DVDだけではないビジネスを模索したい――フジ・ノイタミナプロデューサーが語るアニメの今 | 彼女のマスターキー(レビューサイト)

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DVDだけではないビジネスを模索したい——フジ・ノイタミナプロデューサーが語るアニメの今
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』。6月末に発売したBlu-ray Disc第1巻の初週売り上げは3万1000万本と、テレビアニメ史上3位(第1巻として)となった
 フジテレビの木曜深夜で、数々のヒットアニメを送り出してきた“ノイタミナ”。「アニメの常識を覆したい」という制作スタッフの思いから、「animation」を逆さ読みした名称が付けられたその放送枠からは、『のだめカンタービレ』『東のエデン』などが生み出され、6月まで放送していた『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』では作品の舞台を訪れる“聖地巡礼”を行うファンも目立った。

【「DVDだけではないビジネスを模索したい」 フジ・ノイタミナプロデューサーが語るアニメの今】

 そんなノイタミナを支えているのが、2005年の放送枠設立時からプロデューサーとして参加している山本幸治氏。山本氏はもともとフジテレビの著作権部という畑違いの部署で働いていたが、「アニメをやりたい」という一念から、オリジナル企画のシナリオ案を持ち上層部と掛け合うなど積極的に動いたことからノイタミナ枠を立ち上げるに至った。

 フジテレビで放送することによる一般性を要求されながらも、“一癖ある”と評価される作品に仕上げているノイタミナのアニメ。7月10日に行われたテレビアニメーション業界セミナー「変わりゆくテレビアニメ —いままでと、これから。—」(主催:代々木アニメーション学院)では、お笑い芸人のサンキュータツオ氏が聞き手となり、その制作の内幕を語った。

●ノイタミナプロデューサーの仕事とは

サンキュータツオ ノイタミナのプロデューサーはどんな仕事をされているのでしょうか。

山本 企画によって自分が企画しているものもあれば、そうでないものもあるので、企画のプロデューサーという意味ではバラバラです。ただ、ノイタミナの最終的なラインアップを決めるのは僕の仕事です。

サンキュータツオ 一般的に他局のアニメのプロデューサーはどういう仕事をしているのですか。

山本 本当に接点がないので、あまり分かりません。ただ、現場で「ほかの局のプロデューサーってどうなんですか?」と聞くと、「ヤマコー(山本氏の愛称)より結構来ているよ」と言われて、「そうなんだ」と思いました。

 昔のフジテレビのプロデューサーは、要所要所にだけ顔を出すみたいな感じと聞いていたし見ていました。ただ最近、深夜アニメが増えていて、積極的に取り組んでいる毎日放送とかだと、(機動戦士ガンダムシリーズなどを手掛ける)丸山博雄プロデューサーとかは結構顔を出しているらしいので、状況によるんじゃないですか。

 僕はシナリオ会議にはだいたい行くのですが、アフレコ(映像に合わせてセリフや音楽などの音声を追加する作業)にはあまり行かないんです。アフレコや編集にまで顔を出すと多分仕事が回らないので、一緒にプロデューサーをやっているフジテレビ側の担当に任せています。毎日放送のプロデューサーだと、アフレコにも行っているのかもしれないですが、よく分からないですね。

サンキュータツオ テレビ番組を作る、ということがテレビ局のプロデューサーの仕事だと思います。実写のバラエティやドラマだと、テレビ局のプロデューサーは「この番組をやりましょう」という決断をくだして、制作会社に仕事を振って、こういう座組みでやりましょうというところまでは関わりますが、現場にはあまり来ないというのが通例です。アニメのプロデューサーには、シナリオ会議や編集、アフレコにも参加する人がたまにいるということですか。

山本 そうですね。企画によって違っているので、「お前、来なかったじゃねえか」という現場も多分あるんですね。特にノイタミナが始まった時は正直、制作会社との距離があったので、「どうやってうまく入っていくべきか」と日々悩んでいました。

サンキュータツオ 制作会社のプロデューサーとテレビ局のプロデューサーとは何が違うんですか。

山本 制作会社のプロデューサーは1話当たりの予算の枠内に制作費をおさえる仕事をしていて、現場からすると「全予算を持っている人」なんだろうと思います。その予算を集めてくるのが、ビデオメーカーやテレビ局のプロデューサーなのですが、フジテレビが毎日放送と違うのは、テレビ局のプロデューサーとしての仕事のほかに、製作委員会の幹事として座組みを決めたりもしていることです。

サンキュータツオ それは制作会社から煙たがれませんか。

山本 制作会社というよりビデオメーカーから煙たがられることはたまにあります。領域をちょっと奪っているところもあるので。完全にビデオメーカーが主導する放送枠に比べると、(ビデオメーカー側からすると)いろいろ放送局側の主張も入ります。

 でも、そうしないとノイタミナのブランディングを継続したり、オタク層向けに振りきりはせずに一般性を確保するというようなことは多分できないことなんですよね。

サンキュータツオ では、あるアニメをやりたいと言い出すのは誰なのでしょうか。山本さんがやりたいというアニメをやるのか、制作会社がこのアニメをやりたいと言うのか、ビデオメーカーがやりたいと言うのか。

