9月20日からラグビーワールドカップ2019が開幕しました。

以前は「ふーん、やるんだ」くらいに感じてたのですが、TBSドラマ「ノーサイドゲーム」を毎週観ているうちに「久しぶりにラグビー生で観たいな」と思うようになり、「4年に1度じゃない、一生に一度だ」という大会のCMを観ているうちに居ても立ってもいられなくなり、England vs Argentina戦のチケットの購入を決断しました。

 

公式チケットサイトの在庫表示がウソつきでなかなか購入できずにいましたが、twitterで「特定の時間帯にキャンセルが在庫に戻される」という情報を得て、その時間帯にチケットサイトにアクセスして念願のプラチナチケットを1枚購入することができました。カテゴリーAで3万円はパート勤務の私には高額でしたが、一生に一度という言葉に金銭感覚を狂わされているので痛みを感じません。これでEnglandの司令塔Owen Farrellが難しいキックを華麗に決めた後に両手の人差し指をからめて「Join Jack(※)」サインを作るシーンを生で観られる、その期待感だけで3万円の元を取ったような気分になりました。

 

※Jackというデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を患った子供の親が主宰するDMD治療法研究を支援する団体。Owen Farrellは自分が得点した後に「Join Jack」サインを示してこの団体の活動を支援しています。

 

日野にいる母に会いに少し早めに家を出ました。数日前に日本海を通過した台風18号の影響で、ものすごくいい天気でした。3日に東京出張の帰りに有楽町のファンゾーンで長袖の大会公式ジャージを購入したのですが、終日腰に巻いたままで袖を通すことはありませんでした。

 

試合開始の4時間近く前に飛田給駅に到着。駅構内から会場にかけてEnglandの薔薇のジャージとArgentinaの水色と白のボーダーのジャージの人たちでごったがえしてました。桜のジャージの人もちらほら。全体的な印象としてはEngland 5: Argentina 3: Japan 2という感じでしょうか。国際色豊かでした。

 

東京スタジアムから甲州街道を挟んだ場所にあるゼビオの前では公式グッズの物販が行われてました。会場に向かう歩道橋では、Argentinaのサポーターが大声で歌いながら盛り上がってました。

 

会場には早く着き過ぎました。ボランティアが大勢開場に向けた準備に動き回ったり来場者の記念撮影を手伝ったりとお祭りムードを盛り上げてました。ゲート周辺を少しぶらぶらしましたが、開場が早まる気配がないので、少し駅の方に戻って華屋与兵衛まで戻ってビールを飲みながら会場周辺の空気を楽しみました。

 

14:00の予定時間のちょっと前に開場。いったん席に着いてみましたがやることもないので、サブグラウンドに設置されたスペクテータープラザに行ってみました。

 

入口ではスタッフがハイタッチで出迎えてくれました。

 

エリア内には飲食、物販その他もろもろのテントが並んでいました。期待したよりはパラパラですが、試合中はほとんどがメインスタジアムに戻ってしまいますし、試合後の日本vsSamoa戦のパブリックビューイングは保安上の都合で行わないことが決まっており、開場から試合開始までの3時間しか人が来ないので、しかたありません。

 

いちばん奥にLEDスクリーンで同日14:15開始のAustralia vs Uruguay戦のパブリックビューイングが行われていたので、観戦させてもらうことにしました。こうやってラグビーを観ながら、お目当ての試合を待つのは良いものです。

 

有楽町のファンゾーンにあったFish & Chipsが食べたかったのですが、飲食は違う業者が運営しているようで、Englandぽいのはビーフパイだけでした。これもEnglandで食べたのと微妙に違うような気がするのですが、この際ディテールにはこだわらないことにします。炎天下でラグビーを観ながら飲むビールの美味しいこと。

 

試合はAustraliaのワンサイドゲームになってしまいましたが、終盤Uruguayがトライを返すと、東京スタジアムの観客も沸き立ちました。いつの間にかスペクテータープラザにも大勢人が入ってました。

