むかし、私は商店街に住んでいた。

当時は狭いながらも国道で1㎞以上小さな商店が並んでいた。

車以外の物なら全ての買い物ができるような商店街だった。。

徒歩10分の所には大きな国鉄の工場や操車場もあり、夜になると何本かある路地の飲み屋街でヨタヨタした酔っぱらい達が大声で歌っていた。

映画『三丁目の夕日』の風情がここにもあった。

それぞれの店主達がお互いに“社長”と呼び合っていた(笑)

そんな商店街だが、飲み屋街の突き当たりに小さな映画館があった。

近所の子供達はその映画館を避けて通っていた。

何故なら成人映画ばかり上映していたから…

万が一、ポスターを見ているところをクラスの女子に見られたら、翌日の学校で罵られるのは目に見えていた。

たまに思い出したように昔公開された人気映画も上映していたようであるが、あまり入ってはいないようであった。

そんな映画館でも立ち見が出るほど観客が集まる時期があった。

正月と盆である。

この期間は子供向け映画を上映していた。

今思えば、お年玉や親戚から頂いた小遣いを巻き上げる商売である。

ただし人気が出る理由があった。

何故なら、東宝系のゴジラシリーズ、大映系のガメラシリーズ、そして東映まんがまつりシリーズの3本立てを行うという掟破りをするのである。

いずれも旧作とはいえ、子供達にしてみればスペシャル上映!!

朝一から最終まで同じ映画を3回は観る。

入れ替えなどという技は当時はなかった。

観たいだけ観せてくれた。

昼食は館内売店の菓子パンと牛乳。

そして…次回予告の成人映画まで子供達に魅せてくれた。
(^_^;)

これには直ぐに苦情が出たらしく、2回目以降は次回予告がなくなった。

そんな映画館だから直につぶれてしまった。

最終上映はやはり成人映画だったらしく、ポスターもボロボロに破れ、色あせても張ったままであった。

その後、数年間は廃墟となり悪いお兄さん達の遊び場になっていた。

たまに上映してないのに、成人映画のような声が深夜に響くことがあったという…

子供達はお化けが出ると噂したが、思春期を迎える頃にはその理由がなんとなく分かっていた。

古き良き時代(?)である。






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