山本 本当に企画によってまちまちです。僕ら自身がやりたいと言い出しているのは半分ないくらいじゃないですかね。言い出しっぺがビデオメーカーのプロデューサーだったり、誰かが前に組んだチームと温めていた企画があって「こういうのどう思う?」というのでやったりとかいろいろです。

サンキュータツオ ビデオメーカーはDVDやグッズを売りたい。そこで、「こういう原作でこういうアニメを作ればDVDやグッズが売れるので、フジテレビでやりませんか」と。あるいはいろんなテレビ局に持っていったりとか。

●一般性の強いアニメでもDVDは売れる

サンキュータツオ ノイタミナではここ数年、オリジナル作品(原作がない作品)が増えましたよね。4~6月期の『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『C』はオリジナルでしたし、『東のエデン』(2009年)もオリジナルでした。

山本 『フラクタル』(2011年)もオリジナルでしたね。

サンキュータツオ そういうオリジナル作品なのか、あるいは漫画原作なのか、小説原作なのか、いろいろあると思うのですが、ノイタミナでやる作品の選定基準を教えてもらえますか。

山本 最近、「ノイタミナは上段くさい」と言う人が一部でいるんですね。それがちょっと通じるかは分からないのですが、その辺は僕らは意識してやっています。

 ノイタミナには大きく3つくらい方向性があります。1つは、『のだめカンタービレ』のような、いわゆるメジャー原作もの。2つ目は、『東のエデン』『C』などの社会派のオリジナル作品。3つ目は、そこにビックリものを掛け合わせたものというか、アニメファンからすると(アニメ的な)作画のかわいい女の子を見たいのに、『空中ブランコ』(2009年)では実写を取り込んだキャラクターが登場するというようなものです。ノイタミナのオープニングとエンディングはしばしば、(アニメ的な)作画バリバリ系ではない、異ジャンルっぽいものにちょっと寄せています。

 その3要素が混ざっているのが、「上段っぽい」と言われる原因だと思います。

サンキュータツオ アニメーションとしてのステレオタイプを追求するのではなく、アニメメーションという表現でどこまでできるのか、という周辺的な作品も出していこうということですね。今、お話しした作画バリバリ系ではない、というのはどういった理由からなんですか。

山本 これも企画によるので、10月から放送する『UN-GO』という作品は、(制作会社の)ボンズのプロデューサーに「作画バリバリ系でお願いします」と僕が言っているんですね。ボンズの良さを出してほしいし、本編はアクションが多くない推理物なので、オープニングはそうしたいなと思ったのです。

 うまくいったかは置いておいて、例えば一番実写っぽいのは『C』のオープニングです。お金がテーマで、本編でバトルもあるという作品なのですが、足りないのは何だろうということで考えた時、「もうちょっと日常で使っているお金や、本編では描ききれない現実感をオープニングでやろう」と言って、やっていたりしました。

サンキュータツオ 僕なんかからすると「狙っているターゲットが違うから、こういう演出にしているのかな」と思っていた時期もあったのですが、その辺のノイタミナのコンセプトや歴史の変遷をうかがえれば。

山本 ノイタミナは大雑把に言うと、1回方向転換していると思います。

 僕自身がハンドリングしている割合は今でも多分3割くらいなのですが、昔は2割、1割ともっと少なかったんですね。そこに至るまでにトライしていたことがいくつかあって、そのトライが最初に出たのが『東のエデン』でした。そこで、初めて「一般性とオタクカルチャーを両方出したい」というかねてからの思いが実現できました。

 「フジテレビでアニメをやっている」と言うと、社内でも「『サザエさん』なの?」「『ちびまる子ちゃん』なの?」「『ワンピース』なの?」ということになります。『ワンピース』はオタク層にも受けているわけですが、オタク層向けだけじゃないところをやっていることを分かってもらうためには、ある程度一般性を確保しておかないとダメなわけですよ。フジテレビでやっている意味みたいなものがあるので。

サンキュータツオ 社内的にということですか。

山本 社内的にもですし、フジテレビでアニメをやりたいと思っている、ビデオメーカーや制作会社、音楽会社などのスポンサーからは、そういうところに期待されているところがあるので。他局より高いスポンサー費を払ってくれている人たちに「これはフジテレビでやって良かったね」と言ってもらえるようにしないといけないと思います。そして、スポンサーの求める優先順位が、ビデオの売り上げではない人たちが多かったんですね。

 企画の一般性ということでは、『のだめカンタービレ』がその象徴だと思います。社会現象になったドラマや映画と連動するために企画が立ち上がったわけです。そういうスポンサーたちが同じメンバーだったということで、一般性という思いの強かった時期がありました。それイコール、企画としてぬるいことをやるというわけではもちろんありませんよ。

