深夜です。久々にドラッカーを読んでいたらこんな時間になってしまいました。というのも、成果主義を語る上では、ドラッカーの「現代の経営」は外せないからです。1954年に初版が出て以来、多少なりとも人事に関わる仕事に就いている人なら、この本は必読となっています。念のためご紹介します。

新訳 現代の経営〈上〉 (ドラッカー選書)/P.F. ドラッカー
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ドラッカーはこの本の中で、以下のことを明らかにしています。

①事業の目的は何か?

②組織の目的は何か?

③管理監督者になるべき人物像は?優秀な管理者とは?

④どのように、人と組織を扱うべきか?


特に④で、ドラッカーは画期的な概念を提示しました。それが「Management by objectives and self-control」です。「目標と自己統制による管理」と訳されたこの概念は現在、「目標管理制度」という名のもと、日本企業の90%以上に導入されており、その多くが「成果型人事制度」とパッケージになっています。人事部の制度担当者は殆ど盲目的に、この目標管理制度を「評価をするための仕組み」と認識しています。


実は以前、「人事担当者レベルテスト」というのを作ったことがあります。自分自身の人事への理解を深めるために作ったのですが、これが結構よい出来で、次の会社では導入の提案をしたいと思っているくらいです。その中から、期末評価についての問いを抜粋します。


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【状況】

入社して満1年を迎えたAさんとBさんは、同じ首都圏エリアの営業担当です。この会社では、2年次より営業個々人が自分で「数字目標」を出し、上司と話し合いの上、目標を設定し半期で評価を行っています。
期初の4月、マネジャーのC課長は、両名と個別面談をし、それぞれが自分で設定をした数字目標を聞きました。Aさんは2千万、Bさんは4千万です。C課長は、両名の意思を尊重し、自分で設定をした数字を目標管理シートに書きました。

期末、Aさんは3千万でした。目標達成率は150%です。Bさんも同じく3千万でした。目標達成率は75%です。なお、両名とも、入社1年目は研修や先輩の同行ばかりで、2年目の期初には、自分のお客様はいなかったため、新規顧客開拓から始まりました。また、扱っている商材も、担当したエリアも、両名の能力も、期中の頑張りも、差はないものでした。


【問】 あなたは、C課長として、AさんとBさんをどう評価しますか?

1.Aさんは150%で達成、Bさんは75%で未達成なのだから、当然、Aさんを評価すべき

2.両者の結果数字も、期中の頑張りも、環境も能力も変わらないのだから、評価は同じにすべき

3.Aさんではなく、Bさんを評価すべき

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さて、脳ミソを使っていない人なら、1と回答するでしょう。1の場合、評価されるBさんは納得がいきません。むしろ、「何だ。目標は低いほうがよいのか」と考えるようになります。こうして、目標を低く低くし、リスクよりも安全が優先され、大胆な挑戦やボトムアップが無くなり、やがて低い目標すらも達成できなくなります。


この場合、もっとも正しいのは3です。Bさんのほうが高い評価を受けるべきです。なぜか?それは今後、Bさんのほうがより伸びる可能性が高いからです。

経営の立場から考えれば、組織は常に、高い目標を掲げてそれを達成すべく、全力で邁進することを期待します。達成でき無そうだから低い目標を掲げよう、なんて経営者はいません。いたとしても稀です。


BさんはAさんよりも、挑戦意欲が高く、事業家精神を持っていると言えます。リスクの少ない低目標で達成するくらいなら、高い目標で未達成のほうが良いのです。評価は公平ではなく、公正であるべきなのです。この場合の公正とは何か?それは、どうしたら経営、組織、本人にとって良い結果となるか?の判断です。


目標管理制度の生みの親は、その本質を簡潔に定義しています。

「組織の全成員に、経営者的視野を与えること、そのために働く人に出来るだけ大きな権限と責任を与え、彼らの仕事を有意義なものにすること」

つまり、目標管理制度の本質は、大幅な権限委譲による自己管理なのです。ところが、多くの企業では、目標なり制度を「組織統制ツール」に使っています。


本来、マネジメントとは「①組織全体で大きな成果を上げ」「②成果に対する貢献に応じて、公正に配分する」というものであり、目標管理制度もその中で使われるべきです。

成果が上げられない不況期においては、①が達成できない中で②を行おうとする「言い訳」として、目標管理制度が使われてしまう危険があり、ドラッカー自身も「不況期には目標管理制度を採用すべきではない」と述べています。


大変僭越ながら、現在の目標管理制度は「誤って運用されている」と断じざるをえません。


次回は、じゃあ、どうするか?を考えてみたいと思います。