 

会場の運営については、おおむね好印象ですが、不満は水とトイレです。

 

開場前と開場後にビールを1杯ずつ飲んで、アルコール許容量に達したので、水が欲しくなりました。残念ながら会場内ではペットボトルの水を購入することはできませんでした。スペクテータープラザ内の売店でペットボトルが並んでたので購入しようとしたらカップに全部注がれてしまいました。これからトイレに行ったりするのでペットボトルで欲しいと伝えたら、警備上の都合でカップ売りしかできないと。困った顔をしていたら返金してくれました。

 

スペクテータープラザに併設の仮設トイレ(プレハブの屋内の清潔な水洗トイレでした)で用を済ませてから、スペクテータープラザの外に設置された給水所で小さな紙コップにお水をもらって、スタンドまで運びました。水筒持参ならそこに入れてくれるのですが、金属製は持ち込み不可なので持っている人はそんなに多くありません。客席ではハイネケンは売りに来ても水やソフトドリンクは売ってません。真夏日の夕方もそこそこ暑かったので、給水についてはもう少し配慮して欲しかったように感じます。給水所も自分の席から人混みの中5分くらいかかる場所にあったので、80分間小さな紙コップの水をちびちび飲みながら渇きを癒してました。

 

トイレも、会場のキャパシティーには少し足りないようで、ハーフタイムに出遅れたら後半戦開始前に戻れなさそうなので諦めました。ファンゾーンの仮設トイレも遠くて選択肢に入りません。水不足のせいでゲーム中なんとか我慢できましたが、3杯目のビールには手が出ませんでした。ヒトの生存にかかわる話なので、決して軽視して欲しくないのですが...

 

何はさておき、席に着きました。M19列291番。味の素スタジアムの座席表に載ってないふだんは記者席として使われている、10mラインと22mラインの中ほどの良い席でした。

フールド全体が見渡せます。たぶんこの席を買っていた方がキャンセルされたのですね。なんともったいない。

 

目前ではEnglandの選手が練習着でウォーミングアップをしていました。

試合開始10分くらい前に選手は控室に戻って行きました。会場内は大きな試合を前にした大観衆の興奮が生み出す不思議な空気に満ちてきました。

ほどなく和太鼓と拍子木のリズムに乗せて両チームの選手が入場してきます。会場のボルテージがどんどん上がっていきます。この辺の空気感を生身で感じることができるのは現場ならではです。

 

国歌斉唱。Argentinaの国歌は長すぎて覚える気になりませんでした。長い長いイントロ(というか曲の前半だけどArgentina国民も覚えられなくてフンフンとハミングで歌ってる)が終わったところで拍手しないようにはしましたが、引っ掛かった観客が大勢いました。England国歌は予習したのですが、試合が始まる高揚感で歌詞が飛んで中盤と最後の「God save the Queen!」しか一緒に歌うことができませんでした。観客の半数を占めるEnglandサポーターの大合唱は圧巻でした。

 

 

[前半] 

06分 Argentina PG成功 E00-A03

08分 England トライ E05-A03

10分 England CG失敗 E05-A03

17分 Argentina Lavanini レッドカード退場 E05-A03

18分 England PG失敗 E05-A03

35分 England トライ E10-A03

37分 England CG失敗 E10-A03

40分 England トライ E15-A03

40分 England CG失敗 E15-A03

 

キッカーがFordじゃなくてOwen Farrellだったのは嬉しかったけど、いちばんのお目当ての華麗なキックが前半は1本も決まらなかったし、Argentinaに対するレッドカードが競っていた試合に水を差すような後味悪さもありました(できればイエローカードにとどめて欲しかった)。

う~ん、という感覚でハーフタイム。

 