サンキュータツオ うまくはまったパターンだと『墓場鬼太郎』(2008年)や『働きマン』(2006年)もありましたね。

山本 ビデオも今言った3つだと、『働きマン』は正直あまり売れなかったのですが、『のだめカンタービレ』と『墓場鬼太郎』は結構売れているんですよ。オタク層がウオッチしている2ちゃんねるとかに貼っている数字と乖離(かいり)していて、実は大分売れているんです。多分、オタク層の人たちは1巻の初週売り上げしか見ていないですよね。

 『墓場鬼太郎』はNHK連続テレビ小説の『ゲゲゲの女房』が放送された時にバックオーダーが来ていたのですが、一般性ってそういうことだと思うんですよ。でも、「一般性=オタク層をはじく」ということでもなくて、そのバランスがもともと拮抗していたのですが、よりオタク層に傾きを変えていった転換期が『東のエデン』くらいからだったと思います。

●アニメ業界は圧倒的に“行政”が少ない

サンキュータツオ 山本さんはもともとフジテレビの著作権部にいたのですが、アニメ作りをまったく知らないところからアニメ業界で仕事をするようになったわけじゃないですか。そういう人からはアニメ業界ってどう見えているんですか。

山本 そこは掘るといろいろあります。フジテレビを辞めようかと思ったことも何度かあって、でも辞めずにきているのは、もちろん待遇がいいとかもあるのかもですが、「今、フジテレビの看板でやれていること以上の座組みを組むのに多分もっと膨大な時間を要する。看板があって組めるビジネスがある」と思っているからだと思います。

 「中間を抜く」というような話もよくありますが、昔はそうだったと思います。昔は広告代理店や元請けの制作会社が抜いていたりとかあったのですが、今は違います。アニメ業界はフリーの集合体で制作するシステムがある意味効率的にできているので、(制作側の力が)実写より少し強いわけですよ。実写はこの不況で映画会社も倒れているくらいですから、テレビ局さまさまみたいなことをやらないとやっていけないわけです。でも、アニメ業界はテレビ局がどうであれ、多分やっていけるんじゃないですか。

 実写は今、ドラマも映画も本当に悲惨ですからね。洋画はもっと悲惨ですから。とても乖離はしているのですが、「テレビ局主導で年間何十本バラエティを作っているシステムと、アニメの制作システムと、どちらがハリウッドシステムに近いか」というと多分アニメの方なんですよ。でも、そこで起きているいろんな格差や問題はなかなか改善されないですね。

サンキュータツオ バラエティやドラマの場合、もうちょっと番組を作る上でのヒエラルキーがはっきりしていて、テレビ局が一番上で、その下に制作会社、その下に芸能事務所や音楽事務所というのがあると思います。アニメの場合はもうちょっと制作会社主導だったりとか、テレビで流さなくても商売する方法とかがあるということなんでしょうか。

山本 そうですね。もちろんいろんなアニメがあるので、「これをやりたくてやっているわけじゃないのに」というものもあると思いますが、多分アニメの方がクリエイティブなんです。なぜそう思うかというと、全体として“行政”が圧倒的に少ないんですよ。

サンキュータツオ “行政”というのは、芸能事務所などとテレビ局とのパワーバランスで、「じゃあこの人を入れる代わりに、この人も入れて」ということですね。ということは、業界としてはかなり健全だとお考えなんですか。

山本 健全だと思いますね。アニメ業界では企画が制作会社発、監督や時に絵描き発でも立てられますが、実写でそれができる制作会社はハリウッドではあっても日本ではもうほぼないですよね。

サンキュータツオ ないですよね。そう考えると、クリエイターたちがある程度辛酸をなめつつも、やろうと思ったことができるという環境は整っていると。

山本 そうですね。「(テレビ局でも)制作会社でも、もうちょっと賢く立ち回れば主導権をとれるのにな」とずっと思っていたんですよ。

 簡単に言うと、お金を100%自分たちで出すのが正解だと思うんです。それは全部自腹を切るのではなくて、自分たちを買ってくれる人を探して。

サンキュータツオ 要するに「この番組をやって一発当てたいけど、お金がないので出してくれる人募集」ということですよね。するとお金を出してくれるところの意見もちょっとは聞かないといけない。そこである程度みんなの意見も聞きつつうまく立ち回れば自分のやりたいことができるけど、不器用な人だとみんなの意見を取り入れて中途半端な作品になってしまうことも多いと。

山本 そういうのは不幸な例が多分いっぱいあると思うんですよね。うまくいっているものは作画や音響などいろんなところに神経が届いているというのも大事なポイントだと思うのですが、「ここを狙って、こういうものを目指すんだ」という企画の最初の意図がシンプルに通されているかどうかが大きいと思うんです。

 ノイタミナももちろんいろんな行政があるのですが、純然たる企画意図をまずは共有しようというのをやっているつもりではいます。ただ、僕にとってはそうなのですが、相手にとっては「それはノイタミナの事情でしょ」と言われたりするのですが。

