TEMPURA KIDZ目当てで行ったイベントですが、この方のステージの印象が強烈で、それをブログに残しておかないと、他のアクトを振り返ることが困難なので、まずはこの方のレポから。




2018年6月17日(日)東京・渋谷各所で開催されたサーキット型総合エンターテインメントフェス「やついフェスティバル2018」二日目、TSUTAYA O-EASTで水前寺清子のステージを観ました。

TEMPURA KIDZと同日出演と知ったときから観たいと思っていたステージです。

1964年にデビューしてから1970年代前半にかけて、水前寺清子は今の嵐クラスの国民的アイドルでした。私が小学生の頃に大ヒットした365歩のマーチは学校の音楽の時間や運動会の定番曲でしたし、テレビの歌番組になくてはならないスターでした。紅白歌合戦の紅組キャプテンを何度も任されてました。テレビドラマにも出演してました。当時小学生だった私に取って、彼女は東京オリンピック以降オイルショックまでの元気な日本の象徴でした。

演歌が好きという訳ではないので、ワンマン公演の予定を調べてチケットを取って...という風には体は動きませんが、行く予定のフェスに出演するなら、TEMPURA KIDZとカブらない限りは行かない理由がありません。万一入場規制で入れないとなったら元も子もないので、早めに会場に入りました。

11:00にリストバンドに交換してから、O-EASTの入場列に並んだら、まだ5人しかいませんでした。12:30の開演まで開場しないということだったので、外で少し休憩してから並び直そうと思って、周りをぐるぐる10分ほど歩いたのですが、カップル向けの休憩場所しかなかったので、観念して並び直しましたが、二人しか増えてませんでした。列の先頭は、私よりも一回りくらい年上の3人のお姉さま方。うち2人はベリーショート。どう観てもチータのファンでした。

いつものことながら、待っている間はゆっくりと時間が流れて、ようやく開場。下手の二列目の柵でDJやついいちろう(めっちゃ楽しかった。良い感じで気分が暖まった。)と縄⽂太⿎ 茂呂剛伸(勇壮でした)の後、いよいよお待ちかねの水前寺清子ショー。




[セットリスト] (順番はうろ覚えです)
登場SE 365歩のマーチ (1コーラス)
M01 ありがとうの歌
M02 浪花節だぜ人生は
M03 さよならイェスタデイ (TUBEのカバー)
M04 いっぽんどっこの唄
M05 大勝負
M06 あすなろの唄
M07 365歩のマーチ (with やついいちろう)

シグネチャーチューンの「365歩のマーチ」のイントロに乗ってスーツ姿のチータが颯爽と登場。先ほどのお姉さま方とおぼしき「きゃー」という声が上がりますが、すぐに「うぉー」とか「ふー」とかフェスのノリの歓声に迎えられて、歌い始めました。

いやー、生のチータだよー。この笑顔が昭和40年代のテレビを飾ったんだよー。背筋すっと伸びてるよー。着流しじゃないの残念だけどスーツがばっちり決まってるよー。決めポーズめっちゃカッコ良い!

「ワン・ツー」で拳を上げていっしょに叫びます。

1コーラスで歌はおしまいでした。いわゆる登場SE的な感じですかね。フロアのあちこちから「チータ!」の声が上がります。私も叫んでみました。

いきなりMCです。こういう場所は初めてで、観客がどう受け止めてくれるか心配だったけど、「ワン・ツー」一緒にやってくれて最高、と。

石坂浩二と共演したドラマ「ありがとう」の話から「ありがとうの歌」につなげるMCはよどみがありません。

続く「浪花節だよ人生は」では歌う前にコールの入れ方のレクチャー。曲中に「チータ!」とコールを入れるところが6回あって、イントロで2回歌で1回で、そのタイミングになったら「はい!」と合図しますから、とそのまま曲をかけてコールのリハーサル。タイミングになったらほらほらみんな大きい声で頂戴よ、という表情で「はい!」と合図。これに食い付く観客に、上手とお褒めのお言葉。もちろん、本番も大盛り上がりで、これで観客の心を完全に掌握。

大スターだった1960年代後半~1970年前半を過ぎて、そうではない時期も長かったと思うので、フェスで歌うのは初めてとしても、必ずしも自分のファンばかりではない現場の仕事も多かったんだと思います。そういうお客さんにも心の底から楽しんでもらおう、そんなエンターテイナー魂みたいなものを惜しみなく放出してました。さすがレジェンドです。

演歌を歌っているけど最初はポップスが歌いたかった。こういう場所なので、とTUBEの「さよならイェスタデイ」をカバー。イントロの前半はトランペットソロをフィーチャーしたドラマチックな世界観からサンバのリズムに変わったところで観客もエキサイト、最高にノリノリの歌唱でした。

そして、「いっぽんどっこの唄」から「大勝負」につながるところは、演歌ファンではなくても心に響くものがありました。「ぼろは着てても、心の錦~♪」とか「一つ男は勝たねばならぬ~♪」とか頭の奥に隠れていた記憶がよみがえります。歌の随所で見せる決めポーズがいちいちカッコ良い。72歳とは思えないピンと背筋が伸びた堂々とした姿勢。「小さい民子」から「チータ」という愛称が付いたそうで本当にぱっと見た目小柄だったんですけど、長いキャリアの積み重ねから感じられるオーラで一回りも二回りも大きく見えました。

彼女の楽曲の多くは星野哲郎の詞によるものですが、彼がアマチュアからプロの作詞家になることを決意したときに書いたというエピソードから、「あすなろの唄」も胸にしみました。

持ち時間いっぱい近くなったところで、やついいちろうが登場。彼が登場する前からMCの都度「いやー、またここでやりたいね」と言ってたんですが、「またここでショーやりたい」とフェス主宰者に直談判。やついも「命ある限り出てください」と二つ返事。「こんなこともやりますから」と車椅子を押すポーズとか中腰でマイクを差し出すポーズとか。チータがあんた何やってんのよ!と怒ったそぶりを見せると「このあと殴ったりしないでくださいね」と、なかなかに楽しいやり取り。今回どんな格好したら良いかわからなくてスーツで出たけど、今度出るときは着流しで出たい、と言ってました。着流しのチータ、観てみたいですね。




最後はやついいちろうと一緒に「365歩のマーチ」を歌うことになったのですが、結局やついは「ワン・ツー」のコールだけでした。まぁ、そんなことどうでも良いくらいに盛り上がって、ライブは大団円。




もうどう表現したら良いかわからないんですけど、訳もなく感動しました。歌唱もステージングもMCも一級品中の一級品でした。当時のスターで今でも活動を続けている人はそんなに多くはないと思うのですが、54年も続けてきた重みを感じさせる貫禄のステージでした。

出演者の振り幅が広いやついフェスだからこそ、そしてTEMPURA KIDZ出演日だからこそ観る機会を得ることができた訳で、やついいちろう、フェス運営スタッフさん、TEMPURA KIDZおよび関係者さん、一緒に盛り上がったフェス参加者のみなさん、それにチータに大感謝です。