思い出話です。
高校3年生の4月、担任の先生と1対1で面談をしました。
進路について、です。
担任の先生は物理の担当で、
国立の難関大学を卒業して、
超大手企業に就職したにもかかわらず、
それをやめて、公立高校の教職に就いた方でした。

「大学に行って何をやりたい?」
「クラブ活動でサッカーをやりたいです。」
「いや、クラブ活動でなくて、何を勉強したいか、ということ。」
「うーん、とりあえず理系。
 理系の方が就職がいい、と兄が行っていたので(1988年当時)。
 勉強したいのは、物理か数学。
 教職にも興味はあります。
 でもまあ、一番興味があるのはコンピュータ。
 プログラミングとか、半導体。
 そういえば先生も、あの企業に勤めていたんですよね?」
「半導体?やめたほうがいいよ。」
「えっ、何でですか?
 いま新聞で話題になってますよね?」
「新聞で話題になってるからって、いま最先端ってわけではない。
 日進月歩の世界だから、…。」
「そういえば先生の噂を聞きましたが、
 先生はどうして、その大手企業を辞められたのですか?」
「まあ、僕の話はいいから。
 一言で言うと、同期採用が何千人といてね(おそらく団塊の世代)。
 その中の1人というのがね、もうちょっといやになってね。
 ところで君はどこの大学に行きたいの?」
「W大学です。」
「どうして?」
「東京のJR山の手線の内側にあるからです。
 どうせ東京行くなら、都心がいいです。
 山手線の内側にある理工系の大学は少ないですよね?
 あっ、でも東大は除きます。
 あとW大の体育の授業は、サッカーがあって、
 そのサッカーの先生が有名な方なので…。」
「ロベルトくん、悪いことは言わないから、
 考え直したほうがいい。
 数学科には行ったOBがいる。
 たしか、そいつも名前で大学を選んで行った感じだった。
 物理学科はやめておけ。
 機械でも電子でもあるだろう。
 理学系じゃなくて、おもしろそうなところに行ったら?」
「ああ、ロボットや車にも関心はあります。」
「ロボットねぇ…。
 とにかく今日はここまで。もう少しよく考えて。」

「よく考えて」の意味がわからなかった。
どうして理学系はだめなんだろう?
クラブ活動も大学生活の大部分を占める。
たしかにそんなにうまくはないが、まだまだサッカーは続けたい。
サッカーも勉強も続けられる大学を選ぶ。
それのどこがいけないのか?
高校もそれができるから、家から近いここを選んだのに。
(のちに、兄に「大学でもサッカーを続けたい」と言ったら、
 「W大などは、スポーツ推薦を事前にやっていて、
  レギュラーのほとんどはそれで決まっている。
  一般入試で入学してくる部員でレギュラーになれる人はそういない。
  俺の友人も入部したが、4軍・5軍だったと言う話だ。
  まして裕福でない我が家。部活動は諦めろ。
  東京の私立大学へ行くだけでも、相当の負担だ。
  アルバイトでもして家計の足しにしろ。」と言われた。)

そうなのか。
大学の部活動って、
高校の部活動みたいに、放課後集まってやるののではないのか。

いま後悔しているのは、この兄の意見に飲み込まれてしまったこと。
まあ兄は我が家のことは分かっているので、
両親のことを考えてそういったのでしょうが。

そういえば、僕はどうして理系に進んだのだったかな?
数学の成績が良かったから、だけだっけ?
そういえば、高校3年生になるとき、
私の所属する学年は理系希望者が多くて、
予定しているクラスの定員に入りきらないからと言って、
1人1人面談して、理系クラスへの進級を決定したなあ。

他の学校でもそんなモンなんだろうか?
理系・文系に進める定員は決まっている。
定員を上回ったり、下回ったりしたら、面談で決める。
(私の勤める学校がこういう手法をとってません。)
でも、文系か理系か、けっこう悩んだのに、
私の面談はあっさり終わったなあ。
高2の時の担任の先生は、世界史担当の熱血な人だった。
でも、あっさり。
「ロベルトは数学の成績がいいから問題なし。」
「ああ、でも一応、理系進学の理由は用意してので。」
「じゃあ、どうぞ。」
「ロボットとか車とかに興味があります。
 人間にできないことをするような機械をつくること。
 コンピュータにも。
 人間の未来の社会を明るくするような…。」
(←「おまえはドラえもんか~いー!」と、 
   髭男爵のツッコミが聞こえてきそうですね。)

先日のかみなり雲を見ていたら、
自分の中学・高校時代のことが思い出されてきました。
いま、目の前の生徒たちに未来をどう示したらいいのか?
経験からしか語れない僕は、
自分の進路選択を振り返る必要があるのかな、思いだしました。
進路選択の思い出話、もう1回、続きます。