●お金を張ること自体に意義を感じるスポンサーを探したい

サンキュータツオ 今、日本経済は不況でアニメのDVDも売れていないと思うのですが、業界的にはいかがなのでしょうか。

山本 DVDが1万本売れるクラスの作品がなくなってきていますね。10万本売れている作品もあるのですがそれはごく一部、ごく一部の作品以外はまったく売れない。非常に売れる作品とそれ以外という状況になっているので、外れ前提みたいになっているんです。それはアニメ業界の人はみんな分かっていると思います。

 ただ、「DVDが1万本売れるか売れないかということが、どれだけ大事なことなんだ」という話に本質的になった時、先ほど言ったように100%お金を出してくれる人がいるような何か別の意義を作っていればいいんですよ。

 例えば最近、神山健治さんが博報堂の人と共同経営の会社(STEVE N' STEVEN)を作りました。そういうクリエイター主体の会社ができて、スタジオジブリのようにナショナルスポンサーが付きやすい構造を作ればいいんです。みんながそうはできないので、全体としていいかどうかは分からないですが、(能力的に)上の人たちは100%お金を出すという意識で作れるようになるのがいいと思います。

サンキュータツオ (『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明監督が代表を務める)スタジオカラーみたいなものですか。100%自分たちが作りたいものを作って、売れたら全部自分たちのところにバック、責任も全部自己責任。ただ、それはみんなができるわけではないと。

山本 例えば、ハウス食品が『ハウルの動く城』(2004年)のスポンサーになっていますが、ハウス食品はお金を出した時点でOKで、ビデオの売り上げや興行収入は別にいいんです。まあ、大こけしたり、何か変なケチが付いたらまずいですが。『魔女の宅急便』(1989年)でのヤマト運輸のように、宮崎駿ブランドのアニメのスポンサーをするという時点でOKなわけです。

 そういう人たちを見つける仕組みを作らないといけなくて、僕がテレビでアニメを続けている理由はそれなんですね。今この瞬間は、DVDが3万本売れるタイトルを目指して、結果5000本でしたみたいなことを続けざるを得ない現実はあります。しかしいずれは、個別のセールスとは別のビジネスとして、ノイタミナにお金を張っていることに意義を感じるという人がいるということをやりたいと思っています。

サンキュータツオ そこでノイタミナのブランド化という話になってくると思うのですが、まずこの枠を作ろうとした発端を教えてください。

山本 発端時はこんなことは全然考えていませんでした。個別の企画をいくつかやりたくて、やっていたという形でした。

 ノイタミナはもう7年やっているので、弱点が分かっています。簡単に言うと、視聴率をとっても、ビデオが売れないということです。「それでいい」と言ってくれる人たちで最初はやっていたのですが、「それじゃまずいよね」という時代になってきています。

サンキュータツオ 何でそうなったんですか。

山本 やっぱり経済状況がきついからじゃないですか。あとは、ノイタミナが視聴率を5~6%とっていた時代と変わっていて、ベースの視聴率が絶対的に減っているんです。月9ドラマが10%を超えてホッとしているくらいの時代ですから。

 依然として20%を超える番組もありますが、ワールドカップのようなイベント、誰もが見たら手を止めてしまうようなゆるいバラエティ、やるなら絶対見ようという『人志松本のすべらない話』のような、いくつかの方向に偏っていると思うんですね。テレビが大分変わってきているんです。

●クリエイターが次につながるものをやりたい

サンキュータツオ ではどうやって作品を売っていくかという話になっていくわけですが、今はどうなんですか。視聴率をとる番組を作っているのか、DVDを売る番組を作っているのか、それともブランド力を付けているところなのか。

山本 その全部なのですが、僕としてはノイタミナというブランドを一番大事にしたいんですよ。でも、それは僕というノイタミナを長くやっている人間の主張であって、1人1人のクリエイターは「いや、そんなことより俺は当てたいんだ。そうしないと次の仕事に関わるんだ」という気持ちがもちろんありますし、ビデオメーカーもそうでしょう。タイアップしているミュージシャンも、「ブランドもいいけど、CDは売れるの? まず番組をヒットさせてよ」という話になります。

 ノイタミナでも昔はグレーゾーンを広げると、その結果、DVDが売れていたんですよ。例えば、『のだめカンタービレ』なんかは結構売れていて、特に1期は数万本も売れているんです。2ちゃんねるに貼ってある数字の3倍くらい売れているんですよ、悔しくて言っているのですが(笑)。

サンキュータツオ 結構、2ちゃんねるを見ているんですね。

山本 最近、見ています。コンプライアンス的に見ないとまずいことがいろいろ書いてあるので。

 「視聴率が上がると、DVDを買う可能性のある層が増える」という分かりやすいロジックが成立していたところがあったんですね。大きく広げられるというところに、メディアの意味があります。今ももちろん大きく広げられるのですが、その広がり方が小さくなっているのは間違いないので、軸足をコア向けに取り直しているのです。

 苦肉の策のようですが、僕はもともとコア向けがやりたかったんです。でも、それだけではやれなかった時代が長くて、環境的にも「そっちに行くより、こっちだろ。『のだめカンタービレ』なんかできたら最高だよね」とみんなが思っていたんですね。しかし、『のだめカンタービレ』も1期、2期、3期と視聴率はそれほど落ちなかったのですが、DVDのセールスが落ちているんです。そこにカルチャーの変化とか、みんなが使える小遣いが減っていたりとかがあると思います。