序盤はArgentinaが優位に進める局面も多くあって、両チームのサポーターによる応援歌の応酬もワールドカップならではのものでした。最初のEnglandチャンスのときの"Swing Low Sweet Chariot"の大合唱は鳥肌モノでした。レッドカードで14人で戦うことになったArgentinaもしばらくは数的不利を感じさせない激しいプレイで食い下がっていたのですが、徐々に集中力が切れたのか連続トライを許して流れがワンサイドになってきたのは何とも残念。

 

ラグビーを生で観るのは久しぶりですが、観客席からでは密集の細かいプレイは見えない代わりに密集の周りのバックスのポジション変更の駆け引きとか(一人がスペースのあるところに移動すると、相手のバックスもそちらに一人移動するみたいに)もなかなか面白いものです。ただ、ビジョンには大会公式映像が表示されるので、スコアと時間経過が字が小さくて読みにくいのは何とかしてほしかった。

 

[後半] 

45分 England トライ E20-A03

46分 England CG成功 E22-A03

53分 England PG成功 E25-A03

71分 Argentina トライ E25-A08

71分 Argentina CG成功 E25-A10

74分 England トライ E30-A10

75分 England CG成功 E32-A10

80分 England トライ E37-A10

80分 England CG成功 E39-A10

 

後半開始早々Englandが4つ目のトライを上げてボーナスポイントを獲得。前半ダメだったOwen Farrellのキックも決まって良い感じになりました。53分のPG成功後はお目当ての "Join Jack"サインも見せてくれました。

 

ただ、点差がついてくると観客もダレてきて、スタンドのあちこちでウェーブを起こそうとする動きがあって、何度かの試行の末にそれがスタンド全体に伝わってウェーブがスタンドを2周しました。ああいうのも楽しいけど、やっぱり80f分間試合に釘付けになるような緊迫感のある試合が良いですね。

 

終盤に入ってArgentinaが1トライを返したシーンでは久しぶりに観客が湧きましたがそれもつかの間Englandが猛攻をかけて39対10でノーサイド。80分過ぎに最後のトライが決まった後も両チームの選手が揉み合うなど最後まで後味の悪い試合でしたが、Englandはこれで決勝トーナメント進出が確定、12日のFrance戦でプール1位の座を争います。

 

現場では選手インタビューの音声も流れませんでした。

 

試合の内容は今一つでしたが、試合のあちこちで両チームの選手がぶつかりあうシーンは迫力満点でしたし、華麗なパス回しと選手の個人技が決まって大きくゲインして大観衆が沸くシーンも何回もありました。お目当てのOwen Farrellもキック成功率は今一つですが、自分の近くに密集ができたときに果敢に突っ込んでいくところとか、相手の選手がいないスペースを狙いすましてキックするところとか、知名度に恥じない仕事をこなしていたのが印象的でした。一生に一度の良い思い出になりました。

 

この試合に続く日本vsSamoa戦が気になるところですが、東京スタジアムにおけるパブリックビューイングが行われない旨と、調布のファンゾーンが入場規制中という場内アナウンス。お隣の方は「家帰って観るかー」とおっしゃってましたが、私がこのまままっすぐ帰宅しても家に着く頃には試合が終わってます。

 

とりあえず調布駅まで行ってみることにしました。

 

飛田給駅で入場規制がありましたが、数分で解消して調布駅前に出たときには田村の2本目のPGが決まったところでした。こんな感じでスクリーンが見える場所もあるのですが、駅周辺の歩行者動線は立ち止まらないよう厳しく制限されていました。

 

喉が渇いていたのでコンビニでお茶を購入してからパブリックビューイング難民状態はファンゾーン周辺をうろうろしながら排除されずにスクリーンを観られるスポットを探しましたが、ファンゾーン入場待機列が見切れがあるもののそこそこ観戦可能であることが判明。待機列に並びながら観戦することにしました。

 

[前半]

03分 日本 PG成功 J03-S00

08分 日本 PG成功 J06-S00

10分 Samoa PG成功 J06-S03

14分 Samoa PG失敗 J06-S03

15分 Samoa PG成功 J06-S06

24分 日本 PG成功 J09-S06

28分 日本 トライ  J14-S06

30分 日本 CG成功 J16-S06

32分 Samoa PG失敗 J16-S06

34分 Samoa PG成功 J16-S09

 

