最初の試合が終わり、子供たちが僕の前に集合しました。
僕は泣きながら試合を観ていたその子の目の前で、もう1人いる試合に出ていない4年生の子に「次の試合はお前で行くから心の準備をしておけ!」と声を掛けました。その子はビックリしてオドオドしながら「ハ、ハイ」と。
そして次の試合。
アップが終わり1Qが始まろうとした時、「出るな」と言われたその子がセカンダリーを脱いでユニフォームになり、試合に出ようとしています。
「出ろ」と言われた子はどうすればいいのか迷っていました。
予想通りの行動です。その瞬間からが演出の始まりです。
僕:「お前何で脱いでるんだ?逃げる奴は一生出番はないと言ったはずだ!
何がしたいんだ?」
その子:「行かせて下さい・・・」
僕:「なんだと・・・よし、じゃぁこうする。もしまた素通りされるようなことがあったら、 本当に今年1年、お前は1試合も出番はないからな。ずっとこいつを出す。(もう1人の4年生)それでもいいのか?どうする?」
するとその子は目をウルウルさせながら・・・「はい、行きます!」
僕:「よし、わかった。約束だからな!じゃぁ行け。」
一緒に1Qに出るキャプテンが目を擦りながらコートに向かうその子の肩を(よく言ったぞ!という意味で)ポンポンと叩きながらコートへ。
そして感動のシーンが訪れます。
相手の選手(体格から見てきっと6年生)がうちのディフェンスを振り切ってドライブに行こうとした瞬間、その子が真正面に飛び込んで来て激突!
その子は吹っ飛びました。
ジャッジはブロッキング。でも、チャージングとコールさせてもおかしくないほど真正面で体を張って受けたナイスディフェンスでした。
僕は思わずベンチを飛び出して、大きな声で「良くやった!ナイスディフェンスだ」と言って手を叩きました。ぶつかった場所が痛かったんでしょう、腕をさすりながら僕の方を見て、小さくうなずきました。
すると、不思議です。
あとの2人の4年生も体を張って必死で相手を止めようとするのです。
その光景はまさに感動です。
大差を付けて戻ってきた1Qの4年生3人に僕は拳を差出し合わせました。
「OKだ、よくやった」
そして、2Qに出ようとする5人に、「4年生が体を張って頑張ったよな。さぁ、お前たちの番だ見せて来い!」と。当然、上級生は頑張らざるを得ません。
試合は最高の流れになっていきました。
4Qの後半、点差が広がった場面で「出すぞ」と言って出さなかったもう1人の4年生を呼び、「今度はお前の出番だ。さぁ行って来い!」と言って送り出しました。
結果は?って・・・もちろんボロボロです。何にも出来ませんでした。
終わって戻って来たその子に、「何だ、まったくダメじゃないか。お前の頑張りを見て、あいつがプレッシャーになるかと思ったのに。つまらん!」そう、次の演出の始まりです。
さて、その翌日の準決勝、決勝はどうだったでしょう?
当然、更に強い相手です。
でもそこにはもう「赤ちゃん」と呼ばれた腰の引けた4年生の姿はありません。
大きく高い壁を1つ乗り越えて、彼の中で常識が変わったのです。
「僕にだってできるんだ!」
人は飛び上がる時、必ず一度体を沈めますよね。
力を引き出す時、そこには「反動」が必要なんです。
「反動を生むシナリオ」と「本気にさせる演出」、その場のシチュエーションと、選手の性格から予測されるリアクションを読んで「感動」をつくり出す。
これ、指導者の「技」なのです。
あ、子供たちにはくれぐれもナイショでお願いしますね!(*^o^*)