サンキュータツオ 例えば、昔は1クールに2タイトルくらいのDVDを買えていたのが、今は1タイトル分しか買えない。じゃあ『放浪息子』(2011年)なのか『インフィニット・ストラトス』(2011年)なのかという時に、『インフィニット・ストラトス』を買うという人がいっぱいいるということですね。そう考えた場合、パイを争うだけになっちゃうじゃないですか。そこをどう打開するかという話になると思うのですが。

山本 『インフィニット・ストラトス』の話は象徴的ですね。

 でも、僕らは好きなことを2次創作的にやっていけばいいということではなくて、例えばスポンサーからすると、「あの人が次にこういうことをやると言っていることに張りたい」というものが絶対あるわけですよ。

サンキュータツオ 「神山健治がオリジナルをやるらしいよ」と聞いたら、そこに乗っかりたい人たちがいると。

山本 僕も『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(2002~2003年)の笑い男編を見て、「この人は天才だ」と思って「やりたいな」と思いました。「この企画をやって次につながるのか」という疑問を持ちながらクリエイターがやるようなものは、僕らはなるべくやりたくないんですよ。そういう作品でも僕は見たら好きかもしれないし、DVDを買うかもしれないのですが、多分次につながらないので。

サンキュータツオ 業界全体のパイを見た時に新しいパイを生むかどうか、あるいは試みとして新しいか、面白いかということなわけですね。

山本 これは「俺はアニメ業界を何とかするんだ」という慈善事業的に言っているわけではまったくないですよ。

サンキュータツオ 山本さんはそう言っても、世の中の人はノイタミナにそれを望んでいますよ。

山本 ノイタミナを始めた時はそんなことを考えていなくて、俺がやりたいだけだったんです。でも、その結果、クリエイターが「ノイタミナをやりたい」と言ってくれることが振り返ると僕らの武器だったんです。そこを見た時に、「そこは大事にしないとダメだな」と思ってこの考えに至っているだけで、善意でやっているとかではないですね。

サンキュータツオ 山本さんは「なぜクリエイターがノイタミナでやりたい」と言うようになったと思いますか。

山本 それは多分先ほど言ったように、企画意図みたいなところに一緒に参加できるからじゃないですか。どちらかというと僕らが参加させてもらっているのですが。

 監督は請け仕事が多いわけです。自分が知らないところでいろんな監督の候補が出ていて、スケジュールが合うとか合わないとか、あいつと仲がいいとか悪いとかで最終的に決まるものです。もちろん、「あなたにやってほしいんです」と来ることも多いと思いますし、いろんな形があると思いますが、自分発の企画ってなかなかできないんですよ。

 例えば、中村健治監督の『C』は「監督、次何かやってくださいよ」から始まっていたりします。神山健治監督の『東のエデン』も、「攻殻機動隊をもうちょっと派手にやりましょうよ」みたいなところから始まっていたりするんです。そういう、クリエイターにとって先につながるようなクリエイティブなことがやれるという印象があります。ただ一方で、やっている監督にとっては、「こんなにうるさいことを言うやつがいるとは思わなかった」みたいなこともあるので、いい話ばかりすると怒られるのですが。

サンキュータツオ 最後に山本さんが思い描くノイタミナの今後、5年後や10年後の話についてうかがわせてください。

山本 残っているかどうか分からないですが、ノイタミナブランドというものがよそでも通用するような独立性を強めたいです。

 フジテレビの浅めの深夜枠というのが売りの枠なのですが、関西だともっと深い時間帯だったり、それ以外の地方だと「ノイタミナって何?」ということになっているのが現状です。そこで、10月くらいからローカル局でも見られるような工夫をしているところです。

 フジテレビの看板は時に邪魔なわけです。やっぱりアンチもいるじゃないですか。特にアニメファンの人たちは、フジテレビのキャッキャッキャッキャやっているバラエティが好きかと言われれば、そんなに好きではないと思うんですよ。

 そういうのがあるので、ビジネスパートナーは“フジテレビ”に魅力を感じてくれているのですが、もうちょっと“ノイタミナ”に魅力を感じてくれるようにするという意味で独立性を強めたいということですね。フジテレビが「いらない」と言っても、TBSが「じゃあうちがやりますよ」というようなくらいになりたいですね。そうなったらフジテレビも多分手離さないんじゃないですか。

●アニメを見る可能性のある分母は増えている

 山本幸治氏とサンキュータツオ氏が対談を終えた後は質疑応答に移行。テレビアニメーション業界セミナーとあって、業界関係者も含めた参加者からさまざまな質問が投げかけられた。

