数学科に在籍する大学生も読んでくれているようなので、
本来の姿に戻って、数学の授業の風景について書きたいと思います。

今日の幾何の授業は、立方体を平面で切ったときの切り口の形について。
かなり想像力を要する作業だと思います。
美術の技能はないのですが、黒板に立方体を描くことができます。
生徒もノートに立方体らしき図を描きます。

「えーと、平面は通る3点が定まれば1つに決められるので、
 えーと、これはこの3点を通るとき。
 次の図は、この3点を通るとき、切り口がどんな形になると考えられる?」
間髪おかずに、
「三角形!」
と比較的、成績の芳しくない子が叫ぶ。
「そうだな。」
黒板に、切り口が三角形、四角形(平行四辺形、ひし形、長方形)になるパターンを
次々と描いていく。
今日は、チョークはいろんな色を用意してきた。
「こことここの点を結んだ線は真っ直ぐ切れる。
 この面と向かいの面も、こう平行に切れる。」
黒板に説明を書くことはない。
「じゃあ、この3点の場合は?」
「正六角形でしょ。」
予習済みの生徒がつぶやく。
「そうだな。じゃあ、どう切り口の辺は描ける?」

「この辺を延長して、直線と見る。これはこの壁と底面の交線だからね。
 この線の平行線が向かいの面をこう切るので、ここが交点で。」

生徒は平行線は描ける。
あとは見えない切り口の辺をどう描くか。
授業の終わり、真面目な生徒が質問に来る。
「先生、この切り口の形は…。」
ちょっと柔軟な思考ができない様子。
まあ、おもしろがって。
次の時間は中3の幾何。
内容は、ピタゴラスの定理の空間図形への応用。
「え~、さっき中1に切断の仕方を教えてきたばかりですが…。」
「ああ、俺たちもやった、やった。」
「はい、じゃあ、この3点を通る平面で切ったとき、立方体の切り口は?」
「あれ、どうするんだっけ?」
「ここの辺を延長して。これはこの2平面の交線ね。」
「あっ、そうか。」
「というわけで、これは五角形。次にこの切り口の面積を求める。
 ちょっと、この切り口の対称に注目して。」
「ほう、ほう。」

無理数はスゴイね。
これがあれば、すべての計量ができる気がします。
ん、実際、この平方根記号があればすべての量は表せるのか?
ピタゴラス学派が、
しばらく秘密にしたという気持ちは、わからないでもない。
無理数で拡がった数の世界。
でもまあ目の前の生徒は計算で精一杯。
「次は、この頂点をふくむ方の立体の体積で、…。」
「うげーっ」
「これは中点連結定理で、1:2。だから、」
「おお。」
「次は、正四面体に内接する球の半径ね。
 これは上手く図が描けない。描くのには技量がいるね。」
また平面に正四面体を描き、
その中に球を埋め込む。
「これが垂線で、これが四面体の重心。
 で、これと頂点を結ぶと、同じ三角錐は4つできて。」
「おお、そうか。」
「それで、これが内接球の半径。
 ちなみにこれが外接球の半径ね。これはこうして。
 大学入試にもでるよ。」
「…、期末テストにもでますよね。」
「そりゃ、出るだろ。」

以前、数学セミナーの巻頭言に、
「チョークと黒板以上に上手に、数学を伝えることができる道具はない。」
と著名な大学の先生が書いていたが、そのとおりである。
黒板という平面に立体を描き、その切り口の形という平面図形を描く。
人間の想像力ってすばらしい。
ときには説明という論理もいらない。
黒板には、いくつもの立方体だけが、
色鮮やかに、いくつも描かれているだけだった。
中学の内容だけでも、数学ってすごい魅力だな、
数学のすべてをここから学べそうだ、と思ってしまう。
でも実際は、高校で命題、論理と集合を学ばないといけないのか。

あらためて、
結構、重要な時期を担っていることを意識した1日
だった。