ひとつ、風が吹いた。

帆がいっぱいにはためき、
止まりかけていた船は再び、動き出す。


夜の航海である。
一面の星空。

空は光。海は闇。
夜でもはっきりと、水平線の位置が見て取れた。


行き先を示すように、星たちは瞬く。


まるで灯台のよう。

ふと思い、少し、笑った。

何万光年も先にある光が、陸の、
人が作った光のはずがないではないか。


風が吹く。
船は順調に進む。

少し、予定の航路から、はずれているけど、
関係ない。


風が導くままでいい。


最低限、座礁さえしなければいい。
羅針盤の見方や操舵方法くらいは知っている。


この船がどこにたどり着くのか。
正直、船長たる自分自身もよく知らない。


この夜が明け、どんな陸が見えるのだろう。


自分が意図した陸なのか。
全く別の何かを見せてくれるのか。





・・・風に。 任せよう。




甲板に身を投げる。
視界の限り、星空。


その、人を安心させる輝きに見守られながら、
ゆっくり目を閉じてみる。



すると。
今まで聞こえていなかったものが、
聞こえていることに気付く。






・・・風が、音を生み出していた。