——ノイタミナのブランド力を広げたいという話がありましたが、テレビでやらずに劇場版アニメを公開するという選択肢も今後ありえるのでしょうか。

サンキュータツオ 「ノイタミナで『空の境界』(2007~2009年)※をやるか」ということですが。

※奈須きのこ氏による長編伝奇小説のアニメ化。全7部をそれぞれ劇場単独で公開したにも関わらず、DVDやBlu-ray Discが各巻数万本のセールスを記録した。

山本 テレビと劇場の連動はあると思います。劇場単独は、スタジオジブリのように「劇場アニメをやれば必ず客が来る」というくらいまで、ノイタミナにブランド力が付く時まで正直そんなに勝算はないと思っています。

 『空の境界』は「コアなお客が必ず見に来る」ということを当てにしています。ノイタミナにはそこまでのコアな求心力は今ないと思っているので、劇場単発は無理ですね。やるとしたら、作品によったものですね。“ノイタミナの劇場化”ということではなく、“作品の劇場化”ということです。

——編成はどのように決めているのでしょうか。この作品とこの作品は同じクールだと合わないなといったことを考えて決めているのでしょうか。

山本 自分が企画を決める事務局的なポジションになってからは、かなり意識しています。「オリジナル1本と原作もの1本を組み合わせるより、オリジナル2本の方がインパクトあるだろう」とか「オリジナルと原作ものを合わせると、もやっとするかな」とか、その辺はすごく意識しています。

 でも、現実はクリエイターベースで、「この人とやる」みたいなのを並べていった時に玉突きで時期がずれたりもするので、思ったようにはいっていないですけどね。

——ノイタミナの原作は小説や漫画が多いですが、ゲーム業界とのコラボは考えられますか。

山本 かつてテレビ業界に優秀な人たちが集まっている時代があって、その後はゲーム業界だったんですね。優秀な人がいっぱいいてビジネスもしっかりしているし、絶対組みたいと思っています。

 ただ、『ペルソナ』(2008年)や『テイルズ オブ ジ アビス』(2008~2009年)がそうなのですが、人気になったゲームのアニメ化は、僕らはあまりやる気はないです。なぜかというと、その上振れ度がゲームで先に見えてしまっているからです。

 同発的なものはやりたいと思っています。全部こけるかもしれないですが、今、いくつか仕込もうとしています。でも、難しいんです。時間軸が違うし、向こうの予算が大きいので。

サンキュータツオ ゲームの方が大きいので、発言力も向こうの方が重くなると。

山本 正直、彼らはアニメを宣伝と考えてしまうんですよ。「何かアニメやってくれればいいよ」となってしまうので。失敗しなければいいのですが、それだと今のオタク層は納得しないので、それなりに温度の高いものをやらないといけない。ただ、そこはできるならやりたいですね。

——制作会社の収益構造なのですが、一般のテレビ局で放送するのと、独立U局で放送するのとで、どのように異なってくるのでしょうか。

山本 制作会社は受注益があるので、赤字で作らなければ受注した時点で利益は出ています。

 先ほど僕が言った、ビデオを売らないといけないスキームというのは、ビデオメーカーがある意味、セットでスポンサーになることを強いられているんですね。(制作費+スポンサー費分の)ビデオが売れないと赤字になってしまうということです。独立U局の方がスポンサー費は圧倒的に安いですね。

 「スポンサーを強いられている」と言うと良くないですが、本編放送中に「DVD発売」というCMが出ることは普通に大事じゃないですか。再放送でDVDが売れるというのも、よっぽど息の長い作品でないと、今のアニメオタクカルチャー的にはありません。そこで、いつDVDの情報を出すかとか、第1話からCMを出していいのかとか、みんなその辺は気を付けてやっていますね。DVDを売るスキームでの合理性だけで言うと、独立U局の方が効率的であると言えます。

——制作会社自体は赤字にはならないと考えていいのでしょうか。

山本 (製作委員会に)出資している場合もあると思いますし、すごく赤字でも「印税で取りかえすんだ」ということでやっている時もあると思います。ただ、制作会社は基本、受注益があると思うので、赤字ではないと思います。ただ、ビデオが売れない作品を作ってしまうと、次の仕事が来ないということはあるかもしれないですね

——『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』では西武鉄道とタイアップしていたり、ほかにもufotableが徳島県でマチアソビのようなイベントを行っていたりします。ノイタミナを一般層に浸透させるために、そうした町おこしのようなものに積極的に関わっていくお考えはあります。

サンキュータツオ 『花咲くいろは』※を作るかどうかということだと思いますが。

※石川県の温泉旅館を舞台にしたアニメで、湯涌温泉観光協会などが取材協力をしており、地域おこしという一面も持っている。

山本 『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』はノイタミナとしての仕掛けというより、脚本の岡田麿里さんの仕掛けだと思います。ただ、一般層に拡大するための施策は最近特に意識していて、渋谷パルコでやっているノイタミナショップもそうです。

 売り上げでいうとウハウハとかでは全然ないんです。今、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』で混んでいますが、何せ単価が安いので、1~2クールのアニメの制作費を回収するには到底及びません。しかし、そこでの広がりや話題性のようなところを、とても意識していますね。

サンキュータツオ アニメを1クール作るのにいくらくらいかかるんですか。

山本 1話1500万円くらいだから、1クールで2億円くらいじゃないですか。2クールだと倍になって、ちょっと安くなるくらいですかね。

サンキュータツオ さっき言っていたスポンサー費は、フジテレビと独立U局とでどのくらい違うんですか?

