?

薔薇は華やかなので

ふさわしくありません

 

お店の女性は

花屋という立場で

常識的に

とても親切に

しかも、きっぱりと

教えてくれました

 

 

枕花というより

御礼の想いを

伝えたいだけなので

ご本人のイメージで

どうしても

赤やピンクや青い薔薇が

いいのです

1輪だけでも赤い薔薇は

ダメですか?

 

と食い下がると

 

うーん、ダメですね

ご遺族がよく思われない

と思います

薔薇は華美ですから

 

とお花屋さん

 

ご遺族もきっと赤い薔薇を

良く思わないわけないとは

思うのですが…

 

と私が言っても

お花屋さんは

薔薇を買わせてはくれません

 

 

店の中を見回すと

青い薔薇

がありました

 

こちらの色は

どうでしょうか?

 

もちろん、ダメですね

 

お花屋さんはきっぱり

しかし、もはや困り顔

 

本当にご本人のイメージは

赤い薔薇なのですが…

 

 

もうお花屋さんは

黙ったままです

 

どうしてもダメですか?

非常識過ぎますか?

 

しつこく食い下がると

お花屋さんは

困った顔をして

しばらく考えてから

 

 

では白い薔薇は

いかがですか?

 

 

と言いました

 


白?

イメージは

赤か青なんですけれど

でも…ダメなんですよね

 

 

はい


 

でも…


プロのお花屋さんが

薔薇を持って行くことは

許してくれたのです

 

私もここで

折れることにしました

 

 

わかりました

白い薔薇を1輪

お願いします

 

 

私は親切なお花屋さんに

頭を下げ

 

店頭に飾ってある

赤と青の薔薇を見ながら

しつこい…

 

白い薔薇を手に

花屋を出ました

 

 

白い薔薇って

ちょうどいいかもしれないよ

 

待ち合わせ場所で

私の白薔薇を見た

夫の笠井信輔は

言いましたが

 

秀樹さんは優しいから

ピンクの薔薇

でもやっぱり赤い薔薇

もしくは

赤より熱い

青い薔薇だと思う

 

私はまだ未練たっぷりに

言いました

しつこい…ですね

 

  

笠井は悲しそうに

笑顔を見せました



心まで黒く暗く沈ませるような

夜の道を進み

秀樹さんの家に着きました

 

 

いつもなら

 

やぁ!

 

とか

 

おぅっ!

 

言ってくれる秀樹さんは


ベッドで

静かに眠っていて


起き上がっては

くれませんでした

 

 


髪の毛も整い

 

身につけた赤い衣装も

カッコ良い

 

眠っている秀樹さんは

昔の秀樹さんのような

精悍で美しい

彫りの深い

すんとした寝顔

 

 

無口なまま

ずっと横になったまま

静寂の中にいる秀樹さん

 

…現実とは思えませんでした

 

 

私は白い薔薇を

捧げて祈りました

 

 

今まで素敵な歌を

そして

私たちとの時間を

ありがとうございました

これからも

家族仲良くしますから

少しだけ安心してください

 

 

涙はこらえました

泣いてはいけない

泣いたら

止まらなくなってしまう

そう思いました


 

けれど

隣りで笠井は

耐えきれず

嗚咽をあげて

泣いていました

秀樹さんに語りかけながら

しばらく泣き続けました

 

 

秀樹さんの可愛い

3人の子どもたちも

妻の美紀さんも

 

おそらく

この悲しさ

寂しさ

現実の辛さから

逃れたくて

 

静寂の中にいる

秀樹さんのそばで

瞳は涙で濡れているのに


むしろ明るく

色々私たちに

話してくれます

 

私にはそれが

 

切なくて…

悲しくて…

 

この悲しみに

なんとか彩りを重ねて

この悲しみが

薄まらないものなのか

 

そしてみんなで

悲しみの淵に

澱んでしまわないように

 

秀樹さんの横で

一生懸命私たちは

話しました

 

 

平静に

現実を受け止めようと

しているのに

水鳥のように、水面の下では

足をバタつかせ

この悲しみから泳いで

逃れられないかと必死に

話していました

 

 

 

部屋にはずっと

秀樹さんの歌っているDVDが

流れていて

子どもたちが

それをちらちら見ながら

パパの歌やアクションについて

秀樹さんにまるで聞かせるように

感想を言っていました

なんと可愛いのでしょう…

抱きしめてほめてあげたい気持ちでした


 

 

静かな秀樹さんと

晴れやかなヒデキさん

 

部屋は

異次元に

迷いこんだような

空間でした

 

 

 

そして―――

気が付きました

 

本当に

たくさんのたくさんの

大きな枕花が

届いていましたが

 

ほとんどが

 

薔薇

 

だったのです

 

 

薄いピンク色の

薔薇が

いくつもいくつも

あったのです

 

 

あぁ、やはり

みなさん

秀樹さんのことを

お分かりなのですね

 

いろいろな方の想いが

いっぱい込められた

薔薇に囲まれて

 

秀樹さんは

なおも静かに

眠り続けています

 

けれど

薔薇に託された想いは

確かに

秀樹さんに届いている

そう感じました

 

 

 

そして

告別式の時

 

秀樹さんが眠る棺は

美しい青い色

でした


その青い棺の上には

 

赤い薔薇1輪

 

 

秀樹さんにふさわしい

青と赤のコントラスト

 

気高い1輪の

赤い薔薇

 

その薔薇を見た時

私は涙が

止まりませんでした

 

 








これからもずっと

秀樹さんが遺された素敵な歌声を

大事に楽しんでいきます