先週の金曜日の深夜、悪寒に襲われた。
土曜日、朝起きても体調の悪さは変わらずだが、
この日は休めない事情があったので、無理に出勤した。
担任しているクラスでも、大量の欠席。
数人はインフルエンザ。
午後の仕事を終えて、急いで帰宅し、布団に潜り込む。

おそろしいほどの悪寒がカラダを襲う。
暖房をいくら入れても寒い。
両足の足の裏が攣っている。
腰が痛い。
頭痛もする。
何も考えられない。

日曜日、朝9時の時点で体温38.6℃。
小便は、普段ありえない、オレンジ色。
俺のカラダで何が起きている?
「インフルエンザ?」

休日診療に、妻に連れて行ってもらった。
「インフルエンザではないでしょう。
 症状が軽すぎます。」
年老いた医者は、めんどくさそうにそう言った。
それはそれでホッとした。
薬をもらい、また、布団にくるまれ、気を失った。
足の裏のケイレンはまだある。

月曜日、マスクをして無理して出勤すると、
今度はクラスで大変なことが起きていた。
「先生、クラスの半分の人数が来ていません!」
あまりの登校者の少なさに、報告に来た生徒がいた。
同時に欠席の連絡表が、大量に。
教員室の先生方の耳目を集める。
「え~?。」
朦朧とした頭に、起きている現実が入ってくる。
教室に行くと、現実がハッキリしてくる。
クラスの半数のものが欠席。
その半数がインフルエンザ、また残り半分が風邪。
教務主任から通達が来る。
「今日から3日間、学級閉鎖。」
歓声を上げる元気な子たち。
可及的に速やかにクラスの子を帰すと、私も仕事がなくなった。
早退した。
もう一度、別の病院に行って、インフルエンザの検査を受ける。
やはり陰性。
インフルエンザではない。
帰宅し、日溜まりの部屋で寝た。
足の裏のケイレンはなくなっていった。

しかし、本当に怖かったのはこれからだった。
月曜の朝、
日曜日の夜まで元気だった小学生の娘が熱を出した。
月曜日、学校を休ませ、病院へ妻が連れて行った。
やはり風邪。
インフルエンザの検査には引っかからなかった。
しかし、火曜日の未明から事態は急変する。

火曜日、あいかわらず体調のすぐれない私は、欠勤した。
娘は40℃近い熱を出し始めた。
かかりつけの医者が、熱冷ましを処方してくれるというので、
厚着をして、薬をもらいに行った。
薬を飲ませ、寝かせつける。
妻と私は軽い昼食をとる。

しばらくして、娘が何かを言いはじめた。
ソファでぐたっとしていた私。
「@☆★○●◎◇◆□■△▲▽※!!」
ビックリする妻。
「トイレなの?トイレに行きたいのね?」
うなづいたのか、そうでなかったのか。
それでもトイレに行かせた。
そしてまた寝かしつけた。
布団は居間に敷いて置いた。
妻の話では、トイレの使い方もわからない、
パンツも自分で脱げないようであったという。
目つきがおかしい。
1点を見つめている。
何を言っている?
言動がおかしい。
あれこれ心配にしているうちに、息子を幼稚園へ迎えに行く時間に。
「娘を見ていてね。」
妻が息子を迎えに行った。

娘の様子が明らかにおかしい。
何を言っている?
「パパがわかるか?」
娘の返答はない。
いや、すごく遅く、ある。
記憶障害か?
手の動かし方がおかしい。
足の動かし方もおかしい。
「寝てて、いいんだよ。」
「@☆★○●◎◇◆□■△▲▽※!!」

何?
「○○くん(親戚の子)と遊んだ。」
遊んだのは正月のことだ。
今は遠くに離れている。
娘に何かがおきている。
高熱のせいか、それとも、薬(熱冷まし)のせいか?
妻を大急ぎで呼び戻す。
「娘がおかしい。さっきよりもおかしい。
 うちの子がどうにかなってしまうのではないか?」
救急車を呼ぶか、思案している。
妻が息子を連れて帰宅した。
娘を見ると、
寝ていた。

相談し、かかりつけの医者に電話する。
救急車はそれからでもいいだろう。
「インフルエンザかも知れませんね。」
あっ。
検査の結果から、娘はインフルエンザじゃないと思っていたが、
たしかに。
あの小さな医者の待合室で、
診察を受けた後にうつされることもある。
そうか、あの高熱を出した未明から、
娘はインフルエンザを発症していたのか!
そうなると、あの意味不明な言動・行動が、
タミフルが原因かどうかという、異常行動・妄想?
うちの娘はタミフルを摂取していないので、
異常行動の原因はタミフルではない。
高熱か、インフルエンザ・ウイルス。

目を覚ました娘。
視線が普通に戻っている。
「医者に診てもらおうか?」
返事をする娘。
娘が元に戻っている。
脱力した。
かかりつけの医者に診てもらい、あらためて、
インフルエンザの罹患しているかの検査。
検査の結果は、「インフルエンザA型の感染あり。」
特効薬「リレンザ」を処方してもらう。
まだ10代でない娘だが、
熱セン妄(異状行動・妄想)をみせた子には、
タミフルは処方できないのだそうだ。

いまはすっかり元気になった娘。
しかし、熱が下がっても、
まだ2日間はインフルエンザウイルスを他の人にうつす可能性があるので、
自宅で静養している。

あれがインフルエンザ。
インフルエンザという病気の恐ろしさを、本当に見た気がした。
インフルエンザA型の流行は予想されなかったのか、
我が家では全員予防接種を打っていたが、娘は罹患した。
また、A型には予防接種は効きにくいという。
それでも、症状が軽くて済むという。
軽くて、あれなのか。
やはり、怖い病気であるインフルエンザ。

娘のかかりつけの医者は、娘の罹患した理由を「私」ではないか、
と疑ったという。
私自身、自分はインフルエンザでは?と思ったし、
あのカラダの倦怠感・腰の激痛などは、風邪とは考えにくい。
それでも、ベテランの医者の見立てと、
別の医者の検査では、陰性だった。

私自身は、インフルエンザに罹患したことはない。
学校での集団予防接種のあった時代。
このような大流行は考えにくかった。
しかし、時間の針を巻き戻し、集団予防接種は難しい。

リレンザの処方に慣れた娘。
味はなかなか、らしい。
なにもかもが元にもどった。

私はまだ、精神的も体力的にもいまひとつ。
センター試験(数学)も、まだ解く気にならない。
健康第一。
今年の大寒は、カラダでなく、心も震えた。
病気に罹ることの怖さを、あらためて知った、寒い日だった。