山本 制作費は1社で持っているわけではないのですが、ビデオメーカーが一番大きなリスクを負っているんですね。例えば、2億円の制作費のうちの半分を出して、枠によりますが、それに近いくらいのスポンサー費も払っている時もあると思います。独立U局だとスポンサー費はその10分の1くらいになります、これかなり今適当に言いましたよ(笑)。5分の1くらいかもしれない。

サンキュータツオ アニメ好きの人と一般の人という分け方についてはどう思いますか。

山本 アニメ好きが一般化しているとは思うんです。『アメトーーク!』でもジョジョ(『ジョジョの奇妙な冒険』)芸人とか取り上げられるくらいに一般化しているし、昔の『電車男』的なところにはもういないと思います。

 痛みに対する反応、いわゆるリア充に対する反応みたいなことを言うと、景気が悪くて、雇用も安定しないので、いろんな意味でオタク化が進んでいるというか。

サンキュータツオ アニメを見ようとする分母は潜在的に増えていると。

山本 僕ですらドラマとかには感情移入できないわけですよ、よっぽどの何かがないと。「この子かわいいな」とか別の着眼点で見ることはありますけど、ドラマの方がリアルなはずなのにすごい絵空事になっているんです。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』なんかはドラマっぽいとも言えますが、アニメカルチャーの人たちにとってすごいリアルだったということではないでしょうか。

サンキュータツオ 昔ほどオタク層と一般層という枠組みがなくなって、グレーなところが増えたということでは「まだ新しく仕掛けがいのあるマーケット」と考えているんですね。

——秋葉原ではなく渋谷パルコにノイタミナショップを出したのは、一般層に受けることを意図したからなのですか。

山本 最初は吉祥寺パルコでやっていたんですね。その時も向こうの提案だったんです。「秋葉原じゃないと思うので、吉祥寺からやってみませんか」と。そして、期間限定で渋谷パルコで『四畳半神話大系』(2010年)や『海月姫』(2010年)をやったら好評だったので、渋谷に移ったというリアルな経緯もあります。

 1つ1つの仕掛けの話をしていくと、「やっぱり秋葉原の方がいいよね」という話になったりするわけです。秋葉原が全部オタク層で染まっているわけではないし、隣の駅も秋葉原であるわけではないですし。

 ショップに限らず、企画のデザインということで一番意識しているのは、オタク層にも受けるんだけど、上振れした時に一般層が見やすいもの、それを追いかけています。『魔法少女まどか☆マギカ』はものすごく驚いて面白くて、DVD販売という意味では上振れしているのですが、そこから先の爆発的な何かというのになりにくいのかなと思ってやっているのです。

 『新世紀エヴァンゲリオン』とかはそこからさらに広がったのですが、1~2クールのテレビシリーズだともう少し一般性のあるキャラクターデザインであった方がいいかなということに一番悩んでやっていますね。

●視聴者の心に残りやすくするため、2クール化も

——『東のエデン』が初めて一般層とオタク層から受けたという点で功績が大きいということですが、今後、ノイタミナでまた神山健治さんを含めた『東のエデン』のスタッフで何か作品を作りたいなと思われますか。

山本 いろんな監督とやっていきたいですが、神山さんは僕にとってすごい特別な人なので、ぜひやりたいと思っています。

——『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のエンディング曲でZONEの『secret base ~君がくれたもの~』を使った意図を教えてください。

山本 本当の始まりで言うと、シナリオ会議をやっている途中で、ソニーミュージックのプロデューサーとメールのやり取りをしていたんです。「懐かしさがある曲がいい」とか「耳に残りやすい曲がいい」と、青春というキーワードで話をしたのですが、「例えばこういうこと?」ということで、『secret base ~君がくれたもの~』が出てきたのです。

 その時は賛否が半々くらいで、「ちょっとベタだね」という話だったのですが、その後みんなで話していて、「やっぱりこれだね」ということになりました。「10年後の8月」※とかは最初から意識していて「これは今しかないよね」ということで決める時の理由になりました。

※曲中の歌詞。2011年の8月が、『secret base ~君がくれたもの~』が発売されてからちょうど10年目の8月となる。

サンキュータツオ 作品がもうシナリオ会議まで入っている中で、『secret base ~君がくれたもの~』に出会ったと。

山本 そうですね。5話か6話か、中盤のシナリオ会議のころでした。

 また、僕らにとってオリジナル作品には、武器のない怖さがあります。オリジナル作品ではないですが、劇場アニメ『カラフル』(2010年)では尾崎豊やブルーハーツのカバー曲を使っていましたよね。ほかの力を借りたいという発想がすごくあったのです。

——『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』ではスナック菓子などで実際にある商品が出てきましたが、あれとプロダクトプレイスメント※の違いはどういうところにありますか。