試合の内容は実はよく覚えてなくて、ただただ周りの9割以上の人たちと一緒に日本を応援していました。画面は半分くらい見切れててディテールはぜんぜん見えないのですが、家でテレビを観る数倍興奮しながらゲームを観てました。日本が現在ほど強くなかった頃、時折強豪チームを破って大番狂わせを演出するのはSamoaとかTongaとか南の島の国の仕事でした。史上最強の日本チームでさえSamoaの当たりは強く、試合の流れによっては負けてしまう可能性も決して小さくない緊迫した試合でした。それだけに日本チームのサポーターの応援にも熱が入りました。

 

16-9でリードした状態でハーフタイム。お子様連れでファンゾーンから出ていく人がちらほら居て、待機列に並ぶ人たちの期待感が高まります「イレロー!」という外国人グループの扇動とかもあって、後半のキックオフ直後に入場することができました。

 

ファンゾーンには高画質のLEDビジョンが設置されてましたが、ビジョンが引くすぎて前の人の頭越しだとこんな感じで、待機列からビルに投影したのを観るのと大差ありませんでした。

 

結局、ファンゾーンから電柱越しに隣のビルに投影された映像で観戦することにしました。映像は不鮮明ですが、全体が見えるのは嬉しい。

 

小腹が空いてたので、食べ物も確保できました。せっかくのタン塩丼ですが、立って観戦しながら急いで掻き込んだのであまり味に記憶ありませんが、そこそこ美味しかったように思います。

 

[後半] 

45分 Samoa PG成功 J16-S12

47分 日本 PG失敗 J16-S12

51分 日本 PG成功 J19-S12

54分 日本 トライ J24-S12

56分 日本 CG成功 J26-S12

72分 Samoa トライ J26-S17

73分 Samoa CG成功 J26-S19

75分 日本 トライ J31-S19

77分 日本 CG失敗 J31-S19

84分 日本 トライ J36-S19

86分 日本 CG成功 J38-S19

 

後半は終始日本がリードしていましたが、ちょっとでも試合の流れが変わればあっという間にひっくり返されるかもしれない、そんな緊迫感が40分続きました。31-19で80分の銅鑼の音が聞こえたときには「やっとこ勝てた」と安堵したのですが、ここからの攻防が見ごたえありました。Samoaは何とか点差を7点以内に抑えて勝ち点1を獲得してプール3位以上に与えられる次回大会出場権に望みをつなぎたい、日本は4トライ目を上げて勝ち点1を加えて首位争いで優位に立ちたい、そんな意地のぶつかり合いの4分間の攻防でした。最後に松島が飛び込んだのは最高のエンディングでした。

 

試合終了後の混雑に巻き込まれて、日立に帰る終バスを逃したくなかったので、田村のコンバージョンキックを観ないで調布駅から東京駅に向かいましたが、日本の勝ち点5の勝利を観ることをリアルタイムで観ることができました。日本サポーターがが大勢集まっているところで観ることができたのは心の底から熱くなれて本当に楽しかった。

 

振替ってみると、パブリックビューイングでのんびり1試合観てから、生でラグビー発祥の地Englandの試合を観て、さらに一時期難民になりながらもパブリックビューイングで日本を応援して熱くなって、一日でラグビーを3試合それぞれの楽しみ方を味わうことができました。これは本当に楽しかった。間に食べ物とか仮設トイレとか物販(今回は購入しなかったけど)などもあって、まるで音楽フェスのラグビー版みたいな一日を過ごすことができました。またこういうイベントがあったら、参加してまるっと一日楽しみたいです。

 

期待するのは、これをきっかけに日本国内でラグビーファンが増えて、この日のような体験が近い将来できるようになれば良いなと思います。一生に一度なんてもったいないですから。