過剰雇用者 | MAST石川不動産「きまま日誌」

過剰雇用者

7月24日金曜日に発表された経済白書は衝撃的でした。

「過剰雇用者」の数が2009年1~3月期に過去最多の607万人に達した。企業業績がさらに悪化すれば失業しかねない「失業予備軍」と見ることもでき、日本経済の足を引っ張る懸念がある、と言うのです。(7月24日読売新聞)


このような記事を読むと、トーマス・フリードマンの著作「フラット化する世界」を思い出します。

フリードマンはIT技術の発展により、経済のグローバル化が進んでいくと、安い労働力を背景に、中国・インドがグローバルな競争力を強め、先進国の労働者から職を奪っていく、というのです。彼はこの現象を、世界の「フラット化」と名づけました。

経済が地球化し、競争が激しくなればなるほど、人々は丸い地球の向こう側にいる競争相手と戦わなければならないのです。そして、人々の賃金は国境を越えて、平準化していくのです。平準化していくということは、先進国においては賃金が徐々に安くなっていくということであり、新興国にとっては、賃金が徐々に上がっていくということなのです。


同志社大学の浜教授は、経済のフラット化が進めば進むほど、「フラット化の圧力に耐えられる人と、耐えられない人との格差が拡大していく」と、指摘しています。かつて日本は世界でも屈指の「平等」と「豊かさ」を併せ持った国でしたが、今日の日本は「派遣労働」「ワーキングプア」「ネットカフェ難民」といった言葉があふれ、「豊かさの中の貧困」が鮮明になってきました。あるいはもしかしたら、日本人は「平等」と「豊かさ」の上に、いつも間にか胡坐をかきすぎてきたのかもしれません。企業間の競争がこれほどまでにグローバル化し、厳しいものになっているという現実から、自らを遠避けていたのかもしれません。しかし、現実には、世界中の企業が、「苛烈ともいえる生き残り競争」を強いられ、企業は徹底したコスト削減が至上命題となり、コストを制する企業が生き残れるということが鮮明になってきたのです。となりますと、安い労働力を獲得できなければ、企業は企業間競争に敗れ市場から撤退せざるをえないということになります。ある繊維関係の古い友人は、長年中国に生産工程を置いた仕事に携わってきましたが、今は徐々に、インドに近い、バングラデッシュ、ベトナム、ミャンマー等に比重を移してきているというのです。中国の半額で済む人件費は、厳しい企業間競争にとって、なくてはならない貴重な資源だというのです。


従来の資本主義において労働は、資本と相対峙する、単純な成立要件でした。しかし、経済のグローバリゼイションは、一方において資本の激しい競争化を促進しましたが、労働に関しても、20世紀後半から労働の液状化をもたらし、労働者自身激しい競争にさらされるようになったのです。上記浜教授は、労働の4分極化を指摘してます。正規労働者、非正規労働者、外国人労働者、労働難民。正規労働者が労働者の頂点に立ち、労働者のピラミッド型の上下関係が、21世紀になって、自然発生的に出来上がってきたかのようです。607万人の日本国内での、過剰雇用者が発生していると経済白書は報告してますが、雇用の過剰感は、ひいては、正規労働者の減少、非正規労働者・外国人労働者・労働難民の増加傾向に拍車をかけていく、それはまた同時に、日本の国力の衰退に繋がっていくのではないかと、心配せざるをえません。


2009年7月31日厚生労働省は6月の有効求人倍率を発表しました。0.43倍、2ヶ月連続の過去最悪更新だそうです。総務省からも同日、6月完全失業率が発表されました。5.4%(過去最悪5.5%)。過去最悪の1歩手前だそうです。総務省からは同日、全国消費者物価指数(2005年=100)も発表されました。前年同月比1.7%下落で、4ヶ月連続の下落だそうです。また、比較可能な1971年1月以降の過去最悪の更新だそうです。