※番組の中で企業の商品を登場させる宣伝広告の方法のこと。

山本 昔、『ハチミツとクローバー』(2005年、2006年)や『働きマン』でウイダーinゼリーが出ていたのですが、それは完全にある商業的な条件でやっていました。ただ、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』でやっていたのは、単純に許可をとって使わせてくださいということです。『C』では、許可をとるよりはちょっともじってしまおうということだったので、あまり許可はとっていなかったのですが、その辺は本当は統一したいと思っています。

サンキュータツオ それは実際にあるものを使った方が、作品としてリアリティを出せるということでですか。

山本 そうですね。あれは(ビデオメーカーの)アニプレックスの斎藤俊輔プロデューサーがすごく動きのいい人で、「俺がやる」みたいな感じでした。制作会社のプロデューサーにとっては正直、面倒じゃないですか。OKが出るまで時間がかかったり、使い方を指定されたりするので、そういうのをあまり喜びません。そこは仕掛けようとした、アニプレックスのプロデューサーの鼻がきいていたと思いますね。

——お金を出すこと自体に意義があるというお話がありましたが、現在毎日放送系列で放送している『TIGER&BUNNY』について思うところがあれば教えてください。

サンキュータツオ 『TIGER&BUNNY』はサンライズの作品でロボットが出てくるのですが、ロボットにスポンサーのロゴが張り付いているということで、放送前から話題になっていましたね。「こんなところにスポンサー入れるな」という話もありましたが、ふたを開けてみると結構好評なアニメになっています。あれは新しい商売の形ととらえていますか。

山本 いわゆるF1システムだと思うのですが、あれが毎回できるかというとできないじゃないですか。面白かったですが、あれで本当にビジネスができているかはよく分からないと思うので、僕は別の方式を探っています。ただ、ファンとしては、1つのネタとして笑っちゃいましたね。「うわ、牛角(のスポンサーロゴを背負ったロボット)」とか、心の中で一緒に実況していたので。

 いいネタではありましたが、継続していくスキームとしては正直あまり参考にしていないですね。

サンキュータツオ 『TIGER&BUNNY』は地上波以外にUstreamで流すといった実験的な試みも行っていますが、ノイタミナではテレビ以外での放映の仕方を模索したりはしないんですか。

山本 メリットがあればやりたいですね。今は集まってくれている人たちがフジテレビの浅めの深夜枠であることにメリットを感じてくれている人たちなので。それに、フジテレビにはいろいろルールもありますから。

——今後、こういうジャンルを作りたいとかありますか。

山本 ガンダムシリーズがずっと続いていて、仮面ライダーのような戦隊ものが続いていて、ウルトラマンシリーズも続いているのですが、そういうものってなかなかないんですよね。ノイタミナは1クールしかやらない立場なのですが、今後はシリーズ化していきたいですね。

 仮面ライダーシリーズだと、とても大人しか分からないようなコンセプトが入っていて、子どもはそこが面白いんじゃないんだけど、後で意味が分かるみたいなのが毎回1ネタはあるじゃないですか。ああいう仕事はとてもすばらしいと思っていて、『TIGER&BUNNY』もそういうラインになりうると思います。

サンキュータツオ 1クールや2クールで終わっても、間を置いて第2期が始まるというような。

山本 でもそのためには「これでやれば絶対当たるところまでいくんだ」みたいなコンセプトがいると思うんです。社会派みたいなこととか、何かがいると思うんですよね。

——ノイタミナでは30分アニメ2本という形は崩れないのですか。1時間アニメ1本や15分アニメという可能性についてどうお考えですか。

サンキュータツオ 『刀語』※についてということですが、30分アニメ2本という形はぶれないのでしょうか。

※2010年の1月から1時間のアニメを毎月1話、全12話放送した。

山本 考え方としてはすごくありです。ただ、『刀語』は月1回1時間の放送だったのですが、それは制作会社のホワイトフォックスがスケジュール管理がしっかりしていたからできたということがあります。多分それ(毎週1時間)に耐えられる制作会社が実質ないかもしれないということが現実問題としてあります。

 考えているのは映画との連動もそうですが、例えばですが同クールの2作品が別番組でありながら内容が連動しているというのはやりたいと思うことがあります。

サンキュータツオ 1クールという発想ではどうですか。今、1クール11本ですが、3本で終わるアニメと8本で終わるアニメをやるとか。ノイタミナ枠はクールで縛られなくてもいいんじゃないですか。

山本 ビデオマーケットのお客さんたちが、クールの頭を目指して話題にする仕組みができてしまっているんです。

 それに露出量としても、例えば映画だと行こうと思ったら終わっていることがあるじゃないですか。テレビでもTwitterなどでいいネタさえあれば口コミが広がるのですが、それに1クールは最低でもいります。ノイタミナは今まで1クールものばかりでしたが、今後は2クールものが増えると思います。2クールあった方がみんなの心に残りやすいというのはやっぱりあるんですよね。

【堀内彰宏,Business Media 誠】



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