もうすぐ夏休みである。関西ももうすぐ梅雨明け、だそうだ。
最近忙しい理由の一つに、
夏休みの「塾への学校説明会」の台本作成もある。
田舎の中学生だった頃、高校入試に差し迫って、
半年ほど私も塾に通った。
この塾に通うことで成績があがり、
志望高校への入学を果たしたのは間違いない。
たしかにこの塾の理科と数学の先生は、
他の教科同様の学生アルバイトではなくて、
それを生業としている大人の授業だった。
あれから十数年。塾の立場は、それ以上の存在になっている。

話はいったん変わって、
息子がサッカーをやっている。
いまはただ、楽しそうにボールを蹴っているようだが、
教育熱心な両親は、その有望選手のプロへの道を想像している。
小学校に入ったらあのチームに入れて、
中学では、あのJリーグの下部組織に入れて、
(それがかなわなければ、他県で評判のいいあのチームに入れて)
高校は、技術育成で定評のある私立高校に入れて、
大学はやはり、東京の私立大学にサッカー推薦で入れて…。

やはりこの想像でも、公立の小学校・中学校のイメージは薄い。
なぜだろう?
昔、私は中学校に入学するのが楽しみで仕方なかった。
部活動でスポーツを本格的に学べる、
教科も専門の先生に学べる。
それがどうして、いまは魅力的に映らないのか。

また話は変わって、
新聞に挟まれてくる塾の広告は、色鮮やかで見事である。
カリキュラムも、
理論的なのかどうかははなはだあやしいが、
なんか説得力があるようにみえる。
「何より、保護者の潜在的な欲求に応えている感じが好評」、
のように見える。
保護者のニーズに応え、小綺麗な教室で、
投資した分だけ成功するという、「対費用効果」が期待できそう。
それを選べる塾という存在。

また話は変わるが、先日、
職場に置いてあった「全私学新聞」なるものを初めて読んだ。
その中のコラムの一節で、
「公立学校でなく、官立学校が正しい表現」
とあった。
いま、評判の悪い「官」。
「それ、ホンマか!」と驚愕な仕事ぶりで怠慢もはなはだしい「官」。
「お役所仕事」とはよく言ったものだ。
ところで、そのコラムの肝は、
「官立学校となると、安価であること、
 公平・公正の大義名分のもと、どこでも同じ量・質であること、
 が求められる。しかし、それは教育の本質ではない。」
だから私学の独自性が…、と続く。

都市の中高一貫の私立学校と私塾とは共依存の関係である。
知的に優れた人材の育成・輩出という点では、目的は一致している。
違うのは、営利目的か、非営利な仕事か。
どちらであっても良いから、
教育の本質だけはおろそかにならないようにしてほしい。

サッカーでは最近、そういった育成過程がきっちりしすぎたせいか、
魅力的な選手が減っているように見える。
まさか塾と本校で手塩にかけて育てた人材も同様であるまいな?

まさか本校のOBが「官」となり、それまでの教育投資分
(あるいは自分の子どもたちへの投資分)を回収しようとして、
不誠実な行動に出ているのではあるまいな?

週刊誌が「~ランキング」なんて、庶民の小さなプライドを煽るから、
都市圏の私学にいると、何もしないことでもストレスを受ける。

とにかく、いまは忙しい。
夏は受験生にとっては勝負の時期。
でも一方で、「市場原理に飲み込まれないでね。」って、
渦中の中から、教育を叫んでいます。

お後がよろしいようで。