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飛んで火に入る夏のお前の横顔




昔話。





大学生になって初めての夏休み。


その長い休暇も中盤に差し掛かった。


初日から実家には一度も戻っていない。



台東区の元浅草の三丁目のローソンの裏にひっそりと建つ古ぼけたアパートの4階にずっと入り浸っている。


入学早々3ヶ月で専門学校を辞めた高校からの友人が住まう、履き違えられた自由が横行する城。


暇を持て余した友人の誘いに乗り、ボストンバック一つと部屋の引出しに忍ばせていた幾らかの金を握り締めて、ただ勢いで転がり込んだのだった。



そこは毎夜誰かがやって来ては朝まで麻雀に明け暮れるような、生意気にも一端の賭場と呼ぶに相応しい掃き溜めと化していた。


その掃き溜めのスターティングメンバーに名を連ねている友人と僕はうんこだ。


ただ、うんこな自分は麻雀が好きで、そこそこ打てた為にそんな堕落した毎日に疑問を抱くことはなかった。


逆にうんこな友人は覚えたての素人同然であったが、だからこそ新鮮味溢れるスリルに惹き込まれ進行形だったのかもしれない。



お互いに盲目的な居心地の良さに耽る日々を送っていた。






ある夜、短い専門学校生活で得たという友人の知り合いが三人、急遽やって来ることになった。


24時を過ぎた頃チャイムが鳴る。


初めて対戦する相手の力量を少しでも推し量ろうと、牌を積む手つきを見ていると随分と馴れている様子。



半荘を数回終え、自分はちょいマイナス、友人はマイナス青天井継続中。


メンバーを入れ替えながら行っていたが、次は自分が抜ける番が回ってきた。


現状を考えると友人の財政は厳しい。大丈夫だろうか。


それを見兼ねた相手方の一人が


『じゃあビリの奴が女に告白することにしない?』


と、"若さ故のノリ"が全面に押し出された試案を持ち掛けてきた。



負け戦に挑む美学、などとは遠くかけ離れた絶対に受けちゃダメなパターンだ。と思う間もなく



『お~いいよ!』


二つ返事。



どこから溢れてくるのか疑念を抱かずにはいられないほど、自信に満ち満ちた友人の横顔を見守ることしかできなかった。






──結果は散々なものだった。


南場に入ることなく友人が親の高目に振り込みハコ。文字通りの瞬殺。


卓の一方からのみ虚しさが漂う終戦を迎え、静寂のノーサイド。


そう、罰ゲームの対象への興味は敵味方関係なかった。



誰に電話するのだろう。


友人の心情を察するでもなく、素知らぬ振りをしながら最も注視していたのは自分だったことは否めない。




熟考する猶予が与えられ、遂に挙がった名前は


友人が高校時代に二度撃沈した経緯があるKさんだった。


卒業から空白期間があるのはさることながら、どう考えても分が悪いとしか思えなかった。


隠せない緊張感が表情から伝わってくる。大丈夫だろうか。







──結果は散々なものだった。


麻雀を続けるのは忍びないほど打ちのめされてた友人を見て笑った。



その後にみんなで鑑賞した名作『トレインスポッティング』はどうしようもない僕らの青春時代の象徴だったと思われる。












そんな想い出は忘却の彼方。


先日、久々にその友人と酒を酌み交わすまでは大脳皮質の片隅に追いやられていた。


では、どうしてそんな昔話に花を咲かせていたのかというと、友人が結婚することに起因する。



なんとお相手がそのKさんである、と。





十数年の間に紆余曲折を経てそういうことになったらしい。


その紆余曲折については酔っ払っていたこともありよく覚えてないのでここでは割愛。笑



とにかくめでたい。



あの時に嘗めた苦汁が今では甘美に変わったということだ。



人生どう転ぶか分かりませんね。


もしかしたら、あなたの何でもない想い出も、現在や未来に大きな実を結ぶことがあるのかもしれません。


面白いなぁ!




そういうお話です、おそまつ。







─p.s─

そんな日記をmixiに書いたら『いい話!』とコメントくれた子がいたので、真に受けてamebloにも転載。笑


本当にこういうことがあるんだから長生きはするもんなんだね。



そう言えば、昨日仕事でアキバにちょっと寄ったんだけど、去年の今頃よく利用したマーメイド前の駐車場に車を停めたら、そのままマーメイド行きそうになった。←


パブロフの犬だ。


あの駐車場に停めるとスイッチ入るらしい。



アキバにいることがステータスだと傾倒してたあの頃の良き想い出は、今でも鮮明な記憶として海馬に留まり続けているんだから不思議。


なんだりかんだり不思議。