4月5日 退院の日 起床して身の回り品を整理して持ち帰れるようにまとめた。最後の朝食もやっと喉を通った。4月に入ってから病室内は退院ラッシュで今は私1人だ。やはり年度が変わり新しい先生方の赴任に伴い患者も入れ替えるのだろうか。

夜勤の看護師さんや助手さん達が数人こっそり「退院おめでとう」を伝えに来てくれた。「忘れ物は無いですか?」忘れ物は思い出くらいです。と最後にしょうもないギャグで失笑を買ってしまった。


首から下げていた心電図モニターの発信機もはずれた。胸に貼り付けていた3つの電極ともさよならだ。赤、青、黄色のコードはいつもストレスだった。何もつけない身体は心も軽くなる。


胸サポーターは6月くらいまでは装着しなければならないらしい。手術で肋骨を切って開胸しているので言い換えると骨折状態である。痛みの軽減と早くくっつくよう術後3ヶ月は着用とのこと。しかしマジックテープでの装着なので締め付け以外そんなに苦にはならない。


朝9:00に妻が迎えに来た。先生と最後のお話し。

私からは質問を3つさせていただいた。

1 仕事復帰のタイミングはどう判断すれば良いか。

2 車の運転はできるか。

3 日常生活において注意する行動は何か。


1 は仕事内容と体力と相談して自身の判断で。

2 は特に禁止してはいない。こちらも自己判断で。

3 は重たいものを持たない。身体をひねる運動は避ける。この二つに注意しながら適度な運動、主に歩く事と水分をしっかりとること。食事については以前の説明通り。ということだ。不安は尽きないがここまできたら前向きに全てを受け入れると家族と約束した。


退院後の通院スケジュールと薬の処方。薬の処方は近くのかかりつけ医でできるようお手紙を書いてくださった。 心臓血管外科から腎臓内科、形成外科へと第2ステージの幕開けだ。


看護師詰所の前で挨拶し、エレベーターに乗ろうとした時 理学療法士の方が走って来られた。「間に合いました。退院おめでとうございます。リハビリ頑張ってくださいね」と言葉をくれた。こちらこそありがとうございます。お世話になりました。


入院費など精算をすませ妻の運転する車へ。

晴れて清々しい天気だ。良かった。神様が良く頑張ったと褒めてくれてるようだ。

妻から今何がしたいかと聞かれたので「静かな場所で眠りたい」と答えた。自宅に近づく。1ヶ月ぶりの風景だがずいぶんご無沙汰のような感覚。途中近所の神社に寄ってもらった。妻と御礼参拝をした。ありがたいことに桜が散らずに帰りを待っていてくれた。


自宅に帰って来た。自分の布団で横になった。

見慣れた天井、壁、匂い、カーテンから漏れてくる柔らかい光、ご近所さんの話し声 郵便配達のバイクの音 子供達の声 まだ春休み中なんだね。たまに吹く風に家のきしむ音 「ああ、生きている。帰って来た。」と実感しながら久しぶりに深い眠りについた。